
インフレ期のインデックス投資成績|SPY・QQQ・IWM・TLT・GLDの実績比較
By Staff | 2025-08-22
Category: インデックス投資
インフレは資産価格に大きな影響を与えます。
株式は金利上昇によって割引率が高まりバリュエーションが低下しやすく、債券は利回り上昇により価格が下落します。
一方で、金は伝統的にインフレヘッジ資産として評価されてきました。
ここでは歴史的な3つのインフレ期を取り上げ、SPY(S&P500)、QQQ(NASDAQ100)、IWM(Russell2000)、TLT(米国長期国債)、GLD(金ETF) の成績を比較します。
1970年代スタグフレーション(1970–1979)
この時期は原油ショックと高インフレが同時に進行し、株式市場にとって厳しい環境となりました。
- S&P500(SPY相当):名目リターンは年率約 5.9%。しかしインフレ率が高く、実質リターンはほぼゼロ。
- 小型株(IWM相当):年率約 4〜5% と低迷。景気敏感のため打撃が大きかった。
- 米国長期国債(TLT相当):金利上昇の影響で価格は下落し、年率約 −1〜0%。
- 金(GLD):この時期最大の勝者で、年率約 +30%、10年間で約 10倍 に上昇。
👉 株式と債券が苦しむ一方、金が圧倒的なパフォーマンスを示した典型的なインフレ期でした。
2000年代の商品高インフレ(2003–2008)
原油価格や商品市況が上昇し、インフレが意識された局面です。
- SPY:2003年から2007年にかけて年率約 12% のリターンを記録。ただし2008年の金融危機で急落。
- QQQ:ドットコム崩壊後の回復期で、2003–2007年は年率約 15%。しかし2008年には大幅下落。
- IWM:小型株は好調で、2003–2007年に年率約 16%。だが金融危機での下落は大きかった。
- TLT:この時期は金利が低下傾向で、年率約 +6% と堅調。
- GLD:年率約 +15%。2000年代半ばから金価格は2倍以上に上昇。
👉 株式も商品高の恩恵を受けましたが、最終的には金融危機で大きく値を崩しました。
一方、金はインフレと信用不安で強さを発揮しました。
2021–2023年の高インフレ期
コロナ後の金融緩和と供給制約により、米国は40年ぶりの高インフレを経験しました。
- SPY:2022年に年間で 約−19% 下落。
- QQQ:ハイテク株への逆風が強く、2022年は 約−33%。
- IWM:小型株から資金が流出し、2022年は 約−21%。
- TLT:金利上昇の直撃を受け、2022年は 約−31%。従来の「守りの資産」として機能せず。
- GLD:2022年は年間で 約+0.5%。大きな上昇はなかったが、他資産が下落する中で価値を維持。
👉 この局面は「株と債券が同時に下落」する特殊なインフレ期で、分散の難しさを浮き彫りにしました。
インフレ期の投資パターン
インフレ局面では以下の特徴が見られます。
- 成長株(QQQ)は金利上昇に最も弱く、大幅下落しやすい
- 小型株(IWM)は景気敏感で変動が大きく、安定性に欠ける
- 債券(TLT)は通常の景気後退時には守りになるが、インフレ局面では価格が下がる
- 金(GLD)はインフレ期に安定・上昇を示す傾向が強い
投資家にとっての示唆
- インフレ期は株式・債券の両方に逆風が吹き、従来の分散投資が効きにくくなる
- QQQのような成長株はインフレに弱く、短期的に大きな損失を抱えるリスクがある
- IWMはリスクが高いが、景気回復期には強い反発を見せる可能性もある
- TLTはインフレ時に脆弱で、2022年のように株と同時に下落するリスクを理解すべき
- GLD(金)はインフレ耐性が高く、分散ポートフォリオに組み込む価値がある
まとめ
歴史を振り返ると、インフレ期には株式と債券が同時に苦しむケースが多く見られます。
1970年代は金が圧倒的に強く、2000年代は株式も商品高で一定の成果を出しましたが、最終的に金が安定的なリターンを提供しました。
そして直近の2021〜2023年では、株と債券がそろって下落する中、金が相対的に価値を守りました。
結論として、インフレ期の資産運用においては「株・債券に偏らず、金を含めた柔軟な分散投資」が重要だといえます。
FAQ
Q: インフレ期に最も強いインデックスは?
A: 歴史的にGLD(金)が安定したパフォーマンスを示しており、1970年代には年率+30%近い成長を記録しました。
Q: SPYとQQQではインフレにどちらが弱い?
A: QQQ(NASDAQ100)が特に弱く、2022年には−33%とSPYを大きく下回りました。
Q: 債券(TLT)はインフレ期に有効?
A: いいえ。インフレで金利が上昇すると価格が下落し、2022年は−31%の損失を出しました。
Q: 金(GLD)は常にインフレヘッジになる?
A: 多くの場合で有効ですが、上昇幅はインフレ率や金融政策によって変動します。
Q: インフレ期のポートフォリオはどう組むべき?
A: 株式比率を調整しつつ、金を一定割合組み込むことで耐性を高めるのが現実的です。
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。