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長期金利と株式インデックスの逆相関データを理解する

By Staff | 2025-09-06

Category: インデックス投資

投資の世界では「金利と株価は逆相関」という言葉がよく使われます。

 

特に米国の長期金利、代表的には10年国債利回りは世界中の金融市場に影響を与える指標です。

 

株式インデックスとどのような関係にあるのかを理解することは、長期投資におけるリスク把握に役立ちます。

 


 

長期金利とは?

 

  • 米国10年国債利回りが最も注目される長期金利
  • 政策金利(フェデラルファンド金利)よりも、市場の需給やインフレ期待を反映する
  • 住宅ローン金利や企業の資金調達コストに直結し、実体経済へ影響を及ぼす

 

このため、10年国債利回りが上昇すると、投資家は「株式より安全資産である国債でも十分な利回りが得られる」と判断しやすくなり、株式市場から資金が流出する傾向が強まります。

 


 

株価インデックスとの理論的関係

 

金利と株価の逆相関は、次のようなメカニズムで説明されます。

 

  • 金利上昇 → 割引率上昇 → 将来利益の現在価値が低下 → 株価指数に下押し圧力

     

  • 金利低下 → 資金調達コスト低下、投資や消費が増加 → 株価指数にプラス要因

     

特にテクノロジー株の多いナスダックは、将来利益の成長を前提とするため、金利変動の影響を強く受けます。

 


 

歴史的データから見る逆相関

 

2000年代初頭(ITバブル崩壊後)

 

  • 2000年から2003年にかけて米国10年国債利回りは約6%から4%へ低下
  • 同時期にS&P500はITバブル崩壊で-40%下落したが、金利低下がその後の回復の追い風になった

     

2008年リーマンショック

 

  • S&P500は2008年に年間で-38%下落
  • 米国10年国債利回りも年初の3.9%から年末には2.2%へ急低下
  • 危機時には株と金利が同時に下がる「リスクオフ局面」も存在する

     

2010年代の金融緩和期

 

  • FRBのゼロ金利政策と量的緩和で10年国債利回りは平均2%前後に低下
  • この期間、S&P500は2010〜2020年で約+190%上昇(年率約11%)
  • 低金利環境が株価の大幅上昇を支えた代表的な時期

     

2022年の金利急騰局面

 

  • FRBの急速な利上げにより、10年国債利回りは2021年末の約1.5%から2022年10月には4%超へ
  • S&P500は2022年に-19%、NASDAQは-33%下落
  • 金利上昇と株価下落の典型的な逆相関が表れた

     


 

逆相関が崩れるケースもある

 

必ずしも常に逆相関が成立するわけではありません。

 

  • 金融危機やパンデミックなどのリスクオフ局面では「株も国債利回りも同時に下落」することがある

     

  • 1970年代のようにインフレが進行すると、金利と株価が同時に上昇する場面も見られる

     

つまり「逆相関は傾向」であって「絶対法則」ではないことを理解しておく必要があります。

 


 

長期投資家にとってのポイント

 

短期的な株価変動を左右する要因として長期金利は重要ですが、長期投資では「一時的な逆相関に振り回されないこと」が大切です。

 

  • 金利は景気やインフレに応じて変動するが、株価は長期的に企業利益の成長に連動
  • 逆相関を利用して頻繁に売買するのではなく、金利を「リスク要因」として認識するのが現実的
  • 例えば株と債券を組み合わせる60:40のポートフォリオは、長期的に安定性を高める手段として活用されてきた

     


 

まとめ

 

長期金利と株式インデックスは基本的に逆相関の傾向があります。

 

特に2022年のように金利が急騰した局面では株価の下落圧力が強まりました。


ただしリーマンショックやパンデミックのように同時に下がる例もあり、単純に逆相関を当てにするのは危険です。


長期投資では「金利動向を理解しつつも、企業利益の成長が株価を押し上げる」という本質を意識することが重要です。

 


 

FAQ

 

Q1. なぜ金利上昇が株価にマイナスなのですか?


将来利益を現在価値に割り引く際の割引率が上がるため、特に成長株は影響を受けやすいです。

 

Q2. 成長株とバリュー株では金利感応度が違いますか?


はい。成長株(ナスダック系)は金利上昇に弱く、バリュー株(金融や資本財など)は相対的に耐性があります。

 

Q3. 株と債券の両方が下がることは珍しいですか?


2022年のような急速な利上げ局面では同時に下落することがありますが、長期的には逆相関が機能する傾向が強いです。

 

Q4. 長期金利はどこで確認できますか?
米国10年国債利回りはBloombergやTradingView、米国財務省の公式サイトなどで確認できます。さらに、当サイトでも米国債利回りのデータをまとめていますのでご覧ください:


米国債利回りページ(toushininja.com)

 

Q5. 金利上昇局面でも株に投資すべきですか?


長期投資では一時的な金利上昇よりも企業の利益成長が重要です。むしろ調整局面は長期投資家にとって買い場となることもあります。

 

Q6. 逆相関が特に強くなるのはどんな時ですか?


FRBが急ピッチで利上げを進める局面です。2022年は政策金利が1年で4.25%引き上げられ、10年国債利回りが4%台に到達。同時にS&P500は-19%下落し、逆相関が鮮明に表れました。

 

Q7. 景気後退時の金利と株価の関係はどうなりますか?


景気後退期には金利が低下しやすく、株価も下落することが多いです。ただし景気回復期待が出始めると、金利低下が株価反発のきっかけになる場合もあります。

 

Q8. 長期金利とドル円の為替相場には関係がありますか?


あります。米国の長期金利が上昇するとドルが買われやすく、円安方向に動く傾向があります。為替を通じて日本の投資家のリターンにも影響します。

 

Q9. 金利低下は必ず株価にプラスですか?


必ずしもそうではありません。金融危機やパンデミックのように「リスク回避で債券が買われて金利低下」となる場合、株価はむしろ下落することがあります。

 

Q10. 株式と債券の組み合わせは今も有効ですか?


はい。2022年のように同時下落する年もありますが、長期的には株と債券の逆相関が機能する局面が多く、ポートフォリオの安定性を高める効果があります。

 

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。