
インデックス投資における「待つ力」の重要性と長期リターンの実例
By Staff | 2025-09-07
Category: インデックス投資
投資を始めると、多くの人は「どの銘柄を買うか」「いつ買うか」に意識を向けがちです。
しかし、インデックス投資で本当に成果を分けるのは、売買のタイミングよりも「待つ力」です。
相場が下落したときに慌てて売ってしまう人と、じっと保有を続けた人とでは、10年後・20年後に大きな差が生まれます。
株価は短期的に大きく揺れ動きますが、歴史的に見れば長期で上昇してきたことが何度も証明されています。
この記事では、過去の実例やシミュレーションを通じて「待つ力」がなぜ投資成功の鍵となるのかを考え、待つ力を身につけるための習慣についても解説します。
なぜ「待つ力」が求められるのか
インデックス投資は市場平均に連動するシンプルな手法ですが、複利効果を活かすには「持ち続けること」が絶対条件です。
売買のタイミングを狙っても、うまく市場を出入りできる人はごくわずか。
むしろ頻繁に動くほどリターンは下がりやすいことがデータで示されています。待つことができるかどうかが、成果の差につながります。
市場の歴史が示す「待つ価値」
株式市場は必ず上下動を繰り返します。
2008年リーマンショックでは、S&P500が1年間で約−38%下落しました。
- 2020年のコロナショックでは、わずか1か月で約−34%の急落を記録しました。
しかし、その後を振り返ると様子はまったく異なります。
リーマンショック後の10年間でS&P500は+300%以上回復し、コロナショック後は1年間で+70%も反発しました。
下落の中で売却してしまえば、この回復の利益を取り逃すことになりますが、持ち続けた人は大きな成長を享受できたのです。
「待てた投資家」と「待てなかった投資家」の違い
短期の不安に耐えられず売却した投資家は、回復局面の果実を得られませんでした。
一方、積立や保有を継続した人は、時間を味方につけて資産を増やしています。
投資の成否を決めるのは「市場にいる時間」であり、「市場のタイミング」ではないのです。
実際のシミュレーション
待つことの意味を数字で確認してみましょう。
前提:初期投資100万円、毎月3万円積立、S&P500の年平均リターン7%
- 10年後:元本460万円 → 約660万円(+200万円、リターン+43%)
- 20年後:元本820万円 → 約1,660万円(+840万円、リターン+102%)
- 30年後:元本1,180万円 → 約3,470万円(+2,290万円、リターン+194%)
この成長は、ただ「続けて待った」結果にすぎません。
途中でやめてしまえば、複利の効果を最大限に享受できないことが分かります。
待つことを妨げる心理的要因
分かっていても「待つこと」が難しいのは、人間の心理が影響しているからです。
- 損失を避けたい心理(損失回避バイアス)
- SNSやニュースの悲観的な情報に煽られる不安
- 他人の成功談を見て焦るFOMO(取り残される恐怖)
こうした心理を理解しておくこと自体が、冷静さを取り戻す助けになります。
「待つ力」を鍛えるための習慣
待つ力は自然に身につくものではありません。
日常的な習慣として意識することが大切です。
- 投資ルールを紙に書き出し、「売らない」「積立を続ける」と明文化する
- 株価を毎日チェックせず、月単位や年単位で確認する習慣をつける
- 暴落時には過去のデータを見返し、「市場は回復してきた」という事実を思い出す
- 同じ長期投資を続ける仲間やコミュニティで経験を共有し、安心感を得る
新NISAと「待つ力」
新NISA制度は、長期・積立・分散を推奨する設計です。
非課税枠を最大限活かすには、途中でやめずに「待つ」ことが前提になります。
逆に短期で売却してしまえば、制度の恩恵も十分に受けられません。
まとめ
インデックス投資で成果を上げるために欠かせないのは「待つ力」です。
短期的な値動きに動揺せず、複利の力を信じて保有を続けることで、長期的に大きな資産形成につながります。
リーマンショックやコロナショックのような大きな下落もありましたが、いずれもその後の回復で市場は過去最高値を更新してきました。
つまり、途中で投げ出さず「待てた人」こそが成果を得られたのです。
制度面でも心理面でも、「待つ」ことは投資家にとって最大の武器と言えます。
そして、この姿勢は「低コスト・長期・シンプル」を掲げる投資哲学とも深くつながっています。
より広い文脈で投資を成功に導く考え方を知りたい方は、ジョン・ボーグルの投資哲学|低コスト・長期・シンプルが導く資産形成の道 をぜひご覧ください。
FAQ
Q1. 下落相場で本当に何もしないでいいの?
慌てて行動する必要はありません。歴史的に株式市場は何度も急落を経験しましたが、そのたびに回復してきました。リーマンショックやコロナショックのように一時的に30%以上下落しても、その後の数年で大きく戻っています。むしろ、焦って売却してしまうと回復の利益を逃すことになります。インデックス投資は「何もしない勇気」が成果を生む投資法なのです。
Q2. 長期保有とリバランスはどう両立させればいい?
待つこととリバランスは矛盾しません。リバランスはあくまで資産配分を整えるための行為であり、保有そのものをやめることではないからです。年に1回や2年に1回程度、株式と債券の比率を見直すだけで十分です。大切なのは、短期的な値動きに反応して慌てて動かないこと。リバランスは「待ちながら整える」行動と考えると良いでしょう。
Q3. 待つことを邪魔するSNSやニュースの情報とはどう向き合う?
SNSやニュースはリアルタイムの情報を得る手段として便利ですが、投資家心理を揺さぶる要因にもなります。「暴落はまだ始まりにすぎない」「株価は二度と戻らない」といった断定的な投稿は、不安を増幅させがちです。こうした情報を見てもすぐに行動に移さず、一歩引いて「自分の投資ルールに反していないか」を確認しましょう。ニュースは事実確認に留め、行動の判断材料は自分の長期計画に置くことが大切です。
Q4. 途中で積立をやめてしまったらどうなる?
積立を中断すると複利効果が大きく損なわれます。例えば毎月3万円を20年間続ければ約1,660万円に成長するシミュレーションも、途中で10年で止めてしまうと約660万円で終わってしまいます。元本が小さい段階でやめると、その後の成長分を取り逃すことになるのです。無理のない金額で継続し、生活に支障をきたさない範囲で積立を続けることが、最終的な成果につながります。
Q5. 新NISAで長期投資をする場合、どのくらい待つべき?
新NISAの制度は長期積立を前提に設計されています。非課税の恩恵を最大限活かすには、少なくとも10年以上、できれば20〜30年の視点を持つことが理想です。例えば30年間、毎月の積立を継続すれば、税金を気にせずに複利効果を享受できます。短期で売却してしまうと、せっかくの非課税枠を十分に活かせないため、できるだけ長い時間市場に居続ける意識を持つと良いでしょう。
Q6. 下落相場で積立額を増やすのは有効?
余裕資金があるなら有効です。株価が下がっているときに積立額を増やせば、安く多くの口数を購入できるため、将来のリターンが高まります。ただし、無理をして生活費に影響を与えると継続が難しくなるため、あくまで「余裕資金の範囲」で行うのが前提です。下落をチャンスに変えるためにも、事前に資金計画を立てておくと安心です。
Q7. 投資を長く続けるモチベーションを維持するには?
投資は「退屈」に思えるほど淡々と続けることが理想ですが、継続するためにはモチベーションも必要です。毎年の積立額や運用成果を簡単に記録したり、目標資産額と進捗を可視化すると「ここまで積み上がった」という達成感を得られます。また、同じように長期投資を実践する仲間やコミュニティと情報交換をするのも有効です。他人と比較するのではなく「一緒に続けている」という感覚が継続力を高めてくれます。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。