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リタイアメントに向けた高配当ETF活用法|安心収入と資産寿命の両立戦略

By Staff | 2025-09-12

Category: 配当成長投資

老後資金の準備において重要なのは、資産を守りながら安定した収入源を確保することです。

 

公的年金だけに依存するのは不安が残るため、投資によるインカム収入を補完的に取り入れる人が増えています。

 

その中で注目されるのが米国の高配当ETFです。

 

定期的な配当を得られる仕組みはリタイアメントとの相性が良い一方で、選び方を誤ると資産寿命を縮めてしまうリスクもあります。

 

本記事では、高配当ETFの特徴と、リタイア期における現実的な活用法を解説します。

 


 

高配当ETFがリタイアメントに適している理由

 

高配当ETFは、分配金を通じて定期的な収入を得られるのが最大の魅力です。

 

株式市場が停滞している局面でも一定のキャッシュフローを確保でき、心理的な安心感につながります。

 

また、インフレ局面では配当が増加することで購買力維持に役立つ可能性もあります。

 

日本国内の低金利環境を踏まえると、ドル建て配当収入は有力な選択肢になり得ます。

 


 

代表的な高配当ETFの特徴

 

  • VYM:広範な分散と低コストが強み。過去10年のトータルリターンも堅調。
  • HDV:財務健全性を重視。エネルギーやヘルスケアに比重が高いディフェンシブETF。
  • DVY:公益や金融を中心に構成され、比較的安定した配当を志向。
  • SPYD:高利回りだがセクター偏重によるリスクも大きい。
  • QYLD:毎月高配当が魅力だが、株価成長はほぼなく長期的な資産形成には不向き。
  • JEPI:分配利回り6〜7%と高めだが、オプション戦略を伴い株価成長は限定的。リタイア後の配当消費前提では元本減少リスクが高い。

 


 

リタイアメント資産設計における配分の考え方

 

退職後の資産設計では「収入の安定性」と「資産寿命の維持」を両立させることが重要です。

 

 

  • 高配当ETFは安定的なインカム収入を提供するが、全額を依存するのはリスクが高い。
  • コアにはVYMやHDVのような低コスト・分散型ETFを据える。
  • 債券ETFや現金も組み合わせ、下落局面への備えを持つ。
  • QYLDやJEPIのようなカバードコールETFは、リタイア後の「配当消費」前提では資産が目減りしやすいため中核にも補助的にも不向き。

 


 

配当再投資と取り崩しの使い分け

 

  • リタイア前:配当を再投資して資産を拡大。複利の力を最大化する。
  • リタイア後:配当を生活費に充当し、取り崩しを抑える。
  • 一部は再投資を続ける選択肢もあり、資産寿命を延ばす工夫が可能。

 


 

ケーススタディ:生活費を配当でどこまでカバーできるか

 

例1:5000万円をVYMやHDVに投資

 

  • 平均利回り3〜4%。年間配当は税引前150〜200万円程度。
  • 生活費の一部を配当で賄い、残りは年金や資産取り崩しで補う現実的なモデル。

 

例2:1億円を複数ETFに分散投資(VYM 50%、HDV 30%、債券ETF 20%)

 

  • 加重平均利回りは約3.5〜4%。年間配当は税引前で350〜400万円程度。
  • 株式部分は安定性と成長性を両立し、債券ETFが下落耐性を高める。
  • JEPIやQYLDのようなカバードコールETFを排除することで、資産の減少リスクを抑えた長期的に持続可能なポートフォリオ。

 

例3:株式と債券を半々に分散

 

  • 株式はVYMやHDV、債券はBNDなどを想定。利回りは2〜3%。
  • 5000万円投資なら年間100〜150万円程度の配当。
  • インカムは少なめだが値動きは安定し、資産寿命を意識する人には有効。

 


 

カバードコールETFの注意点

 

QYLDやJEPIは「毎月の高配当」で人気ですが、その分配金の多くはオプション収入に依存しており、株価成長を犠牲にしています。

 

  • 再投資すればトータルリターンは一定水準を維持できるが、リタイア後に配当を使う運用では資産が減少しやすい。
  • QYLDは2013年設定以来、NASDAQ100が大きく上昇したにもかかわらず株価は横ばい。
  • JEPIも2020年の設定以降、配当込みで年率9%程度を記録したが、株価成長は市場平均に及ばない。

 

したがって、リタイア後の配当消費を前提とするなら、カバードコールETFは基本的に不向きです。

 

インカムの「補完的な役割」にすら適さず、資産寿命を短くする可能性が高いため注意が必要です。

 


 

税制と為替の考慮

 

  • 米国ETFの配当には米国課税10%がかかり、日本国内でも課税される(二重課税)。
  • 外国税額控除を利用すれば一部を取り戻せる場合がある。
  • NISAを使えば国内課税を免除可能。
  • 為替変動によって円建て収入が増減するため、ドル資産と円資産のバランスを考慮することも欠かせない。

 


 

まとめ

 

リタイアメントにおける高配当ETFの活用は、安定収入の確保に役立ちます。

 

しかし、利回りの高さに惹かれてリスクの高いETFに偏重するのは危険です。

 

特にQYLDやJEPIのようなカバードコールETFは、配当消費を前提としたリタイア生活には適さず、資産寿命を縮める要因となりかねません。

 

現実的には、VYMやHDVなど低コスト・分散型ETFを中核に据え、債券や現金を適度に組み合わせることが安心した生活を支える戦略です。

 

安定収入と資産寿命の維持、この両輪を意識することが、安心したリタイアメントの投資戦略につながります。

 

 

 

Tags: ETF インデックス投資 配当株
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。