
米国高配当ETFの過去10年リターン比較|VYM・HDV・DVY・QYLD・JEPIの実績を検証
By Staff | 2025-09-12
Category: 配当成長投資
米国株投資で人気の高いテーマのひとつが「高配当ETF」です。
安定した配当収入を得られる点は魅力ですが、果たして長期的に見たときに市場平均と比べてどの程度のリターンを上げてきたのでしょうか。
この記事では、代表的な米国高配当ETFの過去10年の実績を振り返り、S&P500との比較を通じてその強みと限界を考えていきます。
リターンを評価する際の視点
ETFの成績を見るとき、配当利回りだけに目を奪われがちですが、本質的に重要なのは「トータルリターン(株価+配当再投資込み)」です。
10年という期間は、景気循環や金利環境の変化を含むため、ETFの安定性や成長性を見極めるのに適しています。
また同じ高配当ETFでも、セクター構成の違いが結果に大きな差を生みます。
代表的な高配当ETFの10年トータルリターン
Vanguard High Dividend Yield ETF(VYM)
VYMは最も規模の大きい高配当ETFのひとつです。
過去10年の平均年率トータルリターンは約9.8%〜10.5%で、配当利回りは直近で約3%。
安定した配当を提供しながらも、株価成長もある程度取り込める点が特徴です。
ただしS&P500にはやや劣後しており、成長性では市場平均に届きません。
iShares Core High Dividend ETF(HDV)
HDVは財務健全性の高い企業を中心に組み入れています。
10年平均リターンは約8.5%〜9.5%。
エネルギーやヘルスケア比率が高いため、市場環境によって成績がぶれることもありますが、配当は比較的安定しており利回りは3〜4%台です。
iShares Select Dividend ETF(DVY)
DVYは公益・金融・エネルギーなど伝統的なセクターを中心に構成されています。
過去10年のトータルリターンは約9〜10%。
ディフェンシブ性はあるものの、景気動向によっては値動きが大きくなる場合もあります。利回りは3〜4%台です。
SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF(SPYD)
SPYDは2015年設定のため10年フルの実績はありませんが、ここ数年の年率リターンはおおよそ7〜8%程度。
配当利回りは4〜5%と高めですが、セクター偏重によるリスクも指摘されています。
Global X Nasdaq 100 Covered Call ETF(QYLD)
QYLDはカバードコール戦略を用いた特殊なETFで、利回りは直近で10%以上と非常に高い水準です。
ただし株価の成長を犠牲にしているため、過去10年のトータルリターンは7〜8%程度にとどまっています。
配当生活を重視する人には人気がありますが、長期的な資産成長には不向きです。
JPMorgan Equity Premium Income ETF(JEPI)
JEPIは2020年に登場した新しいETFで、まだ10年のデータはありません。
設定来の年率トータルリターンは約9%、配当利回りは6〜7%。
QYLDと同じくオプションを活用していますが、分散度合いや銘柄選択のアクティブ運用を組み合わせており、比較的バランスの取れた設計になっています。
高配当ETFとS&P500との比較(長期スパン)
では、市場平均と比べるとどうでしょうか。
S&P500(VOOなどを通じて投資可能)のトータルリターンは以下の通りです。
- 過去10年:年率約13.1%(配当再投資込み)
- 過去20年:年率約9.0〜10.0%
- 過去30年:年率約8.5〜9.5%
つまり、10年単位で見ると高配当ETFは市場平均に届かないケースが多い一方、20〜30年といった超長期ではリターン差が相対的に縮まる傾向があります。
特にVYMやDVYは、配当を得ながら市場平均に比較的近い成績を残しており、バランス型としての位置づけが明確です。
投資目的に応じた解釈
数字を見る限り、どのETFも一長一短があります。
- インカム重視:QYLDやJEPIを補完的に活用して毎月・毎年の収入を重視。
- 成長+安定重視:VYMやDVYを軸にすることで、配当と成長の両立を狙う。
バランス型:HDVやSPYDを組み合わせ、市場平均と配当水準の中間を狙う。
どのETFを選ぶかは、自分が「収入を優先するのか」「長期的な資産拡大を優先するのか」によって変わります。
税制と為替の影響
米国ETFの配当には10%の米国課税がかかり、日本国内でも課税されるため二重課税となります。
ただし確定申告で外国税額控除を活用すれば一部を取り戻すことが可能です。
また、NISAを使えば日本課税を免除でき、効率的に配当を享受できます。
さらに為替変動の影響も無視できません。
円高局面では受け取る配当の円換算額が減少し、円安では逆に増えるため、為替もリターンに直結します。
まとめ
米国高配当ETFの過去10年の実績を振り返ると、VYMやDVYは市場平均に近い安定した成績を収めていますが、S&P500を超えるケースは少数派です。
一方でQYLDのような超高配当ETFはインカム確保には適しているものの、トータルリターンは控えめです。
JEPIのような新興ETFはバランス型の新しい選択肢として注目されます。
結論として、「利回りの高さ」だけで選ぶのではなく、「トータルリターン」と「自分の投資目的」を照らし合わせることが重要です。
安定した収入を重視するのか、長期的な資産拡大を狙うのかを明確にした上で、自分に合ったETFをポートフォリオに組み込むのが長期投資成功のカギとなるでしょう。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。