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新興市場インデックスETFの最近の動向と5年・10年リターン比較

By Staff | 2025-09-07

Category: インデックス投資

新興国市場は人口増加や経済成長のポテンシャルが大きい一方、政治や通貨の不安定さからボラティリティも高い市場です。

 

これらに広く分散投資できる手段として、新興市場インデックスETFは重要な存在となっています。

 

本記事では、最近の動向とともに5年・10年リターンを確認し、先進国株との比較を通じて投資戦略を整理します。

 


 

新興市場インデックスETFとは

 

代表的な商品には以下のようなものがあります。

 

  • iShares MSCI Emerging Markets ETF(EEM)
  • Vanguard FTSE Emerging Markets ETF(VWO)
  • iShares Core MSCI Emerging Markets ETF(IEMG)

 

これらは中国、インド、ブラジル、台湾、南アフリカなどを含む20〜30か国の株式に投資します。

 

米国株ETFと同様に証券口座から容易に取引でき、世界の成長地域にまとめてアクセスできるのが魅力です。

 


 

最近の市場環境

 

2020年以降の新興市場は、回復の一方でさまざまな逆風に直面しました。

 

  • 中国株は規制強化で下落し、インデックス全体に大きく影響
  • インド株は2020〜2023年で年平均約12%の上昇を記録し、強さを発揮
  • 資源国であるブラジルや南アフリカは商品市況上昇に支えられた
  • 米ドル高の影響で新興国通貨は弱含みとなり、ドル建てリターンは抑制された

 


 

パフォーマンス比較(5年・10年)

 

過去の実績をETFごとに見てみます(2023年末時点)。

 

  • EEM(iShares MSCI Emerging Markets ETF)

     

    • 5年リターン:約−5%
    • 10年リターン:約+5%(年率換算0.5%程度)

       

  • VWO(Vanguard FTSE Emerging Markets ETF)

     

    • 5年リターン:約+1%
    • 10年リターン:約+10%(年率換算1%前後)

       

  • IEMG(iShares Core MSCI Emerging Markets ETF)

     

    • 5年リターン:約+2%
    • 10年リターン:約+15%(年率換算1.4%前後)

       

一方でS&P500(IVVやVOOに相当)は

 

  • 5年リターン:約+55%
  • 10年リターン:約+185%(年率換算11%強)

     

となり、同じ期間での成績差は歴然です。

 


 

資金流入と投資家の動き

 

  • 米国金利上昇局面では資金流出が目立ちやすい
  • 2022年は米ドル高で大幅流出したが、2023年はインド・東南アジアに再び資金が向かった
  • ESGや再エネテーマでの資金流入も一部で見られる

 


 

主要ETFの特徴

 

  • EEM:流動性が高いが信託報酬0.70%と高め
  • VWO:信託報酬0.08%、コストの低さが強み
  • IEMG:信託報酬0.09%で低コスト、かつEEMより分散度が高い

     


 

新興市場ETFのメリット

 

  • 成長性の高い国々に分散して投資できる
  • 長期的な人口増加・都市化の恩恵を受けられる
  • 通貨分散効果により円安局面ではリターンを押し上げる

     


 

新興市場ETFのデメリット

 

  • 政治リスクや規制リスクが大きい(特に中国)
  • 通貨変動により円建てリターンが大きく変動
  • 企業の収益性・透明性は先進国株に劣る傾向

     


 

最近の注目ポイント

 

  • 中国依存度の高さをどう評価するか
  • インド市場の成長が全体パフォーマンスを押し上げるか
  • 米国の金融政策による資金フローの変化
  • EVや再エネなどテーマ投資との関連

     


 

投資戦略の考え方

 

新興市場ETFはコアではなくサテライト枠として活用するのが現実的です。

 

  • コアをS&P500や全世界株とし、新興市場は10〜20%程度にとどめる
  • 長期的なリスクを受け入れつつ、人口増加や成長余地を期待する
  • 新NISAでは低コストETF(VWO, IEMG)を利用するのが有力

     


 

まとめ

 

5年・10年のリターンで見ると、新興市場ETFは先進国株や米国株に大きく劣後しました。

 

ただし、新興国には人口増加や都市化といった長期的な成長ドライバーが存在します。

 

短期的な変動リスクを理解した上で、分散投資の一部として組み込むことが、長期ポートフォリオの安定につながります。

 


 

FAQ

 

Q1. 新興市場ETFはどのくらいの比率で保有すべき?


A. 一般的にはコアを米国株や全世界株に置き、新興市場はサテライト枠として10〜20%程度にとどめるのが現実的です。リスク許容度が低い場合は5〜10%でも十分な分散効果が得られます。

 

Q2. 中国リスクを避けたいときの方法は?


A. インド、ベトナム、インドネシアなどを対象とした地域特化型ETFを組み合わせる方法があります。また「中国除外インデックス」に連動するETFも一部存在します。

 

Q3. 為替リスクは先進国株ETFより大きい?


A. はい。新興国通貨は流動性が低くボラティリティが高いため、為替リスクは先進国株ETFより大きくなります。円建て投資家にとってはドル円だけでなく、新興国通貨の変動も影響します。

 

Q4. 新興市場ETFを長期積立する意味は?


A. 短期的には米国株に劣後する局面もありますが、長期では人口増加や都市化による消費拡大が期待されます。20年単位で見ると米国株との相関が低く、ポートフォリオ全体の安定性を高める効果があります。

 

Q5. 米国金利が上昇しているときはどう対応する?


A. 資金流出によって株価が下がりやすいため、スポットで大きく買うよりも積立で時間分散するのが現実的です。逆に利下げ局面では資金が流入しやすく、リターン改善が見込まれます。

 

Q6. 新NISAでの活用方法は?


A. 成長投資枠を使い、低コストETF(VWOやIEMGなど)を積立するのが有効です。特に長期非課税枠では複利効果を最大限に活かせるため、新興市場の成長を取り込む手段になります。

 

Q7. 新興市場ETFは配当利回りも期待できる?


A. 平均すると2〜3%程度の配当利回りがあります。ただし先進国株のように安定した増配は期待しにくく、為替や市場環境によって変動が大きい点に注意が必要です。

 

Q8. 個別株で新興国に投資するよりETFが良い理由は?


A. 個別企業は会計の透明性や規制リスクが高く、情報も限られます。ETFであれば分散投資によってリスクを抑えつつ、新興国全体の成長を取り込むことが可能です。

 

Q9. 過去10年で米国株に大きく劣後しているのに、今から投資する意味は?


A. 確かに過去10年は米国株の一人勝ちでしたが、これはドル高やGAFAを中心とした成長による部分が大きいです。長期的には新興国の人口増加・インフラ投資・デジタル化が成長要因となる可能性があり、分散投資の一環として保有する意義はあります。

 

Q10. 新興市場ETFはいつ買うのが良い?


A. 為替や景気サイクルを完全に読むのは難しいため、定期的な積立が基本です。ただし米国金利がピークアウトし、ドル安傾向が出ているときは新興市場に資金が流入しやすいため、有利なタイミングとなる場合があります。

 

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。