
株価指数の最大ドローダウン事例|SPY・QQQ・IWM・TLT・GLDの歴史的下落率と教訓
By Staff | 2025-08-22
Category: インデックス投資
投資において多くの人が注目するのはリターンですが、それと同じくらい重要なのが「ドローダウン(最大下落幅)」です。
どれだけ上昇余地があるかよりも、どこまで下がり得るかを理解することで、自分のリスク許容度に合った投資判断が可能になります。
株式ETFや債券ETF、金ETFの過去の大きな下落事例を振り返ることで、資産配分の考え方を深めることができます。
ドローダウンとは何か
最大ドローダウンとは、過去のピークからボトムまでの最大下落率を示す指標です。
例えばあるETFが100ドルから50ドルまで下がった場合、最大ドローダウンは-50%となります。
株価指数ごとに下落幅や回復力の特徴が異なるため、過去の事例を知っておくことは投資戦略の構築に役立ちます。
SPY(S&P500 ETF)のドローダウン事例
S&P500に連動するSPYは、米国を代表するインデックスです。
- **リーマンショック(2007–2009年)ではピークからボトムまで約-56%**の下落を経験しました。米国株式市場全体が金融危機の影響を受け、大幅な調整を余儀なくされました。
- **コロナショック(2020年2–3月)ではわずか1か月半の間に-33%**急落しました。しかしその後の回復は早く、2020年末には高値を更新しています。
SPYは大きく下がる局面もある一方で、回復力の強さも歴史が示しています。
QQQ(NASDAQ100 ETF)のドローダウン事例
テクノロジー株中心のNASDAQ100に連動するQQQは、リターンの高さと同時にリスクも大きいETFです。
- **ドットコムバブル崩壊(2000–2002年)では最大約-82%**という壊滅的な下落を経験しました。回復までに約15年かかり、ハイテク株投資のリスクの大きさを示す事例です。
- 2022年の急速な利上げ局面では年間**-33%**の下落。金利上昇に最も敏感なグロース株が中心のため、調整幅が大きくなりました。
高成長期待の裏側には、大きなドローダウンのリスクがあることがよくわかります。
IWM(ラッセル2000 ETF)のドローダウン事例
中小型株に連動するIWMは、景気動向に左右されやすいETFです。
- リーマンショック時にはピークから**-59%**下落し、S&P500以上の打撃を受けました。
- コロナショック時にはわずか2か月で**-41%**急落。中小企業は景気悪化の影響をダイレクトに受けやすいため、大型株以上に値動きが荒くなります。
一方で景気回復期には反発も強く、2020年後半から2021年にかけてIWMは**+95%以上**の上昇を見せました。
リスクとリターンが大きく表裏一体のETFです。
TLT(米国長期国債ETF)のドローダウン事例
株式と逆相関で動くことが多い長期国債ETFのTLTも、大きなドローダウンを経験しています。
- 2020年のコロナショック時は安全資産として買われ、年初から年末まで**+18%**の上昇となりました。
- しかし2020年高値から2022年末までの金利急騰局面では**-46%**の大幅下落。株式と債券が同時に下落する「ダブル安」が起き、投資家にとって厳しい局面となりました。
通常はリスクヘッジとされる債券でも、金利環境次第で大きな下落リスクがあることを示しています。
GLD(金ETF)のドローダウン事例
金は安全資産として人気ですが、過去には大きな調整局面もありました。
- 2011年の金価格ピークから2015年にかけて**-45%**下落。株式市場が堅調な時期には資金が株式に流れることで、金は逆に売られる傾向があります。
- 一方で2020年のコロナ危機では実質金利の低下とインフレ懸念からGLDが**+25%**上昇しました。
金は株式下落時に強さを発揮する一方、長期的には価格変動が大きいことを理解する必要があります。
ドローダウン事例からの学び
- SPY:最大-56%下落も、回復力が強い
- QQQ:最大-82%の大暴落経験。成長性とリスクは表裏一体
- IWM:中小型株特有のボラティリティ。リスクとリターンが極端
- TLT:安全資産とされるが金利急騰時は-46%下落
- GLD:インフレ局面で強いが、最大-45%下落の過去もあり
資産ごとに下落余地が異なるため、分散投資を行いポートフォリオ全体でリスク管理を行うことが重要です。
まとめ
投資において「どれだけ上がるか」だけでなく「どれだけ下がり得るか」を把握することは必須です。過去の最大ドローダウンを理解すれば、自分がどの程度の下落に耐えられるかを明確にできます。SPY、QQQ、IWM、TLT、GLDはいずれも異なるドローダウンの特徴を持ち、これを踏まえて資産配分を考えることで、より安定した長期投資が可能になるでしょう。
FAQ:株価指数と最大ドローダウンに関するよくある質問
Q1. ドローダウンとボラティリティの違いは何ですか?
A. ボラティリティは価格の変動幅を示すもので、日々の上げ下げを測ります。一方、ドローダウンは「過去のピークからどれだけ下がったか」を示す最大の下落率です。短期的な動きよりも「最悪の下落幅」を把握できる点で投資家にとって重要です。
Q2. ドローダウンからの回復にはどのくらい時間がかかりますか?
A. ケースによって大きく異なります。SPYはコロナショック後、数か月で回復しましたが、QQQはドットコムバブル崩壊で15年以上かかりました。下落率が大きいほど、回復に長い年月が必要になる傾向があります。
Q3. 債券ETF(TLT)は株式のリスクヘッジになるのですか?
A. 多くの場合、株式が下落する局面で国債は上昇しリスク分散に役立ちます。しかし2022年のように金利が急上昇した局面では、株と債券が同時に下落しました。ヘッジ効果は環境によって変わるため、過去のドローダウン事例を踏まえてバランスを取ることが大切です。
Q4. 金(GLD)は安全資産として常に機能しますか?
A. 金はインフレや金融不安の局面で買われやすい一方、株式市場が好調な時期には売られやすい傾向があります。2011年以降の数年間は大きく下落した例もあり、常に安全資産であるとは限りません。長期ポートフォリオの一部として保有するのが現実的です。
Q5. 投資初心者はどの程度のドローダウンを想定すべきですか?
A. 一般的に株式市場では30〜50%程度のドローダウンは歴史的に何度も発生しています。そのため長期投資を前提とする場合でも、この程度の下落に耐えられるかを基準に資産配分を考えるのが望ましいでしょう。
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投資忍者 プロフィール
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。