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金利上昇期のインデックス投資戦略|米国ETFでリスクを抑える方法

By Staff | 2025-08-21

Category: インデックス投資

米国株に投資するうえで、金利は重要なマクロ要因の一つです。

 

金利が上昇すると企業の借入コストが増え、利益が圧迫されます。

 

また将来キャッシュフローの割引率が高くなるため、グロース株のバリュエーションが縮小しやすくなります。

 

さらに債券の利回りが上がることで、相対的に株式の魅力が下がる点も無視できません。

 

その一方で、金利上昇から恩恵を受けるセクターやETFもあります。

 

投資家は市場全体に逆風が吹く局面でも、セクターごとの特徴を理解することでリスクを抑えつつ運用を続けることが可能です。

 


 

金利上昇期に弱い資産とセクター

 

金利が上昇すると特に影響を受けやすいのが以下の分野です。

 

  • グロース株中心の指数(NASDAQ100など)


    将来の成長を期待して割高に評価されるグロース株は、金利上昇局面で大きく調整しやすくなります。

     

  • 不動産(REIT)や公益セクター


    借入に依存する割合が大きく、金利負担が増えることで収益性が低下します。

     

  • 長期債ETF(TLTなど)


    金利が上がると債券価格が下落するため、長期債に投資するETFは逆風となります。

     


 

金利上昇期に強い資産とセクター

 

一方で金利上昇を追い風にできる分野もあります。

 

  • 金融セクター(XLF)


    銀行は貸出金利と預金金利の差(利ざや)が拡大しやすく、収益が改善する可能性があります。

     

  • エネルギー・素材セクター(XLE, XLB)


    インフレ環境では商品価格が上昇し、資源関連企業の利益が拡大しやすい傾向があります。

     

  • 短期国債ETF(SHV, BILなど)


    金利上昇により利回りが上昇するため、安全資産としての魅力が高まります。

     

  • 高配当株ETF(VYM, SCHDなど)


    安定したキャッシュフローを持つ企業は、金利上昇局面でも相対的に底堅く推移するケースが多いです。

     


 

インデックス投資家が取るべき戦略

 

金利上昇局面では、市場平均をそのまま持ち続けるよりも工夫を取り入れた方がリスクを抑えられます。

 

  • 株式100%から一部を債券や短期ETFにシフトし、ポートフォリオの安定性を高める
  • グロース偏重を避け、バリュー株や高配当インデックスを追加する
  • 金融やエネルギーといった金利上昇に強いセクターをポートフォリオに加える
  • コモディティ連動ETFを組み込み、インフレヘッジとして活用する

 

こうした戦略を組み合わせることで、下落リスクを軽減しながら市場に参加し続けることが可能です。

 


 

日本から投資する際のポイント

 

楽天証券やSBI証券など国内ネット証券を利用すれば、主要な米国ETFに簡単にアクセスできます。

 

  • コア資産:VOO(S&P500)、VTI(米国株式市場全体)
  • サテライト資産:VYMやSCHD(高配当株ETF)、XLF(金融)、XLE(エネルギー)
  • 安定資産:短期債ETF(SHV, BIL)

 

投資する際は、為替リスクや信託報酬の水準を確認することが欠かせません。

 

またNISA口座での非課税投資が可能かどうかも重要なチェックポイントです。

 


 

過去の金利上昇局面から学ぶ

 

歴史を振り返ると、金利上昇期にはセクターや投資スタイルごとに明確な差が見られました。

 

  • 2004〜2006年のFRB利上げ局面:政策金利は1%から5.25%まで引き上げられました。銀行株など金融セクターは堅調に推移した一方、借入依存度の高いREITは逆風を受けてパフォーマンスが低迷しました。

     

  • 2015〜2018年のFRB利上げ局面:FRBは合計9回の利上げを実施。この期間の動向を具体的なETFを使って見ると、

     

    • QQQ(NASDAQ‑100連動、グロースETF) は、2015年に約+9.5%、2016年に+7.1%、そして2017年には+32.7%と、著しい上昇を記録しています。

       

    • VYM(高配当ETF) は2015年に+0.28%とほぼ横ばいにとどまりましたが、金利上昇懸念が一段落した後の2016年には+17.04%と力強く回復しました。

       

このように、同じ利上げ局面でもグロース株(QQQ)は一貫して強く推移し高配当株(VYM)は一時的に調整する局面がありながらも、翌年には大きく回復する、という両方のトレンドが見られました。

 

ただし、現在のように高インフレと政策の先行き不透明感が同居する局面では、過去のパターンがそのまま再現される保証はありません

 

過去の教訓を参考にしつつ、現在の経済環境に合わせた柔軟な戦略調整が求められます。

 


 

まとめ

 

金利上昇は株式市場に逆風となるものの、インデックス投資戦略を工夫することで安定性を確保できます。

 

  • グロースやREITは影響を受けやすいため比率を抑える
  • 金融、エネルギー、高配当ETF、短期債ETFは相対的に優位
  • コアにVOOやVTIを据え、サテライトで金利上昇に強いETFを補完する

 

長期投資の軸を崩さずに、金利環境に応じたセクター配分を取り入れることで、リスクを抑えながら効率的な運用が可能になります。

 


 

FAQ:金利上昇期のインデックス投資に関するよくある質問

 

Q1. 金利上昇期でもS&P500(VOOやIVVなど)を持ち続けるべきですか?


A. 長期投資の観点では、S&P500のような広く分散されたインデックスを持ち続けることは合理的です。ただし短期的には調整局面も想定されるため、債券ETFや高配当ETFを補助的に加えることでリスクを軽減できます。

 

Q2. 金利上昇局面ではグロース株ETF(QQQなど)には投資しない方がいいですか?


A. 金利上昇は将来収益の割引率を押し上げ、特にグロース株に逆風となります。しかしイノベーション企業は長期で高い成長を見込めるため、完全に外す必要はありません。比率を抑えつつ、バリューや高配当ETFとの組み合わせが有効です。

 

Q3. 為替の影響はどの程度考慮すべきですか?


A. 金利上昇期の米ドルは強含みやすく、円ベースのリターンを押し上げる場合があります。ただし為替相場は読みにくいため、為替ヘッジ型の商品を選ぶか、ドル建て資産を長期保有する前提でリスクを受け入れるか、投資方針に合わせて判断しましょう。

 

Q4. 債券ETFはどのように使うのが効果的ですか?


A. 長期債ETF(TLTなど)は金利上昇で価格が下落するため避けた方が無難です。代わりに短期国債ETF(SHV, BILなど)を組み合わせると、金利上昇を追い風に安定的な利回りを得やすくなります。

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。