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配当権利落ち日の仕組みと株価への影響を解説|米国株投資の基本知識

By Staff | 2025-09-08

Category: 配当成長投資

配当を受け取るためには、ただ株を持っていればよいというわけではありません。

 

企業が定めるスケジュールを理解する必要があります。

 

特に重要なのが「権利落ち日」です。

 

権利落ち日とは、その日の朝以降に株を買っても配当を受け取れない日のことを指します。

 

逆に言えば、その日の前営業日までに株を保有していれば、その期の配当を受け取ることができます。

 

米国株の場合は、日本株よりもスケジュールが明確に整理されています。

 

投資家が混乱しやすいポイントですが、一度理解すれば難しい仕組みではありません。

 


 

配当スケジュールの流れ

 

配当を受け取るまでにはいくつかのステップがあります。

 

  • 宣言日(declaration date):企業が配当額とスケジュールを発表する日
  • 権利確定日(record date):株主名簿に記録される日
  • 権利落ち日(ex-dividend date):この日以降に購入した株には配当権利がつかない
  • 支払日(payment date):実際に配当金が支払われる日

 

例えばある企業が1株あたり1ドルの配当を発表したとします。

 

3月1日に配当発表、3月14日が権利落ち日、3月15日が権利確定日、4月1日が支払日というスケジュールが組まれることがあります。

 

この場合、3月13日までに株を保有していれば、4月1日に配当を受け取れるという仕組みです。

 


 

株価への影響:権利落ち日の値下がり

 

権利落ち日には理論的に配当額分だけ株価が下がります。

 

これは企業の価値から配当分が切り離されるためです。

 

例えば株価100ドル、配当1ドルの場合、権利落ち日には理論上99ドル前後から取引が始まります。

 

実際の相場では需給や市場全体の動きによって上下するため、必ずしも配当額分ぴったり下がるわけではありませんが、多くの場合は配当分を目安に調整が起きます。

 

実際に2023年に米国の高配当ETFであるVYMが1株あたり0.75ドルの配当を出した際、権利落ち日の株価は前日比でほぼ0.7ドル程度下落しました。

 

このように配当落ちによる株価の変動は理論値に近い水準で観測されることが多いのです。

 


 

短期売買で利益は出せるのか?

 

「権利落ち日前に株を買って配当を受け取り、その後すぐ売れば得をするのでは?」と考える人もいます。

 

しかし現実にはそう簡単ではありません。

 

配当分株価が下がるため、理論上の利益は相殺されてしまいます。

 

さらに取引コストや税金が加わるため、短期で確実な利益を得るのは難しいのです。

 


 

長期投資家にとっての意味

 

長期で配当を再投資する投資家にとって、権利落ち日の株価下落は大きな問題ではありません。

 

むしろ一時的に株価が下がることで、配当再投資の際により多くの株を購入できるチャンスとなる場合もあります。

 

例えば年4回配当を支払う米国株に投資している場合、権利落ち日ごとに株価がわずかに下がるのを繰り返しますが、配当を再投資することで資産は雪だるま式に成長します。

 

VIG(米国増配株ETF)は2006年の設定以来、増配と再投資を組み合わせることで年平均約8%のリターンを実現してきました。

 


 

米国株特有の事情

 

日本株は年1〜2回の配当が多いのに対し、米国株は年4回の配当を行う企業が一般的です。

 

そのため権利落ち日も年4回訪れることになります。

 

配当収入を安定して得たい投資家にとっては、この仕組みは大きなメリットです。

 

一方でドル建て配当であるため、為替の影響を受ける点は注意が必要です。

 

例えば1ドル=110円の時に100ドル受け取れば11,000円ですが、1ドル=150円なら15,000円と大きく変動します。

 

円建て収入を想定している人は、この為替リスクも理解しておく必要があります。

 


 

投資戦略への活かし方

 

権利落ち日を狙って売買するよりも、長期的な資産形成を目的とした投資家にとっては、権利落ち日を「配当をもらうための通過点」と捉えるのが現実的です。

 

短期的な値下がりを気にせず、長期の増配や企業成長を重視する方が結果的に有利に働きます。

 


 

まとめ

 

配当権利落ち日は、配当投資を行う上で避けて通れない仕組みです。

 

株価は理論的に配当分下がるものの、長期投資を前提とすれば大きな問題にはなりません。

 

むしろ再投資のチャンスと捉えることで、複利効果を高める要因にもなります。

 

短期的な値動きに惑わされるのではなく、安定配当や増配企業を軸に長期投資を続けること。

 

これこそが配当投資で成果を上げるための現実的な戦略といえるでしょう。

 


 

FAQ(よくある質問)

 

Q1. 権利落ち日と権利確定日はどう違うのですか?


権利確定日は株主名簿に記録される日で、その日に株を保有していれば配当を受け取る資格があります。一方、権利落ち日はその前営業日までに株を持っていないと配当権利が得られない日です。実務的には「権利落ち日の前日までに購入しておく」ことが重要になります。

 

Q2. 権利落ち日の株価下落は必ず配当額と同じになるのですか?


理論的には配当額分下がるのが基本ですが、実際の市場では需給や全体相場の流れによって前後します。1ドルの配当でも0.8ドルしか下がらなかったり、逆に1.2ドル下がったりするケースもあります。

 

Q3. 権利落ち日を狙った短期売買は有効ですか?


基本的には難しいです。株価が配当分下落するため、受け取った配当と値下がりが相殺されるからです。さらに売買手数料や税金を考えると、短期で利益を得るのは非現実的です。

 

Q4. 米国株の配当はいつ口座に入りますか?


企業が定めた「支払日」に証券会社を通じて自動的に入金されます。多くの場合、権利確定日から数週間後に振り込まれます。ドル建てで受け取り、円に自動換算されるケースが一般的です。

 

Q5. 権利落ち日が多い米国株と日本株の違いは何ですか?


日本株は年1〜2回の配当が多いのに対し、米国株は年4回が一般的です。そのため米国株の方が権利落ち日も多く、配当収入を分散的に得やすいという特徴があります。

 

Q6. 長期投資では権利落ち日を意識する必要がありますか?


長期投資ではそれほど気にする必要はありません。株価は一時的に下がりますが、配当収入と再投資を続けることで複利効果が働き、長期的な資産形成にプラスになります。

 

 

Tags: 配当株
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。