
新興国株インデックスのリスクと最新データ|S&P500との比較で見る実リターン
By Staff | 2025-08-24
Category: インデックス投資
新興国株は、先進国に比べて高い成長ポテンシャルを秘めている一方、ボラティリティや政治的リスクなど多くの課題も抱えています。
特に米国株(S&P500)との比較を通じてみると、その魅力と難しさがより鮮明に浮かび上がります。
本記事では、最新のリターンデータを用いながら、新興国株インデックスの動向とリスクを整理していきます。
新興国株インデックスとは何か
代表的なベンチマークは MSCI Emerging Markets Index です。中国、インド、ブラジル、台湾、韓国などを中心に構成され、世界の成長市場を包括しています。
- 過去10年間(2010〜2019年)の年率リターンは +3.7%。
- 同期間のS&P500は +13.6% と大きな差がありました。
- ただし2000年代前半の資源ブーム期には、新興国株がS&P500を上回る局面もありました。
長期的に見ると、新興国株はS&P500とほぼ同等の年率7%前後を記録していますが、年ごとの変動は遥かに大きいのが特徴です。
最近のリターン推移とS&P500比較
2022年と2023年の直近データを確認すると、新興国株の不安定さが浮き彫りになります。
2022年
MSCI新興国株指数:-19.7%
S&P500:-19.0%
→ 両者とも下落しましたが、新興国は通貨安や中国株低迷の影響でより厳しい展開でした。
2023年
MSCI新興国株指数:+9.9%
S&P500:+26.3%
→ 米国株がAI関連銘柄を中心に急騰する中、新興国株はプラスながらも大きく出遅れました。
さらに、過去10年の累積リターンを比較すると、
MSCI新興国株指数:約 +57%
S&P500:約 +238%
と、その差は歴然です。
新興国株のリスク要因
なぜこれほどパフォーマンス差が開くのでしょうか。その背景には、特有のリスクが存在します。
ボラティリティの大きさ
景気後退やドル高局面で下落幅が大きく、投資家心理を揺さぶりやすい。政治・規制リスク
選挙後の政策変更や規制強化により、企業収益や市場構造が急変するリスク。為替リスク
投資家がドルベースで投資する場合、現地通貨安がリターンを圧迫する。地域偏重
中国と台湾で指数の4割以上を占めるなど、一部市場の動向に依存しやすい。
新興国株に再び注目が集まる背景
それでも新興国株は世界の投資家から完全に見放されてはいません。
- ドル安局面では資金流入が強まりやすい。
- 中国の金融緩和やインフラ投資政策が相場を押し上げる要因となることもある。
インド、メキシコ、ベトナムなど、中国以外の新興国が成長ストーリーを描きつつあり、分散先としての魅力が高まっている。
これらの動きは、長期ポートフォリオにおける新興国株の位置づけを再考するきっかけとなっています。
投資戦略としての新興国株
新興国株をどのように活用すべきか。
- コア資産はS&P500や全世界株ETFとし、新興国株は サテライト的に10〜15%程度 組み入れるのが現実的。
- 投資手段は、MSCI新興国ETF(EEMやVWOなど) が代表的。
- リスク軽減のためには、為替ヘッジ型や地域分散型のETFを選ぶ工夫も有効。
大きな下落時に少しずつ積み立てる「押し目買い戦略」が心理的にも続けやすい。
まとめ
- 新興国株は高い成長余地を持つが、リスクも大きい。
- 直近10年のリターンではS&P500に大きく劣後しており、慎重なポジション管理が求められる。
- それでも新興国は世界経済の重要な成長源であり、ポートフォリオに一部組み込むことでリスク分散効果を得られる。
投資判断では「リスクとリターンのバランス」を見極めることが欠かせない。
FAQ
Q1. 新興国株は長期で投資する価値がありますか?
A1. 年ごとの変動は大きいですが、長期的には先進国に匹敵するリターンを出した時期もあります。特に2000年代前半は資源ブームや中国の急成長で米国株を上回りました。ただし、直近10年では米国株の方が優位であるため「周期性のある資産」と考えるのが現実的です。
Q2. S&P500に比べて新興国株が不利な理由は?
A2. 政治リスク、通貨安、ガバナンス問題がリターンを押し下げやすい構造です。また、米国株はGAFAやNVIDIAなど世界的リーダー企業が指数を牽引しているのに対し、新興国株は国ごとに構造的な課題を抱えている点も差につながります。
Q3. どのETFで投資できますか?
A3. Vanguard FTSE Emerging Markets ETF (VWO) や iShares MSCI Emerging Markets ETF (EEM) が代表的です。他にもiShares Core MSCI Emerging Markets ETF (IEMG) は銘柄数が広く分散されており人気があります。国内ネット証券でも多く取り扱いがあるため、アクセスは比較的容易です。
Q4. 新興国株への比率はどのくらいが適切?
A4. 資産全体の10〜15%程度を目安に、サテライトとして活用するのが一般的です。リスク許容度が高い場合は20%前後に引き上げてもよいですが、長期ポートフォリオでは過度に比率を増やさない方が安定的です。
Q5. 直近で有望視されている地域は?
A5. インド、メキシコ、ベトナムなど、中国以外の成長市場が注目されています。インドは人口増とデジタル化がテーマ、メキシコは米国との地理的な結びつきから「メキシコシフト」が追い風、ベトナムは製造拠点としての台頭が評価されています。
Q6. 為替リスクはどの程度考慮すべきですか?
A6. 新興国株のドル建てリターンは、現地通貨の下落で大きく目減りする可能性があります。ドル高局面では株価が上がっていても為替差損で実質リターンが低くなるケースが多いため、為替動向の影響は必ず考慮する必要があります。
Q7. 新興国株は配当利回りの面で魅力はありますか?
A7. 一部の新興国企業は高配当を出していますが、米国株や先進国株と比べると安定性に欠けます。キャピタルゲインよりもインカムゲイン重視の場合は、新興国株だけに依存するのはリスクが高いでしょう。
Q8. 新興国株はどのくらいの投資期間を前提にすべきですか?
A8. 少なくとも10年以上の長期投資を前提にするのが望ましいです。短期的には大きな下落が頻繁に起こるため、数年単位の運用ではマイナスになる可能性もあります。
Q9. 中国株の影響はどれほど大きいですか?
A9. MSCI新興国株指数では中国が3割以上を占めるため、中国市場の政策や景気動向がリターン全体を左右します。リスク分散の観点から、中国比率を下げた新興国ETFや、インド・東南アジアに特化したファンドを活用する投資家も増えています。
Q10. 新興国株は米国株と逆相関になることがありますか?
A10. 一部の局面では逆相関が見られる場合もありますが、近年は米国市場との相関が高まっています。したがって「米国株が下がっても新興国株でリスク分散」という考え方は必ずしも成り立たない点に注意が必要です。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。