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株価指数と為替の相関関係|米国株投資リターンに与える影響と戦略

By Staff | 2025-08-23

Category: インデックス投資

米国株への投資では、株価指数の動きに加えてドル円の為替相場も大きな影響を及ぼします。


株価指数が上昇しても円高が進行すれば、円換算したリターンは減少する可能性があります。

 

逆に株価が横ばいでも円安が進めば、日本円ベースのリターンは上乗せされます。

 

この「株価指数と為替の相関関係」を理解することは、米国株投資を考えるうえで欠かせない視点です。

 


 

株価指数と為替の基本的な関係

 

  • 株価指数はドル建てで計算されるため、最終的に日本円に換算すると為替がリターンに影響する
  • 短期的には「株価上昇=ドル高」という動きが出やすいケースもある
  • しかし市場環境によっては逆の動きも起こり、相関は一定ではない

 

たとえば、S&P500が年率+10%上昇しても、同期間に円高が進行してドル円が110円から95円に変動すると、円換算ではリターンが+10%から実質+0%近くまで削られることもあります。

 


 

株価指数と為替の相関の実例

 

リーマンショック(2008年)

 

  • S&P500は2007年高値から2009年初めにかけて約-50%の下落
  • 同時期にドル円は120円から90円台まで円高が進行
  • 米国株の下落と円高が重なり、日本円ベースのリターンはさらに悪化した

 

コロナショック(2020年)

 

  • 2020年2〜3月でS&P500は約-30%下落
  • ドル円は112円から101円台へ一時急落し、その後107円近辺まで反発
  • 株価と為替がともに乱高下したことで、短期投資家にとっては為替リスクが顕著に表れた

 

FRB利上げ局面(2022年〜2023年)

 

  • FRBが急速に利上げを進めると、ドル円は2021年末の115円前後から2022年10月には一時150円台までドル高が進行
  • 同時期、S&P500はインフレ懸念と金利上昇で2022年に約-19%下落
  • しかし円換算ではドル高の効果により、下落幅はやや和らぎました

 


 

為替と株価の相関が強まる条件

 

  • リスクオフ局面:世界的な金融危機が発生すると、安全資産として円が買われ、株価下落+円高が同時に起きやすい
  • 金利差拡大:FRBと日銀の政策金利差が広がると、ドル買いが進み株価との連動性が変化する
  • 景気サイクル:世界景気が強いときは株高・ドル高が同時に進むケースもある

 

このように、相関の方向は市場環境次第で変わる点を押さえておく必要があります。

 


 

為替ヘッジの活用

 

米国株ETFや投資信託には「為替ヘッジ付き商品」も存在します。

 

  • ヘッジあり:為替の影響を抑えられるが、金利差に応じてヘッジコストが発生
  • ヘッジなし:為替リスクを負う代わりに、長期的にコストがかからない

 

例として、為替ヘッジ付きS&P500投資信託は、2022年のドル高局面ではヘッジなしよりもリターンが低くなりました。

 

円安メリットを享受できなかったためです。

 


 

為替を踏まえたポートフォリオ戦略

 

投資家は以下のようなアプローチを取ることが可能です:

 

  • 円高時に買い増し:株価が下落し、同時に円高が進んだ局面は長期投資家にとって好機
  • 積立投資で平均化:ドルコスト平均法により、為替変動のリスクを長期で平準化
  • 通貨分散:一部を米ドル資産として保有し、円だけに依存しないポートフォリオ構築

 

例えば、2012年末にドル円が85円台、S&P500が1,400前後の時点で投資を開始し、2022年末に3,800超・ドル円130円台となった場合、ドル建ての+170%上昇に加え、円安効果で円換算リターンは+250%以上に拡大しました。

 


 

まとめ

 

米国株投資においては、株価指数と為替の動きを切り離して考えることはできません。


リターンを正しく把握するためには、ドル建ての成績だけでなく円換算後の数値もチェックする必要があります。

 

短期の為替変動に振り回されすぎず、長期的な積立や資産分散を行うことで安定したリターンを目指すことが可能です。

 


 

FAQ

 

Q1. 株価指数と為替の相関はどのくらい強いですか?


A. 一般的に株価指数と為替の相関は「時期によって変化する」と言われます。2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのような世界的危機では、株価が大きく下落し同時に円高が進む「株安+円高」の組み合わせが強く見られました。しかし、2022年のドル高局面のように「株安+ドル高」となる時期もあり、必ずしも一定ではありません。

 

Q2. 円高のときに米国株を買うのは損ですか?


A. 円高時に買うと短期的には円換算リターンが不利になる可能性があります。しかし長期的には、円高=ドルが安い状態で株を仕込むことになるため、将来の円安局面では大きなリターンにつながることもあります。例えば2011年に1ドル=75円の超円高で米国株を購入した投資家は、その後の株価上昇+円安の両方で大きな利益を得られました。

 

Q3. 為替変動はどれくらい投資成果に影響しますか?


A. 為替の動きは数%から十数%のリターン差を生むことがあります。S&P500が1年間で+10%上昇しても、ドル円が同時期に10%以上円高になると、円換算ではほぼリターンゼロになることもあります。逆に円安が進むと、株価上昇以上のリターンを得るケースもあります。

 

Q4. 為替ヘッジは長期投資に向いていますか?


A. 長期投資では必ずしも有利とは限りません。為替ヘッジにはコスト(スワップや金利差)がかかり、特に日米金利差が大きいとコスト負担が重くなります。実際に2022〜2023年のように日米金利差が拡大した局面では、為替ヘッジ付き商品のリターンがヘッジなしより劣後しました。長期でドル資産を保有するなら、あえてヘッジなしを選ぶ投資家も多いです。

 

Q5. 為替の見通しを常にチェックすべきですか?


A. 短期予測は難しいため、為替動向を完全に読もうとする必要はありません。むしろドルコスト平均法などで定期的に積立投資を行い、長期的にリスクを平準化するのが現実的です。もちろん大きな政策転換や急激な円高・円安局面では注意が必要ですが、投資判断をすべて為替に依存させるのはリスクが高いでしょう。

 

Q6. どの株価指数が為替の影響を特に受けやすいですか?


A. 為替の影響はすべての米国株指数に及びますが、NASDAQ100のようにボラティリティの高い指数は、株価変動と為替変動が重なると損益の振れ幅が大きくなりやすいです。一方でS&P500やダウ平均はより分散されているため、相対的に影響が和らぐ傾向があります。

 

Q7. 為替を考慮した投資のタイミングはどう決めるべきですか?


A. 「円高局面=割安に米国株を買える」と捉えるのが基本戦略です。例えば2020年のコロナショックで一時1ドル=101円台まで円高になったときに投資を開始した人は、その後の円安と株価回復の両方の恩恵を受けました。逆に円安ピーク時には積立などで購入を分散する方が安心です。

 

Q8. 為替と株価の関係を確認する具体的な方法は?


A. ドル円とS&P500、NASDAQ100など主要指数のチャートを並べて見ることで、相関が強い局面・弱い局面を確認できます。また、BloombergやTradingViewなどの金融情報サービスでは為替と株価の相関係数を数値で把握することも可能です。

 

 

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。