
VYMとは?米国高配当ETFの特徴・過去実績・活用法を徹底解説
By Staff | 2025-09-11
Category: 配当成長投資
米国株投資において「安定した配当収入を得たい」と考える投資家にとって、VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF)は代表的な選択肢のひとつです。
バンガードが運用するこのETFは、米国の高配当株を幅広く組み入れることで、安定した配当を得ながらリスクを分散できるよう設計されています。
2006年に設定されて以来、低コスト(経費率0.06%前後)と長期的なパフォーマンスで注目を集めています。
基本的な特徴
VYMはFTSE High Dividend Yield Indexをベンチマークとしており、金融、ヘルスケア、生活必需品といったディフェンシブなセクターを中心に構成されています。
テクノロジー株の比率はS&P500に比べると低く、配当を重視した安定的なポートフォリオが特徴です。
組入銘柄数は最新のデータで580社に達しており、幅広い分散によって個別銘柄リスクを軽減できます。
中央値の時価総額は約1,505億ドルと大型株中心で、安定性が高いのもポイントです。
ファンダメンタル面では、P/Eレシオ19.6倍、P/Bレシオ2.8倍と市場平均に近い水準にあり、成長性と配当利回りのバランスを取った構造になっています。
直近の利益成長率は13.3%、ROEは18.0%と健全な水準を維持しています。
また、2025年7月末時点で純資産総額は約763億ドルに達しており、規模の大きさも安心材料です。
こうしたデータからも、VYMは「安定した配当収入と分散投資効果」を兼ね備えた代表的な高配当ETFであることがわかります。
セクター構成と主要銘柄
VYMは約580銘柄に分散投資していますが、その構成比率を見ると、特定の特徴が見えてきます。
最新データ(2025年7月末時点)によると、金融セクターが約21.6%と最大の比率を占め、次いで工業(13.6%)、テクノロジー(12.3%)、ヘルスケア(11.6%)、一般消費財(10.1%)が続きます。
エネルギーや生活必需品も約9%前後を占めており、ディフェンシブな要素と景気循環的な要素がバランスよく組み合わされています。
一方で公益事業(Utilities)は6.6%、通信は3.9%、素材は2.0%と小さめの比率にとどまっています。このセクター配分からは、VYMが「高配当かつ財務の安定した大型株」を幅広く組み入れていることが分かります。
具体的な組入上位銘柄をみると、ブロードコム(AVGO)、JPモルガン・チェース(JPM)、エクソンモービル(XOM)、ウォルマート(WMT)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)といった米国を代表する大企業が並びます。
また、ホームデポ(HD)、プロクター&ギャンブル(PG)、アッヴィ(ABBV)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、シェブロン(CVX)など、安定した配当実績を誇る銘柄が中心です。
これらの上位銘柄だけでファンド全体の20%以上を占めていますが、セクターや業種の分散が効いているため、個別企業への依存度は比較的抑えられています。
高配当銘柄を幅広く保有しつつ、米国経済全体の成長とともに配当を享受できるのがVYMの強みといえるでしょう。
過去のパフォーマンス
VYMは2006年に設定されて以来、安定した配当収入と堅実なトータルリターンを示してきました。
Vanguardの最新データ(2025年8月末時点)によると、以下のような成績となっています。
- 1年リターン
株価ベース:約+12.3%
トータルリターン:約+12.2%
- 3年リターン(年率換算)
株価ベース:約+13.7%
トータルリターン:約+13.7%
- 5年リターン(年率換算)
株価ベース:約+14.1%
トータルリターン:約+14.1%
- 10年リターン(年率換算)
株価ベース:約+11.5%
トータルリターン:約+11.5%
- 設定来(2006年11月~2025年8月、約19年)
株価ベース:約+394.7%
年率換算:約+8.9%
トータルリターン:約+394.5%(年率換算:約+8.9%)
また、直近の年次リターンを見ると、2024年は株価上昇と配当を合わせて+17.6%、2021年は+26.1%と好調な一方で、2022年は-0.4%、2018年は-5.9%とマイナスの年もありました。
これは景気循環や市場全体の下落時には高配当株ETFでも影響を受けることを示しています。
しかし長期的に見れば、配当を再投資しながら保有することで複利効果が働き、安定的に資産を増やしてきました。
S&P500の成長率にはやや劣るものの、安定したキャッシュフローを得ながら市場平均に近いリターンを狙える点が、VYMの強みといえます。
メリットとデメリット
VYMのメリットは、低コストで分散された高配当株ポートフォリオを簡単に持てる点です。
インカムゲイン(配当収入)を安定的に得られるため、長期投資で心理的な安心感をもたらします。
一方で、デメリットも存在します。
高配当株は成長株に比べ株価上昇の伸びが鈍い傾向があり、結果としてトータルリターンがS&P500を下回る場面もあります。
また、セクター構成上、景気後退時には金融株やエネルギー株が大きく影響を受ける可能性があります。
他の高配当ETFとの比較
- SPYD:利回りは高めだが銘柄数が少なく、景気循環に左右されやすい
- HDV:厳選された70~80銘柄で構成されるが集中度が高い
- VYM:広範な分散によりリスクを抑えやすい
配当重視かつ安定性を求める場合はVYM、より高利回りを求める場合はSPYDという選び方が考えられます。
投資での活用法
VYMはさまざまな目的に合わせて活用できます。
- 老後資金の一部として、配当を生活費補填に活用
- 成長株中心のポートフォリオに組み入れてバランスを取る
- 定期的な積立投資で長期的に資産を積み上げる
とくにNISAを利用する場合、非課税で配当を受け取れる点は大きなメリットです。
まとめ
VYMは「広範な分散」「低コスト」「安定配当」という特徴を兼ね備えた高配当ETFです。
過去の実績からも、配当込みで長期的に堅実なリターンを出してきたことが確認できます。
高配当投資を考える際の中核的な選択肢として、他のETFとの違いを理解したうえで、自分の資産形成戦略に組み込むことが重要です。
FAQ
Q1. VYMの分配利回りはどのくらいですか?
直近数年間の実績ではおおむね3%前後で推移しています。株価の変動や為替の影響によって上下するため、あくまで目安として考えるのが適切です。
Q2. VYMとS&P500に投資するVOOではどちらが有利ですか?
S&P500連動のVOOは成長株を多く含むためトータルリターンが高くなりやすい一方、VYMは配当収入が安定しているという強みがあります。資産形成の目的が「成長」なのか「配当」なのかによって選び方は変わります。
Q3. VYMはリーマンショックやコロナショックの時にどう動きましたか?
リーマンショック時は大きく下落しましたが、その後の回復過程で配当再投資を通じてリターンを積み上げました。コロナショックでも一時的に急落しましたが、数年で大きく回復しています。長期で持ち続ける姿勢が重要です。
Q4. 為替ヘッジありの商品と比べるとどうですか?
VYMは為替ヘッジなしの商品です。円高になると評価額が下がる一方、円安ではプラスの効果を受けられます。為替変動をそのまま取り込む形になるため、長期的な円安トレンドを期待する投資家にはメリットがあります。
Q5. VYMは分散効果が高いといいますが、どの程度ですか?
組み入れ銘柄は400社以上に分散されており、個別銘柄リスクを大きく低減できます。特定の企業に依存しにくいため、安定した配当収入を長期にわたり得やすい構造になっています。
Q6. VYMは配当を受け取るだけでなく再投資した方が良いですか?
投資目的によります。配当を生活費に充てたい人は受け取りが適していますが、資産を効率的に増やしたい人にとっては再投資が有利です。長期で見ると複利効果による資産拡大が期待できます。
Q7. VYMをNISAで買うのと特定口座で買うのは違いますか?
NISAを利用しても、米国源泉徴収税(10%)は配当から差し引かれます。ただし日本での課税(約20%)が免除されるため、受け取れる配当は特定口座より多くなります。
一方、特定口座では米国で10%の課税を受けたうえで、日本でも課税されるため二重課税になります。ただし確定申告で「外国税額控除」を利用すれば、米国で課された10%の一部または全部を取り戻せる可能性があります。最終的にどこまで控除できるかは、その年の所得状況や税額によって変わります。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。