
企業価値(EV)とEV/EBITDA(エンタープライズ・マルチプル)とは?意味・計算式・活用法を初心者向けに解説
By Staff | 2025-08-14
Category: 投資の基礎知識
株価だけでは、その企業の全体的な価値を正確に測ることはできません。
投資家にとって重要なのは、株主が保有する株式価値だけでなく、企業が抱える負債や保有する現金なども考慮した「企業全体の価値」を把握することです。
そこで登場するのがEV(Enterprise Value:企業価値)です。
さらに、このEVを企業の稼ぐ力と比較して評価する指標がEV/EBITDAです。
英語では**Enterprise Multiple(エンタープライズ・マルチプル)**とも呼ばれ、海外の投資資料や米国株分析ではこちらの名称が使われることも多くあります。
これらは日本株、米国株を問わず世界中で使われる重要な分析ツールであり、M&A(企業買収)や同業種比較の場面で特に威力を発揮します。
2. 企業価値(EV)とは
EVは、株主と債権者の両方にとっての「企業全体の価値」を意味します。
単なる時価総額ではなく、有利子負債や保有現金も考慮して計算されるため、より包括的な評価が可能です。
計算式は以下のとおりです:
EV=時価総額+有利子負債−現金及び現金同等物EV = 時価総額 + 有利子負債 - 現金及び現金同等物
たとえば、株価が上昇すれば時価総額が増え、EVも上昇します。
同様に負債が増えればEVは大きくなり、現金が多ければEVは小さくなります。
このようにEVは、株価だけでは見えない企業の財務構造を反映する点が特徴です。
3. EBITDAとは
EV/EBITDAの「EBITDA」は、企業の稼ぐ力を表す利益指標のひとつです。
- 英語表記:Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization
- 日本語同等表現:「利払前・税引前・減価償却前利益」
これは営業利益(EBIT)に減価償却費(Depreciation)や無形資産の償却費(Amortization)を足し戻したもので、本業から得られる現金収入のイメージに近い数字になります。
減価償却費は実際の現金支出を伴わないため、EBITDAを使うことで企業のキャッシュ創出力をより正確に捉えられるのです。
4. EV/EBITDAとは(Enterprise Multiple:エンタープライズ・マルチプル)
EV/EBITDAは、企業価値(EV)をEBITDAで割った倍率で、英語ではEnterprise Multipleとも呼ばれます。
「企業全体の価値を、年間の稼ぐ力で何倍評価しているか」という意味で、この別名が使われています。
EV/EBITDA = EV ÷ EBITDA
この数値が低いほど、収益力に対して企業価値が割安であると見なされる傾向があります。
一方で高い場合は、市場がその企業の将来の成長性を高く評価している可能性があります。
似た指標であるPERは株主価値と利益を比較しますが、EV/EBITDAは企業全体の価値とキャッシュ創出力を比較するため、負債の多い企業や資本構造が異なる企業同士の比較にも適しています。
5. EV/EBITDAの一般的な目安
業種や市場環境によって基準は変わりますが、世界的には6〜8倍程度がひとつの目安とされます。
- 高い場合:成長期待が高く、将来の利益拡大が織り込まれている。
- 低い場合:割安とされるか、成長性や収益性に不安がある。
ただし、単純に数値が低いから割安、高いから割高というわけではなく、その背景を理解することが大切です。
6. 米国株における活用事例
EV/EBITDAは特に同業種内での比較に役立ちます。
たとえば、テクノロジー企業同士、製造業同士を比較すれば、収益力に対して企業価値が相対的に高いのか低いのかが見えてきます。
また、M&Aの場面でも、買収価格が妥当かどうかを判断する基準として活用されます。
さらに、PERでは割高に見える企業でも、EV/EBITDA(エンタープライズ・マルチプル)で見ると割安に評価できるケースもあるため、補完的な指標としても重要です。
7. 注意点・限界
もちろんEV/EBITDAにも弱点があります。
たとえば、設備投資が大きく減価償却費が膨らむ業種では、EBITDAが実態を正しく反映しない可能性があります。
また、金融業のようにビジネスモデルが特殊な業種には適さないケースもあります。
そのため、EV/EBITDAを使う際は、他の指標や業種特性、将来予測と組み合わせることが不可欠です。
8. まとめ
EVは株主と債権者の双方から見た企業全体の価値を表し、EV/EBITDA(Enterprise Multiple:エンタープライズ・マルチプル)はその企業価値を稼ぐ力で割った割安性の指標です。
同業種比較やM&A評価では非常に有効ですが、単独ではなくPER、PBR、ROEなどの財務指標と併せて使うことで、より正確な企業分析が可能になります。
投資判断を行う際には、数字の背景にある企業の事業モデルや市場環境までしっかり理解しながら、この指標を活用していきましょう。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。