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投資信託の分配金と課税の仕組み|NISA・iDeCoでも米国税は避けられない

By Staff | 2025-09-05

Category: インデックス投資

投資信託やETFを利用して資産運用を行う際、避けて通れないテーマが「分配金」と「課税」です。


一見するとシンプルですが、実際には米国源泉徴収、国内課税、NISA・iDeCoの扱い、さらには外国税額控除の可否など複雑な要素が絡んでいます。

 

この記事では、分配金にかかる税金の仕組みを整理し、投資信託とETFの違いや非課税制度との関係をわかりやすく解説します。

 

 


 

米国ETFの分配金課税の流れ

 

米国ETFを保有している場合、配当には二重課税が発生します。

 

  • 米国源泉徴収税(10%)


    米国で自動的に差し引かれます。条約により30%→10%に軽減されています。

     

  • 日本の課税(20.315%)


    米国で課税された後の金額に対して、日本国内で20.315%(所得税+住民税)が課税されます。

     

結果として、課税口座では分配金の約28%が税金として差し引かれることになります。

 

証券会社が自動で処理するため、投資家が為替や税額計算をする必要はありません。

 


 

国内籍投資信託でも米国源泉税は差し引かれている

 

ここで誤解しやすいのが「国内籍の投資信託なら米国課税はないのでは?」という点です。

 

実際にはそうではありません。

 

  • 投資信託が米国株から受け取る配当にも、最初に米国で10%の源泉税が課されています
  • その後の90%分がファンドの収益として計上され、再投資型であればその金額が自動的に再投資されます。
  • つまり、投資家自身の税務書類に米国課税が直接表示されないだけで、実質的には米国課税を受けた後の金額で運用しているのです。

 

この点を理解しておかないと、「投資信託は課税面で完全に有利」という誤解につながりかねません。

 


 

NISA・iDeCoでの扱い

 

NISAやiDeCoを利用する場合、日本国内での20.315%課税は非課税になります。


ただし、次の点が重要です。

 

  • 米国源泉税10%は非課税にならない → NISA・iDeCoでも必ず差し引かれる。

     

  • 外国税額控除は使えない → 国内課税が非課税扱いになるため、控除対象の税額が存在しない。

     

つまり、NISA・iDeCoのメリットは国内課税を免除できる点にあり、米国課税を回避できるわけではありません。

 


 

外国税額控除の活用(課税口座の場合)

 

特定口座や一般口座で米国ETFを保有している場合、確定申告を行えば外国税額控除を利用できます。

 

これは、米国で源泉徴収された10%を日本の税額から差し引ける制度です。

 

ただし「どのくらい取り戻せるか」は単に所得水準だけで決まるわけではありません。

 

  • 総所得のうち、外国所得がどの程度を占めるか
  • 外国所得全体と日本での税額とのバランス


    といった要素によって控除できる割合が変わります。

そのため、全額を取り戻せる場合もあれば、一部しか控除できない場合もあります。

 

いずれにしても、NISAやiDeCoでは国内課税が非課税扱いになるため、この控除を利用することはできません。

 

長期的に米国ETFを保有する場合、外国税額控除を活用するかどうかで、最終的なリターンに差が出る可能性があります。

 


 

為替は意識する必要があるのか?

 

「課税計算に為替が影響するのでは?」と考える人も多いですが、税金はドル建ての配当金額を基準に自動計算されます。

 

証券会社が円換算して処理してくれるため、投資家が為替計算を気にする必要はほとんどありません。

 

実務的に重要なのは、NISAやiDeCoの課税対象の範囲を理解すること、そして課税口座の場合には外国税額控除を適切に活用することです。

 


 

ライフステージ別の考え方

 

  • 現役世代:課税されても再投資に回し、長期で複利効果を得ることが優先。
  • 退職世代:課税後の分配金を生活費に充てる選択も現実的。
  • 長期資産形成:ETFは低コストで有利、投資信託は利便性が高い。ライフステージに応じて使い分けるのが現実的です。

 


 

まとめ

 

投資信託やETFの分配金に関する課税は、整理すると次のように理解できます。

 

  • 米国ETFは 米国10%+日本20.315% の二重課税(課税口座の場合)
  • 国内籍投資信託でも、米国源泉税10%が差し引かれた後の金額が再投資されている
  • NISA・iDeCoは国内課税を免除できるが、米国10%は避けられない
  • 外国税額控除は課税口座でのみ利用可能
  • 税制の違いを理解し、制度を正しく活用することが長期的なリターンに直結する

 

「課税されるから損」と短絡的に考えるのではなく、制度や仕組みを理解して戦略的に運用することが重要です。

さらに詳しい制度別の節税方法や税金最適化の考え方は、インデックス投資の税金と節税方法まとめ|NISA・米国ETF・外国税控除まで徹底解説 で体系的に解説していますので、参考にしてみてください。

 


 

FAQ よくある質問

 

Q1. NISA口座で米国ETFを保有すれば完全に非課税になりますか?


いいえ。NISA口座では日本の20.315%課税は非課税になりますが、米国での10%源泉徴収は免除されません。したがって、米国ETFからの分配金は必ず10%引かれた後に口座へ入金されます。

 

Q2. 日本籍の投資信託なら米国税はかからないのですか?


表面上は投資家に直接課税されませんが、実際には投資信託が米国株から受け取る配当の段階で10%源泉徴収されています。そのため、再投資される金額はあらかじめ米国税が差し引かれた後の金額になります。

 

Q3. iDeCoで米国ETFを買った場合、米国税10%は戻ってきますか?


戻りません。iDeCoでは国内課税が非課税になるため、外国税額控除を利用できません。米国で差し引かれた10%はそのままコストとして負担することになります。

 

Q4. 外国税額控除はどうすれば受けられますか?


課税口座(特定口座や一般口座)で米国ETFを保有し、確定申告を行うことで申請可能です。米国で引かれた10%を日本の税金から差し引く仕組みで、所得状況によっては全額、あるいは一部を取り戻せます。

 

Q5. 分配金を再投資すると課税はどうなりますか?


ETFの場合は受け取った分配金から税金が引かれた後に手元に入り、それを再投資する形になります。投資信託の自動再投資型は、税引き後の金額が自動的に再投資されます。いずれの場合も、税金は必ず差し引かれた上で再投資されるため、複利効果が働きにくい点には注意が必要です。

 

Q6. 為替レートは課税計算に影響しますか?


税金はドル建て配当額を基準に自動計算され、証券会社が円換算して処理してくれます。投資家自身が為替を計算する必要はありません。むしろ重要なのは、どの口座を使うかで外国税額控除の可否や非課税の範囲が変わる点です。

 

Q7. 投資信託とETF、税金面ではどちらが有利ですか?

 

NISAやiDeCoを使う場合、日本での20.315%課税が免除されるため、配当にかかる税金は米国の源泉税10%のみとなります。これは大きなメリットであり、ETF・投資信託のいずれを選んでも有効に活用できます。

 

ただし、どちらが有利かは投資スタイルによって異なります。

 

  • 売却益(キャピタルゲイン)を狙う場合
    → NISA・iDeCoでは売却益も非課税となるため、非常に有利です。

     

  • 配当収入を重視する場合
    → 日本の課税が免除される分メリットは大きいですが、信託報酬が高めの投資信託を長期で持つと、そのコストがリターンを削る要因になります。低コストETFと比較して差が出やすくなる点に注意が必要です。

     

結論として、NISA・iDeCoの非課税メリットは明確に大きいものの、長期的な資産形成を考えるなら「非課税効果」と「信託報酬の差」を総合的に比較して判断するのが現実的です。

 

Tags: インデックス投資

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。