
S&P500の配当込み vs 配当なしリターン比較|年代別データで見る複利の力
By Staff | 2025-08-22
Category: インデックス投資
株式投資において多くの人は株価の値上がりに注目しますが、長期投資では「配当込みリターン(トータルリターン)」が最も重要な指標です。
配当を受け取り、そのまま再投資を続けることで、複利効果が雪だるま式に効いていきます。
逆に株価だけの「配当なしリターン(価格リターン)」を基準にすると、実際の投資成果を過小評価してしまう可能性があります。
S&P500に連動するSPYを例に、過去の年代別リターンを比較すると、配当込みと配当なしの差は非常に大きくなっています。
配当込みと配当なしの違い
価格リターン:株価の変動だけを反映。インデックスがどれだけ値上がりしたかを示す
- 配当込みリターン:受け取った配当を再投資したと仮定して算出。複利効果を含んだ本来の投資成果を示す
長期投資の成否を測るなら、必ず配当込みリターンを確認するべきです。
SPYの年代別リターン比較
1980年代
- 価格リターン:約 +227%(年率約12%)
- 配当込みリターン:約 +403%(年率約14.7%)
→ 配当を再投資した場合、株価だけのリターンに比べて最終資産額は約1.8倍に増加。
1990年代
- 価格リターン:約 +315%(年率約14.9%)
- 配当込みリターン:約 +431%(年率約18%)
→ ドットコムバブル前の強気相場では株価だけでも大きく伸びたが、配当込みではさらに差が拡大。
2000年代(低迷期)
- 価格リターン:約 -24%(年率-2.7%)
- 配当込みリターン:約 +14%(年率+1.3%)
→ いわゆる「失われた10年」。価格リターンはマイナスだったが、配当込みではプラスを維持。
2010年代
- 価格リターン:約 +190%(年率約11.2%)
- 配当込みリターン:約 +257%(年率約13.6%)
→ 金融危機後の回復と低金利環境で大幅上昇。配当再投資を続けた投資家はさらに恩恵を受けた。
2020年代(2020–2023年)
- 価格リターン:約 +40%
- 配当込みリターン:約 +52%
→ コロナショック後の回復局面では株価上昇と配当込み効果の両方で利益が拡大。
長期累計リターンの差
1980年から2023年までの累計を比較すると以下のようになります。
- 価格リターン:約 +3,700%
- 配当込みリターン:約 +11,000%以上
同じインデックスでも、配当込みで見た場合には最終的な資産額は3倍以上の差が生じています。複利効果のインパクトを改めて確認できる事例です。
配当込みリターンが示す投資の本質
短期的には配当は小さく感じられるかもしれません。
しかし数十年単位で積み上げると、リターンの大半は配当再投資による複利効果から生まれます。
長期投資の成功には、株価だけでなく配当込みリターンを基準に考えることが不可欠です。
SPY以外の選択肢について
S&P500に連動するETFはSPYだけではありません。
- VOO(バンガード・S&P500 ETF):経費率が0.03%と非常に低コスト
- IVV(iシェアーズ・コアS&P500 ETF):こちらも低コストで運用規模が大きい
SPYは流動性の高さが強みですが、長期投資を重視する場合にはVOOやIVVのような低コストETFを選ぶのも有力な選択肢です。
いずれも配当込みで考えることが投資成果を正しく把握するポイントになります。
まとめ
- 配当込みリターンと価格リターンの差は、長期投資で3倍以上の開きとなる
- 1980年代から2023年までのSPYは、配当込みで+11,000%を超える成長を実現
- 短期的には小さく見える配当も、長期では巨大な差を生み出す
- S&P500投資ではSPYのほか、VOOやIVVといった低コストETFも選択肢に入る
- 配当込みでリターンを捉えることが、長期資産形成の第一歩
FAQ:配当込み vs 配当なしリターンに関するよくある質問
Q1. なぜ配当込みリターンを重視する必要があるのですか?
A. 株式投資の長期的なリターンの多くは配当再投資による複利効果から生まれます。株価だけのリターンでは「どれだけ実際に資産が増えたか」を正しく反映できません。SPYの過去40年でも、価格リターンと配当込みリターンには3倍以上の差が出ています。
Q2. 配当を現金で受け取るのと再投資するのでは、どのくらい違いますか?
A. 短期的には差が小さいように見えても、10年・20年と積み重なると大きな差になります。再投資することで配当が次の配当を生み出す「複利の連鎖」が働きます。長期投資では配当を再投資する方が資産形成に有利です。
Q3. SPYとVOOではどちらを選ぶべきですか?
A. SPYは歴史が長く流動性が非常に高いため、短期売買や機関投資家に好まれます。一方でVOOは経費率が0.03%と安いため、長期積立にはより有利です。どちらもS&P500に連動するためパフォーマンス自体に大きな差はなく、投資スタイルに応じて選ぶのが良いでしょう。
Q4. 配当再投資は自動でできますか?
A. 米国ETFの場合、証券会社によっては自動再投資(DRIP)が利用できるところもあります。ただし日本の証券会社では現金受け取りが基本で、自動再投資は利用できないケースも多いです。その場合は自分で再投資を行う必要があります。
Q5. 配当込みリターンを見るときに注意する点はありますか?
A. 配当込みリターンは「税金や手数料を考慮しない理論値」である点に注意が必要です。実際には配当に課税されるため、投資家の手元に残るリターンは若干低くなります。それでも長期的な比較では配当込みを基準にした方が実態に近い成果を把握できます。
Q6. 配当込みリターンの差は他の指数やETFでも同じように大きいのですか?
A. はい。米国株全体や高配当株ETFなど、配当を継続的に出す資産では特に大きな差が生じます。逆に無配や低配当のグロース株中心の指数では差は小さくなります。投資対象ごとに「配当の有無」が長期成果にどう影響するかを見極めることが大切です。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。