
JEPIの高利回り戦略と分配金推移を徹底解説|S&P500との比較と投資のポイント
By Staff | 2025-09-11
Category: 配当成長投資
JPMorgan Equity Premium Income ETF(ティッカー:JEPI)は、2020年にJPモルガンが運用を開始した米国株ETFです。
純資産総額は約407億ドル(約6兆円規模)に達し、短期間で急成長しました。
目的は「株式市場のリターンの一部を享受しつつ、毎月安定したインカムを投資家に提供すること」です。
このETFの特徴は、S&P500に含まれる大型株を中心に投資しながら、オプション取引(カバードコール戦略)を組み合わせて追加収益を得ている点です。
そのため、株価上昇をすべて享受することはできませんが、代わりに分配金の水準を高めています。
高利回りを生み出す仕組み
JEPIの戦略はシンプルでありながら独特です。
- 米国大型株(Microsoft、Amazon、NVIDIAなど上位構成銘柄)に分散投資
- カバードコール戦略を活用し、オプションプレミアムを毎月の収益に加える
- ボラティリティを抑えつつ、安定的なキャッシュフローを確保する設計
これにより、直近12カ月の分配金利回りは約8.25%と高水準を維持しています。
従来の高配当ETFが3〜4%程度の利回りであることを考えると、その差は明確です。
JEPIの分配金推移
JEPIは毎月分配型のETFで、2021年以降も安定的に高い分配を続けています。
例えば、2024年の年間分配金利回りはおおむね7〜10%台で推移しました。
2025年7月末時点では30日SEC利回り7.92%、12カ月分配金利回り8.25%となっています。
ただし、分配金は固定ではなく、市場環境に応じて変動します。
株式市場のボラティリティが高い時期にはオプション収入が増え、分配金が厚くなる一方、平穏な相場ではやや低下することもあります。
株価チャートとトータルリターンの違い
GoogleやYahoo FinanceでJEPIの株価チャートを見ると、2020年の設定時から現在までの価格は約50ドルから56ドル台と、5年でわずか13%程度の上昇に見えます。
一見すると「ほとんど増えていない」と感じるかもしれません。
しかし、ファクトシートに記載されている年率11%以上のリターンは「トータルリターン」であり、株価上昇分に加えて分配金を再投資した結果です。
JEPIは毎月8%前後の分配を行ってきたため、その累積効果は大きく、仮に1万ドルを投資して分配金を再投資していた場合、5年で約1万7,600ドルにまで増えています。
つまり、株価チャートだけを見てもJEPIの実力は正しく評価できず、「分配金込みのトータルリターン」で考えることが重要です。
S&P500とのリターン比較
JEPIのリターンをS&P500と比べてみると、特徴が浮き彫りになります。
- 2021年:JEPI +21.61%、S&P500 +28.71%
- 2022年:JEPI -3.54%、S&P500 -18.11%
- 2023年:JEPI +9.88%、S&P500 +26.29%
- 2024年:JEPI +12.56%、S&P500 +25.02%
上昇局面ではS&P500に劣後する一方、2022年のような下落局面では損失を大きく抑えている点が注目されます。
これはまさに、安定性とインカム重視というJEPIの戦略が表れています。
JEPIのリスクと注意点
もちろん、高利回りにはリスクも伴います。
- 株価の大幅上昇時には値上がり益を取り逃す
- 分配金は毎月変動し、将来の利回りが保証されるわけではない
- 経費率は0.35%と、VYM(0.06%)などの低コストETFに比べれば高め
- 米国課税と日本での課税が二重にかかるため、外国税額控除を考慮する必要がある
JEPIの位置づけと活用法
JEPIは「インカムを重視しつつ、大きな値下がりリスクを避けたい」という投資家にとって有力な選択肢です。
特に毎月分配で得られるキャッシュフローは、生活資金や再投資の原資として活用しやすい特徴があります。
一方で、長期の資産形成においては「株価成長を取り込みたい」というニーズもあります。
その場合、VTIやVOOなどのインデックスETFと組み合わせることで、バランスを取るのが現実的です。
まとめ
JEPIは、S&P500の一部リターンを犠牲にする代わりに、8%前後の高い分配利回りを実現するユニークなETFです。
下落局面での安定性や毎月のインカムは大きな魅力ですが、株価上昇局面では取りこぼしがある点を理解して活用することが重要です。
「株価チャートでは横ばいに見えても、分配金込みのトータルリターンでは年率11%超」という事実を知ることは、JEPIを正しく評価するうえで欠かせません。
ポートフォリオの中で「安定的な現金収入」を確保するためのツールとして、JEPIをどう組み込むかが今後の投資戦略の鍵になるでしょう。
FAQ
Q1. JEPIの分配金は毎月どれくらいですか?
過去12カ月平均で年率8%前後に相当します。ただし、市場環境によって変動します。
Q2. JEPIは高配当ETF(VYMやHDV)とどう違うのですか?
VYMなどは高配当株に投資するのに対し、JEPIはオプション収入を加えて利回りを高めています。
Q3. JEPIのリスクは何ですか?
株価上昇益を取り逃す可能性、分配金変動リスク、信託報酬の高さなどがあります。
Q4. JEPIは長期投資に向いていますか?
安定的なインカムを求める投資家に向いていますが、トータルリターン重視の長期投資家は他ETFとの併用が適しています。
Q5. 日本から投資する場合、税金はどうなりますか?
米国で10%の源泉徴収、日本で20%の課税がかかります。外国税額控除を使えば一部調整可能です。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。