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高配当ETFの経費率と投資成果への影響|コストが複利に与える差を徹底解説

By Staff | 2025-09-12

Category: 配当成長投資

高配当ETFを検討する際、多くの人は利回りや分配金の安定性に注目します。

 

しかし、実際に投資家の手元に残るリターンは「経費率」を差し引いた後の数字です。

 

経費率は小さな数字に見えますが、長期投資では複利の力を削り、結果的に資産形成に大きな差を生むことがあります。

 

本記事では、主要な高配当ETFの経費率を比較し、その影響を具体的に見ていきます。

 


 

経費率とは何か

 

ETFの経費率(Expense Ratio)は、運用会社に支払う年間の管理コストを示します。

 

たとえば経費率0.06%のETFに100万円を投資すると、年間で600円が運用会社に支払われます。

 

一見すると誤差のように感じる金額ですが、投資額が大きくなり、保有期間が長期に及ぶと、その影響は無視できません。

 


 

高配当ETFの経費率比較

 

同じ「高配当ETF」でもコストには大きな差があります。

 

代表的なファンドを整理すると以下のとおりです。

 

  • VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF):0.06%
  • HDV(iShares Core High Dividend ETF):0.08%
  • SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF):0.07%
  • DVY(iShares Select Dividend ETF):0.38%
  • QYLD(Global X Nasdaq 100 Covered Call ETF):0.60%
  • JEPI(JPMorgan Equity Premium Income ETF):0.35%

 

VYMやHDVは業界最低水準で、事実上ほとんど気にならないレベルです。

 

一方でQYLDやJEPIのように戦略型のETFはコストが高く、分配金で見える利回りを減らす要因になります。

 


 

経費率が投資成果に与える影響

 

短期では経費率の違いを感じにくいかもしれませんが、10年、20年と保有するうちに複利効果が削られ、無視できない差となります。

 

例えば、年率リターン7%のETFに投資し、30年間保有した場合を考えます。

 

  • 投資額100万円
    ・経費率0.05%:約760万円
    ・経費率0.60%:約690万円
    ・差:約70万円

 

  • 投資額1000万円
    ・経費率0.05%:約7600万円
    ・経費率0.60%:約6900万円
    ・差:約700万円

 

  • 投資額2500万円
    ・経費率0.05%:約1億9000万円
    ・経費率0.60%:約1億7250万円
    ・差:約1750万円

 

  • 投資額5000万円
    ・経費率0.05%:約3億8000万円
    ・経費率0.60%:約3億4500万円
    ・差:約3500万円

 

  • 投資額7500万円
    ・経費率0.05%:約5億7000万円
    ・経費率0.60%:約5億1750万円
    ・差:約5250万円

 

  • 投資額1億円
    ・経費率0.05%:約7億6000万円
    ・経費率0.60%:約6億9000万円
    ・差:約7000万円

 

このように、投資元本が大きくなればなるほど、また保有期間が長くなればなるほど、経費率の差は莫大なインパクトを生みます。

 

特に数千万円〜1億円規模の資産運用では、コストを軽視することがリタイア後の生活資金に直結する可能性があると言えるでしょう。

 


 

経費率と分配金の関係

 

高配当ETFは「分配金が多い」点が魅力ですが、経費率が高いとその分配当も目減りします。

 

特にQYLDは毎月分配を行う一方で、経費率0.60%が配当に直接響いています。

 

JEPIも0.35%とやや高めですが、分散やアクティブ運用の工夫によって一定の成績を維持しています。

 

つまり、経費率が高いETFを選ぶ場合は「コストに見合う価値があるか」を確認する必要があります。

 

単に高利回りに目を奪われるのではなく、配当の安定性や株価の下落耐性も合わせて考えるべきです。

 


 

経費率だけで判断できない理由

 

もちろん「経費率が低ければ必ず優れている」というわけではありません。

 

ETFの投資戦略そのものが投資家の目的に合っているかが前提となります。

 

  • 低コストのVYMやHDVは、広範な分散と安定的な配当で長期保有に適する。
  • QYLDはコストが高いものの、毎月の二桁利回りという特徴を持つため、インカム重視の投資家に選ばれる。
  • JEPIはアクティブ運用によって市場平均と異なるリスク・リターンを提供しており、補完的な位置づけで活用されやすい。

 

重要なのは、自分の投資目的に「低コストで市場平均に近い成果を目指すのか」「高配当戦略で毎月の収入を確保したいのか」を照らし合わせて選択することです。

 


 

まとめ

 

高配当ETFの利回りは目を引きますが、経費率が長期の投資成果に与える影響は決して小さくありません。

 

VYMやHDVのように低コストで安定性のあるETFをポートフォリオの核としつつ、QYLDやJEPIのような戦略型ETFは補完的に使うのが現実的です。

 

最終的に手元に残るのは「配当+株価成長−経費率」です。

 

この単純な式を意識することで、投資判断の精度は格段に高まるでしょう。

 

 

Tags: 配当株
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。