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高配当株と低配当株の使い分け方|目的別の最適ポートフォリオ戦略

By Staff | 2025-09-09

Category: 配当成長投資

配当株投資というと「利回りが高い株を買えばよい」と考えられがちですが、実際には大きく3つのタイプに分けられます。

 

すぐに多くの配当を得られる高配当株、安定した配当と成長のバランスを取る中配当株、そして利回りは低いが将来の増配余地が大きい低配当株(配当成長株)です。


投資家は目的に応じて、この3つをどう組み合わせるかを考える必要があります。

 


 

高配当株:今すぐ収入を得たい人向け

 

高配当株は利回りが4〜6%以上と比較的高く、安定したインカム収入を狙う人に向いています。

 

典型的なのは通信株のAT&T(T)やベライゾン(VZ)で、長年にわたり高い配当を支払ってきました。

 

ただし通信業界は成長性が限られており、減配リスクも存在します。

 

ETFではVYMやHDVが代表的です。

 

ただし「高配当ETF」とはいえ、実際の利回りは3〜4%程度にとどまります。

 

VYMは2006年の設定当初から長期的に配当が伸び、分配金は当時の約1.3ドルから2023年には3.4ドルへと約2.5倍になりました。

 

株価も60ドル台から100ドルを超える水準まで成長しており、インカムとキャピタルゲインの両方を得ることができています。

 

高配当株の魅力は「即効性」です。

 

投資してすぐに比較的まとまった現金収入を得られるため、リタイア層や生活費の補填を重視する投資家に適しています。

 

一方で、株価成長や配当の伸びは緩やかで、将来の増配余地は限定的です。

 


 

中配当株:安定収入と緩やかな成長のバランス

 

中配当株は利回りが2〜3%程度で、安定的に配当を出しつつ、ある程度の株価成長や増配も期待できる銘柄です。

 

コカ・コーラ(KO)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、マクドナルド(MCD)などが典型的です。

 

例えばKOは1980年代から連続増配を続けており、現在の利回りは約3%前後。

 

株価の大幅成長はないものの、安定した収入源として長期保有に適しています。

 

MCDも1990年代以降安定的に増配を重ねており、株価自体も堅調に成長してきました。

 

中配当株は「ある程度のインカムを確保しつつ、長期で緩やかに増える収入を得たい人」にフィットします。

 


 

低配当株(配当成長株):将来に大きな収入を得たい人向け

 

低配当株は利回りが1%前後と低いため、短期的な配当収入は期待できません。

 

しかし、増配率が非常に高い点が最大の特徴です。

 

マイクロソフト(MSFT)、マスターカード(MA)、ビザ(V)、コストコ(COST)などが代表例です。

 

MSFTは2003年に配当を開始しましたが、その後20年間で配当額は約10倍に増加しました。

 

株価自体も長期的に大きく成長しており、当初の利回りは1%未満でも、投資開始から時間が経つほど当初投資額に対するYOCは大きく膨らんでいきます。

 

つまり、低配当株は「今は少ない収入を我慢してでも、将来の大きな配当と株価成長を狙いたい」という人に適しています。

 

インフレ環境でも購買力を維持しやすいのも強みです。

 


 

投資目的に応じた使い分けの考え方

 

どのタイプを重視するかは投資目的やライフステージによって異なります。

 

  • すぐに収入を得たいなら高配当株を多めに
  • 安定収入と成長のバランスを取りたいなら中配当株を中心に
  • 将来の成長と増配を重視するなら低配当株を積極的に

 

例えば20〜30代ならSPYやQQQといった成長重視のETFを軸にしつつ、VIGやMSFTのような配当成長株を組み込んでおくと、20年後には強力なYOCを実現できます。

 

40〜50代ではVYMやHDVを加えて収入を強化し、60代以降では高配当株中心に切り替えて生活費の補填を重視する戦略が現実的です。

 


 

配当の使い方による違い

 

配当の魅力は「柔軟に使える」点にもあります。

 

現役世代なら受け取った配当を再投資して複利効果を高めるのが合理的です。

 

リタイア後は配当を生活費に回すことで株を売却せずに資金を確保できます。

 

再投資と消費のどちらに使うかを自由に選べるのは、配当投資ならではの強みです。

 


 

リスクと注意点

 

  • 高配当株:景気後退時には減配リスク(例:AT&Tの減配、VYMは2008年と2020年に一時的に減配)
  • 中配当株:安定感はあるが、大きな株価成長は期待しにくい
  • 低配当株:配当が少ないため短期的なインカム確保には不向き

 

どのタイプにも一長一短があり、分散して組み合わせることでリスクを抑えられます。

 


 

まとめ

 

高配当株、中配当株、低配当株はいずれも配当投資において重要な役割を持ちます。

 

投資家は「今の収入を重視するのか、それとも将来の成長を重視するのか」を明確にし、状況に応じてバランスを取ることが求められます。


単純に「どれが一番良いか」を決めるのではなく、自分の目標に合わせて組み合わせることこそが、配当投資を成功させる鍵といえるでしょう。

 


 

FAQ

 

Q1. 高配当株だけに集中して投資しても大丈夫?


高配当株は魅力的なインカムを提供しますが、減配リスクや株価成長の乏しさが課題です。AT&Tやエネルギー株のように高い利回りを維持しながらも減配を経験した企業は少なくありません。高配当株に偏らず、中配当株や配当成長株を組み合わせることでリスク分散が可能になります。

 

Q2. 低配当株(配当成長株)は本当に役立つの?


短期的には配当収入がほとんど得られませんが、長期では大きな差を生みます。例えばマイクロソフトは配当開始から20年で配当額が約10倍に成長しました。初期利回りは1%未満でも、長期保有すればYOCが大幅に増えるため、若い世代に特に適しています。

 

Q3. 中配当株はどのように活用すればよい?


中配当株は安定性と成長性のバランスを取れる存在です。コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンのように数十年連続で増配してきた企業は、長期保有で安心感があります。ポートフォリオの「土台」として位置付けるのが効果的です。

 

Q4. 高配当ETFのVYMは本当に高配当なの?


VYMは「高配当ETF」と呼ばれますが、実際の利回りは3〜4%程度です。個別の通信株やエネルギー株ほどの利回りではありませんが、分散効果によってリスクが抑えられています。高配当個別株の即効性とETFの安定性をどう組み合わせるかがポイントです。

 

Q5. 配当収入は再投資すべき? それとも生活費に使うべき?


現役世代では再投資して複利効果を高めるのが効率的です。一方でリタイア後は配当を生活費に回すことで株を売却せずに収入を確保できます。状況によって「再投資にも消費にも使える柔軟性」がある点が、配当投資の大きな利点です。

 

Q6. インフレに強いのはどのタイプ?


最も強いのは配当成長株です。利回りが低くても増配率が高いため、インフレ環境でも実質的な購買力を維持できます。中配当株も安定的な増配で一定の対応が可能ですが、高配当株は成長余地が小さいためインフレ耐性は弱めです。

 

 

Tags: 配当株
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。