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S&P500は史上最高値で買っても大丈夫?過去50年のデータで検証する「高値投資」の真実

By Staff | 2025-10-14

Category: インデックス投資

投資家が最も迷う瞬間のひとつが、「いまが史上最高値だけど、買っていいのか?」というタイミングです。


株価が上がり続けると「そろそろ天井では?」という心理が働き、逆に下がると「もっと下がるのでは?」と怖くなる。


この“タイミングの罠”は、多くの人が長期リターンを逃す原因になっています。

 

しかし、冷静にデータを見てみると、S&P500においては「高値で買った投資家」も十分に報われてきたことがわかります。


この記事では、過去50年の統計や主要機関の調査をもとに、史上最高値で投資した場合のリターンを検証します。

 


 

歴史データで見る:高値で買った投資のその後

 

BofA Global Research(1975〜2025年)の分析によると、S&P500を史上最高値で購入した場合のトータルリターンは以下のとおりです。

 

  • 1年後:+13.6%
  • 2年後:+27.6%
  • 5年後:+87.6%

 

一方、「最高値ではない時期」に購入した場合の平均は

 

  • 1年後:+12.9%
  • 2年後:+27.4%
  • 5年後:+81.9%

 

つまり、高値で買ってもむしろ同等か、わずかに上回るリターンを得ていたことがわかります。


過去半世紀のデータにおいても、史上最高値で買った投資家が損をして終えるケースは少数派です。


特に強気相場が続く局面では、「高値更新は終わりではなく、始まり」であることが多いのです。

 


 

高値が続く理由:上昇相場のモメンタム

 

株式市場が最高値を更新する時期には、いくつかの共通点があります。

 

  • 企業利益の増加により、株価上昇が実態を伴っている
  • 経済全体の拡大や雇用改善によって消費が増加
  • 金利水準が比較的安定し、資金が株式市場へ向かう

 

こうした背景では、「高値更新」は過熱のサインではなく、成長の延長線上にあります。


実際、1950年以降のデータでは、S&P500が新高値をつけたあとにさらに複数回の新高値を記録する“高値クラスター”が頻発しています。


つまり、「高値だから危険」という思い込みは、データ的には根拠が薄いのです。

 


 

長期スパンで見た場合:10年・20年リターンの実際

 

短期や中期では高値投資が不利ではないと分かりました。

 

では、10年や20年という超長期ではどうでしょうか。

 

VanguardやDimensional Fund Advisors(DFA)などの研究では、高バリュエーション期のリターンはやや低下する傾向が確認されています。

 

  • 10年間の平均年率リターン

     

    • 高値付近での投資開始:年率約6〜7%
    • 平均的な時期に投資開始:年率約8〜9%

       

  • 20年間の平均年率リターン

     

    • 高値付近での投資開始:年率約7.2%
    • 通常期の開始:年率約8.0%前後

       

差は存在するものの、そのギャップはせいぜい年率1ポイント前後


20年という長期では、配当再投資・複利効果・追加投資の方が、タイミング差を上回る影響を持ちます。

 

言い換えれば、「いつ始めるか」より「続けるかどうか」が最終リターンを決めるのです。

 


 

タイミングよりも「戦略」でリスクを減らす

 

史上最高値で投資する際に重要なのは、“タイミングを完璧に当てること”ではなく、心理的に継続できる戦略を持つことです。


その代表がドルコスト平均法(DCA)です。

 

  • ドルコスト平均法(DCA)


    毎月一定額を自動で積み立てる方法。高値でも安値でも買うため、平均取得価格が安定し、相場のブレを平準化できます。
    たとえば月3万円を10年間積み立てた場合、合計360万円の投資が約700万円以上に成長するケースもあります(平均年率7%換算)。

     

  • 6〜12か月の分割投資(期限付きDCA)


    まとまった資金を一度に入れるのが不安な場合、半年〜1年かけて分割投入する。
    「暴落を待つ」よりも、ルールを決めて淡々と投資する方が結果的にリターンが安定します。

     

  • ドローダウン時の前倒しルール


    市場が一時的に10〜15%調整したら予定より前倒しで追加投資。
    感情ではなくルールで対応することで、冷静な行動が取れます。

     

これらを組み合わせると、たとえ「高値更新中の相場」でも恐れずに継続投資できるようになります。

 


 

投資の成否を決めるのは「継続力」

 

長期のデータが示しているのは明確です。


S&P500のトータルリターンは、どの時点で買っても長期的には右肩上がりでした。


1980年代に高値と思われた水準も、いまでは「安値」に見えるほど、米国経済は拡大を続けています。

 

  • 1980年からの累計リターン:約+5,000%超

     

  • 2000年のドットコムバブル直前に投資しても、20年以上で+250%以上

     

つまり、「高値だから買えない」という考えは、長期投資における最大の機会損失です。


市場の短期的な波よりも、時間と複利の力こそが投資家の味方になります。

 


 

よくある質問(FAQ)

 

Q. 史上最高値で買うのはやっぱり危険?


A. データ上は危険ではありません。過去50年の平均では、1年後・5年後のリターンは市場平均とほぼ同等です。短期の調整はありえますが、長期では上昇トレンドが続いています

 

Q. 10年・20年スパンではどう?


A. 高値スタートの10年リターンはやや低下しますが、年率1%程度の差。複利効果と再投資を続ければ、十分にカバー可能です。

 

Q. いつ買えば一番いい?


A. 最適なタイミングを狙うのは不可能です。重要なのは「いま始めること」と「継続すること」です。長期の複利を味方につけることで、買値の差は次第に薄れます。

 


 

まとめ:高値でも「時間」を味方にすれば報われる

 

 

  • 短期〜中期では、史上最高値で買っても平均並み〜やや良好なリターン
  • 10年・20年の超長期では、やや低めだが誤差程度
  • 成功を分けるのは「タイミング」ではなく「継続と再投資」

 

投資の本質は「時間の使い方」です。


最高値であっても、積み立てと再投資を続ける人こそ、最終的に市場の成長を享受できます。


目先の高値を恐れるよりも、いま市場に参加し続ける勇気こそが、長期的な資産形成の最大の鍵です。

 

 

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。