
年齢別の資産取り崩しポートフォリオ設計|30代・40代・50代FIREと60代リタイアをシミュレーション解説
By Staff | 2025-10-01
Category: インデックス投資
FIRE(Financial Independence, Retire Early)を達成した後、どのように資産を取り崩していくかは「リタイア後の寿命」を大きく左右します。
特に、何歳でFIREするか によって、資産の運用期間やリスクへの向き合い方は大きく変わります。
本記事では、30代・40代・50代でのFIRE、そして60代の通常リタイアを比較し、それぞれに合った資産配分と取り崩し戦略をシミュレーションを用いて解説します。
シミュレーション計算方法の前提
- 初期資産:1億円
ポートフォリオ構成
- 30代FIRE:株式80%、債券15%、キャッシュ5%
- 40代FIRE:株式70%、債券20%、キャッシュ10%
- 50代FIRE:株式65%、債券25%、キャッシュ10%
- 60代リタイア:株式60%、債券25%、キャッシュ15%
想定リターン(名目ベース)
- 株式:6%
- 債券:2.5%
- キャッシュ:0%
- インフレ率:2%
取り崩し方法
- 生活費は毎年インフレに合わせて増加
- 65歳から公的年金を受給開始 → 取り崩し額を減額
計算は「年初に取り崩し → 残高を運用 → 年末に記録」という手順で行っています。
30代FIRE:超長期の資産寿命を守る戦略
- 想定取り崩し期間:45〜50年
- 初年度取り崩し:350万円(3.5%)
- 65歳以降は年金受給により取り崩しが半減
シミュレーション結果(主な年次)
- 10年目(44歳):約1億1500万円(名目)、実質約9400万円
- 30年目(64歳):約1億3700万円(名目)、実質約7600万円
- 40年目(74歳):約1億9900万円(名目)、実質約9000万円(年金受給で取り崩し減少)
- 50年目(84歳):約2億9400万円(名目)、実質約1億900万円
30代でFIREすると「最初は取り崩しが重く見える」ものの、65歳以降に取り崩しが大幅に減ることで資産はむしろ増加に転じやすい。
40代FIRE:安定性と成長性のバランス
- 想定取り崩し期間:30〜40年
- 初年度取り崩し:400万円(4%)
シミュレーション結果(主な年次)
- 10年目(54歳):約1億円(名目)、実質約8300万円
- 20年目(64歳):約9200万円(名目)、実質約6200万円
- 30年目(74歳):約1億1500万円(名目)、実質約6300万円(年金により取り崩し減少)
- 40年目(84歳):約1億4500万円(名目)、実質約6500万円
40代FIREでは「取り崩し率4%」はギリギリの水準。
年金が補填してくれるとはいえ、株式比率が低いと資産は大きく目減りしやすい。
50代FIRE:守りを重視しつつ30年持たせる
- 想定取り崩し期間:25〜30年
- 初年度取り崩し:450万円(4.5%)
シミュレーション結果(主な年次)
- 10年目(64歳):約9300万円(名目)、実質約7600万円
- 15年目(69歳):約1億80万円(名目)、実質約7500万円(年金受給で取り崩し減少)
- 25年目(79歳):約1億1800万円(名目)、実質約7200万円
50代でのFIREは「取り崩し率4.5%」でも、65歳からの年金収入によって十分に持続可能性が高まる。
60代リタイア:資産寿命より生活安定を優先
- 想定取り崩し期間:20〜25年
- 初年度取り崩し:450万円(4.5%)
- 65歳から年金受給 → 取り崩しが大幅に軽くなる
年金シナリオ比較(生活費500万円/年)
年金高め(年間300万円受給)
- 65歳以降の取り崩し:200万円
- 資産寿命は十分余裕があり、残高は増加傾向。
シミュレーション結果(高めシナリオ)
- 65歳:資産約9600万円、取り崩し200万円
- 70歳:資産約1億1500万円、取り崩し約220万円
- 85歳:資産約1億2700万円、取り崩し約360万円
年金低め(年間150万円受給)
- 65歳以降の取り崩し:350万円
- 資産は横ばい〜やや減少傾向、投資リターン次第で不安も残る。
シミュレーション結果(低めシナリオ)
- 65歳:資産約9100万円、取り崩し350万円
- 70歳:資産約1億円、取り崩し約380万円
- 85歳:資産約1億500万円、取り崩し約470万円
60代では「資産の成長」よりも「生活の安定確保」が主目的。
年金が厚ければ資産を大きく減らさずに済む一方、年金が薄い場合は投資資産への依存度が高くなり、インフレや市場変動に左右されやすい。
よくある質問(FAQ)
Q1: 30代でFIREした場合、本当に50年も資産を維持できますか?
→ 過去のデータ上、株式比率を高めて3〜3.5%程度の取り崩しであれば維持できたケースが多いです。ただし初期の暴落に備えて現金や債券を一定割合持つことが望ましいと考えられます。
Q2: 40代FIREと50代FIREの違いは何ですか?
→ 40代は取り崩し期間が長いため株式比率を高めにする傾向があり、50代は安定性を重視して債券や現金を増やすケースが目立ちます。どちらも一律ではなく、生活費やリスク許容度によって変わります。
Q3: 60代のリタイアはFIREとどう違うのですか?
→ FIREは「早期リタイア」を意味し、通常は30〜50代が対象です。60代のリタイアは一般的な定年退職に近いですが、資産取り崩し戦略という点ではFIREと共通点が多いといえます。
Q4: インフレが進んだ場合、どの戦略が有効ですか?
→ 株式を一定割合持ち続けることが、インフレ下でも資産を守りやすいと考えられます。ただし生活費の安定を重視する場合は、現金や債券を厚めに保有するケースもあります。
Q5: 為替リスクにはどう対応すればよいですか?
→ ドル建て資産をそのまま使う人もいれば、一部を円に換える人もいます。為替ヘッジ付き商品を使う方法もありますが、コストや運用方針との兼ね合いで選択は異なります。
Q6: 定率と定額、どちらを選ぶべきでしょうか?
→ 若い世代のFIREでは資産寿命を優先して定率を選ぶケースが多く、50代・60代では生活費の安定を重視して定額やハイブリッド戦略を使う例が見られます。
まとめ
- 30代FIRE → 超長期の順序リスクに注意。年金開始後は資産が増加に転じやすい。
- 40代FIRE → 株式比率と取り崩し率のバランスがカギ。
- 50代FIRE → 安定性を確保しつつ、年金で資産寿命を大きく伸ばせる。
- 60代リタイア → FIREではないが、年金の厚さ次第で資産寿命は大きく変わる。
最終的には、「自分の年齢・生活費・年金額」に合わせて柔軟に設計することが最重要です。
FIRE後の資産取り崩しをトータルで理解したい方は、「FIRE後の取り崩し方法|インデックス投資で築いた資産を長持ちさせる戦略」 にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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投資忍者 プロフィール
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。