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IBM、2025年第2四半期決算で売上7.7%増 z17好調とHashiCorp買収が成長牽引

By Staff | 2025-08-12

Category: マーケット情報

米IBM(International Business Machines Corporation、NYSE: IBM)は2025年7月、6月末までの第2四半期決算を発表しました。


ハイブリッドクラウドとAI戦略の進展、戦略的買収(HashiCorpなど)、そして新型メインフレーム「IBM Z(z17)」の好調な立ち上げが業績を押し上げました。

 

ソフトウェアとインフラ事業は2桁成長を達成しましたが、コンサルティング部門は通貨調整後で横ばいと、顧客の裁量的IT支出には慎重さが見られます。

 


 

1. 四半期・上期業績概要

 

  • 売上高(Q2):169.77億ドル(前年比+7.7%、通貨調整後+5.3%)
  • 売上高(上期):315.19億ドル(前年比+4.3%、通貨調整後+3.9%)
  • 純利益(Q2):21.94億ドル(+19.6%)
  • 営業利益(Non-GAAP、Q2):26.52億ドル(+16.6%)
  • 希薄化後EPS(Q2):2.31ドル(+17.9%)、Non-GAAP EPS:2.80ドル(+15.2%)
  • 粗利益率(Q2):58.8%(+2.0pt)、Non-GAAP粗利益率:60.1%(+2.3pt)

     

粗利益率の改善は、製品ポートフォリオ構成の変化(高収益のソフトウェア比率上昇)と生産性向上施策が寄与しました。

 


 

2. セグメント別業績

 

(1) ソフトウェア部門

 

  • 売上(Q2):73.87億ドル(+9.6%、通貨調整後+7.6%)
  • 牽引要因:
    • ハイブリッドクラウド(Red Hat)
    • オートメーション(HashiCorp買収効果)
    • データ関連AIソリューション
  • 年間経常収益(ARR):227億ドル(+12.2%、通貨調整後+10.4%)

     

(2) コンサルティング部門

 

  • 売上(Q2):53.14億ドル(+2.6%、通貨調整後横ばい)
  • 顧客はコスト効率重視の投資にシフト。
  • インテリジェントオペレーションは成長した一方、戦略・テクノロジー分野は減少。
  • 新規契約(Signings)は15.6%減(通貨調整後▲18.2%)。

     

(3) インフラ部門

 

  • 売上(Q2):41.42億ドル(+13.6%、通貨調整後+11.5%)
  • IBM Z(z17)立ち上げ効果でメインフレーム売上は+70.2%(通貨調整後+67.1%)。
  • 分散型インフラは減少。

     

(4) ファイナンシング部門

 

  • 売上は減少(▲1.7%)も、IBM Z製品サイクルの影響で営業利益は大幅増(+134.2%)。

     


 

3. 費用構造と投資動向

 

  • 研究開発費(R&D):Q2で+13.9%、上期で+11.3%
    → AI、ハイブリッドクラウド、量子コンピューティングへの投資拡大
  • 販管費(SG&A):Q2は+1.8%増、上期は横ばい
  • 買収関連費用:HashiCorpなどの買収で費用増加
  • 知的財産関連収入:Q2で▲11.0%減も、上期では日本企業連合との半導体開発契約で増加

 


 

4. バランスシートとキャッシュフロー

 

  • 総資産:1,485.85億ドル(前年比+8.3%)
  • 総負債:1,209.98億ドル(+10.2%)
  • 現金・有価証券:155.30億ドル(+7.26億ドル)
  • 総負債額:641.65億ドル(+91.92億ドル)— 2025年Q1の社債発行で流動性確保
  • フリーキャッシュフロー(上期):48.08億ドル(+2.85億ドル)
  • 配当金支払総額(上期):31.12億ドル(1株当たり四半期配当1.68ドル)

     


 

5. 戦略的テーマ

 

(1) ハイブリッドクラウドとAI

 

  • IBM watsonx:AIアプリ開発、データ管理、AIモデルのライフサイクル統合管理
  • IBM Z17:AI推論を組み込んだマルチモデルAI機能、金融・政府向けに強み
  • Power11:ミッションクリティカルなデータ集約型ワークロード向けに性能・拡張性強化

     

(2) 内部変革

 

  • サプライチェーン最適化とAI活用による業務効率化
  • 分散型インフラ製造を戦略パートナーに移管し、効率化を推進

     

(3) 買収戦略

 

  • 上期に6件の買収を実施、最大はHashiCorp(自動化分野強化)
  • シナジー効果はオートメーション収益の成長として既に反映

     


 

6. リスクと法務課題

 

  • IRS監査:2013〜2016年の米法人税申告について54億ドルの課税所得増を指摘、係争姿勢
  • 環境対応:世界各地で環境浄化・訴訟対応中
  • 年金訴訟:年金給付計算誤り訴訟が二審で差戻し
  • 税制改正:2025年7月施行のH.R.1法(NCTI制度)に伴いQ3で一時的非現金費用を計上予定

     


 

7. 今後の見通し

 

IBMは、ハイブリッドクラウド+AI戦略を中核に、ミッションクリティカル領域での差別化を強化する方針です。


短期的にはz17の販売加速とHashiCorp統合効果が業績を下支え、中長期的にはAI・量子コンピューティングの商用化が成長ドライバーとなる見込みです。


一方で、IRSとの係争や為替影響、顧客のIT投資抑制は不確定要因として残ります。

 

 

 

Tags: 個別株 IBM
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投資忍者 プロフィール

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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。