
成長率とPEGレシオの考え方|PERだけではわからない株価評価【米国株投資】
By Staff | 2025-08-14
Category: 投資の基礎知識
株式投資をする上で、多くの投資家が最初に注目する指標のひとつがPER(株価収益率)です。
PERは株価が企業の利益の何倍で取引されているかを示し、「割安」か「割高」かを判断するために使われます。
しかし、PERはあくまで“現在の利益”を基準にした評価であり、“これからの利益成長”を考慮していません。
企業が将来大きく成長する見込みがある場合、PERが高くても実は割安なことがあります。
逆に成長がほとんど見込めない企業は、PERが低くても割高である可能性があります。
1. 成長率とは何か
成長率とは、企業の利益(特にEPS:Earnings Per Share)が前年比どれだけ増えているかを表す数字です。
例えば、昨年のEPSが2ドルで今年が2.4ドルであれば、成長率は20%です。
米国株では、過去の実績だけでなく、アナリスト予想による「今後3〜5年間のEPS成長率」も重視されます。
成長率が高い企業は、将来の利益の伸びが株価に反映されやすく、長期的に株価上昇の可能性が高まります。
2. なぜ成長率を考慮すべきなのか
株価は本質的に「将来の利益の合計」に基づいて決まります。
つまり、同じPERでも将来の利益成長が大きい企業の方が、本質的価値は高くなります。
例1:高PERでも割安なケース
企業A:PER 40倍、年間成長率 50%
PEG = 40 ÷ 50 = 0.8
1年後の利益は1.5倍になるため、実質的にはPERは急速に低下します。2〜3年後には、今の価格で見ればPERが20倍前後まで下がる可能性があります。この場合、現在のPERが高く見えても、将来の利益を考慮すれば割安と判断できることがあります。
- 実例に近いイメージ:急成長中のテクノロジー企業やクラウドサービス企業(例:初期のAmazonやNVIDIA)
例2:低PERでも割高なケース
企業B:PER 15倍、年間成長率 4%
PEG = 15 ÷ 4 = 3.75
成長がほとんど見込めなければ、株価が上がる要因が少なく、配当利回りが高くても市場全体の成長に置いていかれる可能性があります。景気後退時には利益が減り、PERが逆に上がることもありえます。
- 実例に近いイメージ:成熟しきった産業で競争力を失いかけている企業(例:縮小市場にある製造業)
3. PERの限界とPEGレシオの役割
PERは「株価 ÷ EPS」で求めますが、成長率を加味しないため、成長株や低成長株の比較では不十分です。
そこで登場するのがPEGレシオです。PEGはPERを年間EPS成長率で割った指標で、株価と成長のバランスを測ることができます。
4. PEGレシオの一般的な目安
投資家の間でよく使われるPEGの目安は以下の通りです。
- PEGが約1 → 成長と株価がほぼバランスしている
- PEGが1未満 → 成長に比べて株価が割安な可能性がある(良い買い場とされることが多い)
- PEGが1.5以上 → 成長に比べて株価がやや割高な可能性
- PEGが2以上 → 割高と見なされることが多い(ただし一部の成長企業では例外もあり)
5. 成長率を使った実践的な見方
同じ業界内で比較する
例:クラウド企業A(PER 35、成長率 40% → PEG 0.88) vs クラウド企業B(PER 25、成長率 10% → PEG 2.5)
PERだけならBが安く見えますが、成長を考えるとAの方が割安かもしれません。成熟企業と新興企業を混ぜて評価しない
成長性が大きく異なるため、PEGや成長率で補正が必要です。
6. 注意点
- 成長率は予測値であり、外部環境や業界動向で大きく変化する
- 一時的な利益増減が成長率を歪めることがある
- 他の指標(ROE、営業キャッシュフロー、負債比率)と併用して総合判断することが重要
まとめ
成長率は、株価の適正さを判断する上で欠かせない要素です。
PERは企業の現在の利益水準を評価するだけの指標であり、成長性を加味しなければ、真の割安・割高は判断できません。
PEGレシオはそのギャップを埋める便利なツールであり、PEGが1以下の銘柄は「成長に対して割安」とされることが多く、特に米国株のように成長速度が速い市場では活用する価値が高いといえます。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。