
セル・イン・メイの検証データとインデックス投資戦略|S&P500の過去実績から考える
By Staff | 2025-08-25
Category: インデックス投資
株式市場には数多くのアノマリー(経験則)が存在します。
その中でも有名なのが「セル・イン・メイ(Sell in May and go away)」です。
これは「5月に株を売って秋まで市場から離れれば、パフォーマンスが改善する」という投資格言で、特に米国株市場で長年語られてきました。
では実際にデータで見ると、このアノマリーはどこまで有効だったのでしょうか。
セル・イン・メイとは何か
この格言の起源はロンドン市場にあり、「Sell in May and go away, don’t come back until St. Leger Day(5月に売ってセントレジャー競馬が終わる9月まで戻るな)」という言葉が発祥とされています。
米国でも同じ考え方が広まり、5月から10月は株価が伸び悩み、11月から翌年4月が強気相場になりやすいとされてきました。
背景には以下の要因が指摘されます。
- 夏場は機関投資家の取引が減り、売買高が低下する
- 企業決算や経済指標の材料が少なく、市場が停滞しやすい
- 年末に向けた消費シーズンやボーナス資金流入が冬場の上昇を支える
S&P500での検証データ
実際のパフォーマンスをS&P500の長期データで見ると、「セル・イン・メイ」には一定の統計的根拠があることがわかります。
1970年〜2020年のS&P500平均リターン
- 11月〜翌年4月:年率換算で 約7〜8%
5月〜10月:年率換算で 約2〜3%
つまり平均的には冬の半年間が夏の半年間よりも明確に高いリターンを示しています。
特に1980年代〜1990年代にはこの傾向が顕著でした。
Nasdaq100・ダウ平均との比較
指数ごとに見ると傾向に違いがあります。
- Nasdaq100:テクノロジー株が多いため、冬場に強いリターンを示すことが多く、セル・イン・メイの影響が比較的明確に出やすい。
- ダウ平均:伝統的な産業株が中心で、セル・イン・メイ効果は薄め。ただし長期データではやはり冬場がやや優位。
- ラッセル2000:小型株は季節性の影響を受けやすく、セル・イン・メイ効果が観測されるケースがある。
過去の具体的な事例
セル・イン・メイは平均値としては確認できますが、毎年当てはまるわけではありません。
- 2013年:5月以降もS&P500は上昇を続け、通年で +30% のリターンを記録。セル・イン・メイは全く当てはまらなかった。
- 2015年:5月〜10月は横ばいで推移し、実際にセル・イン・メイの傾向が出た年。
- 2018年:5月から10月にかけてS&P500は一時調整がありましたが、10月末から年末にかけてはむしろ大きく下落し、翌2019年は +28% の上昇を達成。
2020年 コロナ相場:3月に急落した後、5月以降も力強い上昇が続き、S&P500は通年で +16%、Nasdaq100は +47% と大幅なリターンを実現。セル・イン・メイは完全に外れた例。
学術的研究と限界
複数の学術研究では「セル・イン・メイには統計的に有意な差がある」と結論づけています。
しかし、ここにはいくつかの制約があります。
- 取引コストや税金を考慮すると優位性は大きく低下する
- マーケットの効率性が高まり、アノマリー自体が弱まる可能性がある
夏場でも上昇した年は多く、結果的に投資機会を逃すリスクもある
インデックス投資家にとっての戦略的視点
インデックス投資の基本は「長期・分散・積立」です。
セル・イン・メイを根拠に売買を繰り返すと、むしろリターンを損なう可能性があります。
- 市場から離れることで配当や反発局面を逃すリスクがある
- 長期的にはS&P500は上昇トレンドを続けており、保有し続けることが最も確実な戦略
季節性アノマリーは話題として楽しむ程度に留めるのが適切
長期投資家への示唆
過去のデータは確かに「セル・イン・メイ」の傾向を示していますが、長期投資においては無理に従う必要はありません。
むしろ長期で市場に居続ける方が再現性の高い成果を生んできました。
結論としては、「セル・イン・メイ」は短期戦略としては興味深いが、インデックス投資においては参考程度にとどめ、淡々と積立を続けることが最善といえるでしょう。
まとめ
- 「セル・イン・メイ」は5月から10月の株価パフォーマンスが弱いとされるアノマリー
- S&P500の長期データでは確かに平均リターンに差が見られる
- ただし例外も多く、必ずしも機能するわけではない
- インデックス投資ではアノマリーに惑わされず、長期保有を続けることが重要
FAQ
Q1. セル・イン・メイは現在でも有効ですか?
A. 長期統計では一定の傾向が見られますが、近年は当てはまらない年も多く、有効性は弱まりつつあります。
Q2. どのインデックスで最も効果が出やすいですか?
A. Nasdaq100やラッセル2000など、成長株や小型株に偏る指数で季節性が出やすいとされます。
Q3. 日本市場でもセル・イン・メイは観測されますか?
A. 日経平均でも一部の研究で傾向が確認されていますが、米国株ほど明確ではありません。
Q4. インデックス投資家はどう対応すべきですか?
A. 短期的に売買するよりも、長期で市場に居続ける方が成果につながります。
Q5. 他に似たアノマリーはありますか?
A. 「1月効果」「サンタクロースラリー」などが代表例で、いずれも短期的な傾向として知られています。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。