マイクロソフト(MSFT)2026年度Q1決算|売上777億ドル・Azure 40%成長でクラウドが引き続き牽引
By Staff | 2025-11-01
Category: マーケット情報
マイクロソフト(NASDAQ: MSFT)は2025年10月発表の2026年度第1四半期(2025年7〜9月)決算にて、クラウドとAIを中心に力強い成長を示しました。
一方で、OpenAIへの投資に伴う損失を計上し、純利益はやや抑えられる形となりました。
それでも事業自体の採算性は改善が続いており、インフラ投資の規模も過去最大級に拡大しています。
四半期全体の業績:事業利益の伸びが鮮明に
主要な数値は次の通りです。
・売上高:777億ドル(前年同期:656億ドル → +18%)
・営業利益:379億ドル(前年:305億ドル → +24%)
・純利益(GAAP):277億ドル(前年:247億ドル → +12%)
・EPS(GAAP):3.72ドル(前年:3.30ドル → +13%)
利益面では OpenAI 投資の影響が大きく、
・OpenAI関連損失:41億ドル
・EPSへの影響:-0.41ドル
ただし調整後ベースでは
・非GAAP純利益:308億ドル(+22%)
・非GAAP EPS:4.13ドル(+23%)
となっており、本業の収益力はより強い伸びを示しています。
OpenAI関連損失の背景:会計処理による“見かけ上”の損失
今回「OpenAIで損失を出した」と見える理由は会計処理にあります。
実際に現金が失われたわけではありません。
・投資は 持分法会計(equity method) で処理
・OpenAIの損益の一部を Microsoft が財務諸表に反映
・2025年7〜9月期で 41億ドルの損失を認識
・純利益とEPSへ それぞれ31億ドル/-0.41ドルの影響
・資金コミット合計は 130億ドル
→ うち 116億ドルを資金提供済み
OpenAIは依然成長段階にあり、研究開発費が大きいため、Microsoftの決算に 損失シェア が反映される形となっています。
ただしこれらは非キャッシュ項目であり、企業活動の実態とは異なります。
「41億ドル損失」はむしろ巨大な将来収益の布石
この損失認識と対照的に、直後に発表された新契約では
・OpenAIが Azureへ2,500億ドル相当の追加購入を約束
つまり、非現金の損失計上により、実収益となる超大型契約を獲得という戦略的な展開が起きています。
Azureが AI 時代の「電力網」になりつつあることを示す象徴的な事例です。
クラウドが会社の中核に
売上308億ドル/Azureは+40%成長
・Intelligent Cloud:308億ドル(+28%)
・Productivity & Business Processes:330億ドル(+17%)
・More Personal Computing:138億ドル(+4%)
利益貢献はさらに顕著です。
・Productivity事業の営業利益:204億ドル
・Cloud事業の営業利益:134億ドル
・Personal Computingの営業利益:41億ドル
→ 利益の大部分をクラウドとビジネスアプリが創出
このため Microsoft は、クラウドとAI関連サービスが今後の収益拡大をけん引する事業ポートフォリオへと明確に移行しつつあります。
AIインフラ整備の規模が「国家級」
・設備投資(Additions to PP&E):194億ドル(前年149億ドル)
・減価償却:71億ドル(前年47億ドル)
・未開始リース負債:1,062億ドル
これは インフラ産業級の投資規模 であり、AIサービスを支える物理基盤を自ら構築している段階です。
従来事業の勢いは鈍化も利益基盤として機能
・More Personal Computing:+4%
→ Xboxハード:-29%
→ Search広告:+15%
クラウド成長を下支えする安定収益源としての役割が維持されています。
規制とサイバーリスク対応
・IRS税務争い:289億ドル+延滞金可能性
・競争・AI関連の規制強化
・国家的攻撃を伴うサイバーリスク
成長とともにリスク管理コストが拡大しています。
資本配分:株主還元と投資を同時に推進
・自社株買い:56.5億ドル
・配当:61.7億ドル(1株0.91ドル)
・合計還元:107億ドル
莫大なキャッシュ創出力が、成長と還元を両立させています。
まとめ:クラウドとAI事業が成長の中心に
2026年度第1四半期の Microsoft は、売上・本業利益ともに二桁成長を維持し、事業構造の転換が一段と鮮明になりました。
・Azure を中心としたクラウドが最も強い成長要因
・AI普及を見据えたインフラ投資が大幅に増加
・持分法適用による OpenAI 損失が純利益を一時的に圧迫
・More Personal Computing は緩やかな成長ながら利益基盤として寄与
・豊富なキャッシュフローが投資と株主還元の両立を可能に
この決算は、Microsoft が クラウドとAIによる安定した収益拡大を続けていることを示しています。
一方で、税務問題や規制、サイバーセキュリティなど、取り巻くリスクは依然として存在します。
今後の注目点としては、
・AIインフラ投資が収益性改善につながるか
・OpenAI との提携深化が事業成長にどう寄与するか
・クラウド市場での競争環境の変化
・規制動向がビジネスに与える影響
などが挙げられます。
総じて Microsoft は、既存事業の安定性と新領域の成長が同時に進んでおり、中長期的な事業拡大に向けて注視すべきフェーズに入っていると言えます。
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投資忍者 プロフィール
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。