← トップ

AMD、2025年第2四半期決算で売上32%増 AI・データセンター戦略加速も輸出規制が重荷

By Staff | 2025-08-12

Category: マーケット情報

米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(NASDAQ: AMD)は2025年8月、2025年第2四半期(4〜6月期)の決算を発表しました。

 

売上は前年同期比で大幅増加したものの、米国政府による輸出規制が収益構造に影響を与え、粗利益率は低下しました。

 

AI戦略や大型買収など成長に向けた布石を打つ一方、複数のリスク要因も浮き彫りになっています。

 


 

1. 四半期業績概要

 

AMDの第2四半期売上高は76億8,500万ドルで、前年同期の58億3,500万ドルから32%増加しました。

 

この成長は主に以下の要因によるものです。

 

  • クライアント&ゲーミング部門の急成長


    新世代「Zen 5」アーキテクチャを採用したRyzen™プロセッサの好調な販売と、ゲームコンソール向け半カスタム製品の出荷増が業績を押し上げました。

     

  • データセンター部門の堅調な伸び


    AMD EPYC™サーバー向けCPUの需要が引き続き強く、売上は二桁増加を記録しました。

 

しかし、米国政府が施行したAMD Instinct™ MI308 データセンターGPU製品の輸出規制によって約8億ドルの在庫評価損・関連費用が発生。これが粗利益率低下の主因となりました。

 


 

2. 主要財務指標(前年同期比)

 

  • 売上高:76.85億ドル(+32%)
  • 粗利益:30.59億ドル(28.64億ドルから増加)
  • 粗利益率:40%(前年49%)
  • 営業利益:▲1.34億ドル(前年は+2.69億ドル)
  • 純利益:8.72億ドル(前年2.65億ドル)
    ※8.53億ドルの税務関連利益を計上
  • EPS(希薄化後):0.54ドル(前年0.16ドル)
  • 現金・短期投資残高:59億ドル(前年末比+8億ドル)
  • 営業キャッシュフロー(上期):30億ドル(前年同期11.14億ドル)

 


 

3. 部門別業績分析

 

(1) データセンター部門

 

  • 売上:32.40億ドル(+14%)
  • 主因:EPYC CPU販売増
  • 営業損益:▲1.55億ドル(前年+7.43億ドル)
  • 背景:GPU輸出規制による在庫損失、R&D投資増加が重荷

 

(2) クライアント&ゲーミング部門

 

  • 売上:36.21億ドル(+69%)
  • クライアントPC売上:24.99億ドル(+67%)
    → 平均販売価格42%上昇、出荷台数17%増
  • ゲーミング売上:11.22億ドル(+73%)
    → 半カスタム製品(ゲーム機)とゲーミングGPU需要増
  • 営業利益:7.67億ドル(前年1.66億ドル)

 

(3) 組み込み部門

 

  • 売上:8.24億ドル(▲4%)
  • 営業利益:2.75億ドル(前年3.45億ドル)
  • 背景:需要低迷と製品構成の変化による利益率低下

 


 

4. 戦略・企業動向

 

(1) ZT Systemsの買収

 

2025年3月31日に総額44億ドルで買収を完了。

ハイパースケール向けAI・汎用コンピューティング基盤の強化が狙い。

今後はクラウド最適化されたAIインフラの提供を加速。

 

(2) 製造部門の売却

 

ZT Systemsの製造部門をサンミナ社に30億ドルで売却予定(2025年末完了見込み)。

製造負担を軽減し、高付加価値領域への集中を図る。

 

(3) AI戦略の加速

 

  • Ryzen AI搭載PC
  • Instinct MI300シリーズAIアクセラレーター
    生成AI需要の高まりを背景に製品ポートフォリオを強化。ただし市場成長の速度は不透明。

 


 

5. リスク要因

 

AMDは成長機会と同時に以下のリスクにも直面しています。

 

  1. 競争激化:NvidiaやIntelに加え、Armアーキテクチャや顧客の自社開発AIソリューションが脅威。
  2. 輸出規制リスク:GPU輸出規制は収益構造に直接的影響を与え、競争力低下の可能性。
  3. 市場変動性:半導体業界は景気・需要サイクルの影響を強く受ける。
  4. 供給網依存:TSMCなど外部ファウンドリ依存による供給リスク。
  5. サイバー脅威:AIを悪用した攻撃の高度化への懸念。

     


 

6. 今後の見通し

 

AMDは、手元資金・営業キャッシュフロー・信用枠を活用し、研究開発や戦略的買収を継続する方針です。


生成AI市場の拡大は大きな追い風となる一方、輸出規制や競争環境の変化が収益成長の制約となる可能性があります。


2025年後半は、MI300シリーズやRyzen AI搭載PCの普及スピードが業績の鍵を握るでしょう。

 

Tags: 個別株 AMD
マーケット概況
Profile Image
投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。