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EPS成長と配当持続性の関係|長期投資で重視すべき利益成長の視点

By Staff | 2025-09-09

Category: 配当成長投資

配当株投資を考えるとき、多くの人が最初に注目するのは利回りや連続増配の年数です。

 

しかし本当に重要なのは、企業の利益を示すEPS(Earnings Per Share:1株当たり利益)の成長です。

 

EPSが伸びなければ、いくら過去に立派な配当実績があっても、将来にわたって配当を維持するのは難しくなります。

 


 

EPSとは何か

 

EPSは企業の最終的な利益を株式数で割ったもので、株主一人ひとりに帰属する利益を示す指標です。

 

計算式は「純利益 ÷ 発行済株式数」。これが毎年増えているかどうかが、企業の健全性や将来性を判断するうえで大切になります。

 

EPSは株価評価にも使われますが、配当株投資においては「この企業が今後も配当を出し続けられるか」を測る基盤となります。

 


 

EPS成長と配当の持続性

 

企業が利益を拡大すれば、その一部を株主還元に回す余地が生まれます。

 

EPSが年5〜10%程度成長していれば、配当も長期的に増加しやすい傾向があります。

 

反対にEPSが横ばい、あるいは減少している企業は、配当を維持すること自体が難しくなります。

 

例えばゼネラル・エレクトリック(GE)はかつて米国を代表する配当株でしたが、金融危機後にEPSが低迷し、大幅減配に追い込まれました。

 

配当履歴がいかに立派でも、利益が伴わなければ持続性は担保されないことを示す典型的な事例です。

 


 

配当性向とEPSの相互作用

 

EPSの伸びとともに確認すべきなのが配当性向です。

 

配当性向とは利益のうち配当に回している割合を示すもので、30〜60%程度がバランスの良い水準とされます。

 

EPSが伸びていて、かつ配当性向に余裕があれば、将来的にも無理なく増配を続けられる可能性が高まります。

 

マイクロソフト(MSFT)は過去10年でEPSを大きく伸ばしながら、配当性向は20〜30%台にとどめています。

 

その結果、年率約10%の増配を続けており、投資家にとって理想的な成長パターンとなっています。

 

一方で、利益が伸びないのに配当性向が80%を超えている企業は、見せかけの高配当の裏に減配リスクを抱えていることが少なくありません。

 


 

EPS成長が長期投資を支える

 

EPS成長の重要性は、長期的な投資シナリオで特に明確になります。

 

例えば、EPSが年率7%成長し続ける企業で配当性向が50%なら、配当もほぼ同じペースで成長していきます。

 

20年後には配当額は約4倍になり、当初の投資元本に対する利回り(YOC)が大幅に上昇します。

 

実際にコカ・コーラ(KO)やジョンソン&ジョンソン(JNJ)はEPSの安定成長を背景に数十年にわたり増配を継続してきました。

 

こうした実績は「EPS成長こそが配当持続性の土台」という事実を裏付けています。

 


 

EPSを見る際の注意点

 

EPSは便利な指標ですが、単年の数字だけを鵜呑みにするのは危険です。

 

一時的な特別利益や損失によって大きくぶれることがあるため、GAAPベースのEPSと調整後EPSの違いも理解する必要があります。

 

さらに、5年・10年といった長期の推移を確認することが大切です。

 

単年のEPSが落ち込んでも、長期的に右肩上がりであれば問題はありません。大切なのは持続的な成長トレンドがあるかどうかです。

 


 

ETFにおけるEPSの重要性

 

個別株投資ではEPS成長を直接チェックすることが不可欠ですが、ETFに投資する場合は事情が少し異なります。

 

VYMやVIGのような配当ETFは数百銘柄に分散され、EPSが低迷して減配に至った企業は指数のルールに従って入れ替えられます。

 

そのため、投資家がすべての組入銘柄のEPSを追いかける必要はありません。

 

とはいえ、ETF全体としての分配金の成長は、結局のところ「組入企業全体のEPS成長力」によって支えられています。

 

例えばVIGはEPS成長が堅調な企業を中心に組み込むため、長期的に分配金も伸びやすい構造を持っています。

 

一方でVYMは高利回りが魅力ですが、成熟産業の比率が高くEPS成長は比較的穏やかで、分配金の成長ペースもVIGほど速くはありません。

 

ETFを選ぶ際に投資家が確認すべきなのは、個別企業のEPSではなく「ETFがどのようなタイプの企業を組み入れているか」という点です。

 

ファクトシートやセクター構成を見れば、成長型企業が多いのか、安定配当重視の成熟企業が中心なのかがわかり、分配金の成長性をおおよそ見極めることができます。

 

 


 

投資判断にどう活かすか

 

EPS成長を投資判断に取り入れる際は、次の点を意識すると良いでしょう。

 

  • 配当利回りに惑わされず、EPSが伸びているかを確認する
  • 配当性向が低めで、EPSが年5〜10%成長している企業は長期的に有望
  • DGR(増配率)がEPS成長率を大きく上回っていないかをチェックする(無理な増配は続かない)

     

こうした観点を持てば、目先の高配当に飛びつくのではなく、持続的に配当を伸ばせる企業に投資できるようになります。

 


 

まとめ

 

EPS成長は配当持続性を支える最重要の要素です。高利回り株に目が行きがちですが、利益が伸びなければその配当は長く続きません。

 

逆にEPSが安定して成長していれば、配当は自然と増えていき、長期投資の成果を確実に後押ししてくれます。

 

  • EPSの成長が配当の原資をつくる
  • 配当性向とセットで確認することで持続性を判断できる
  • ETFでも組入企業のEPS成長力を意識することが重要

 

長期的な視点を持ち、EPSと配当の関係を正しく理解することが、安定したインカム投資を実現する第一歩となります。

 

Tags: 配当株
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。