SPLGは選択肢になる?SPY・VOOとの違いを徹底比較|長期投資で有利なETFとは
By Staff | 2025-10-14
Category: インデックス投資
S&P500に連動するETFといえば、VOO・IVV・SPYの3本が定番です。
しかし最近、同じState Street社が運用する SPLG(SPDR Portfolio S&P 500 ETF) にも注目が集まっています。
SPLGはSPYと同じS&P500指数をベンチマークにしていながら、経費率が低く、1株あたりの価格も安いという特徴を持ちます。
長期投資家にとっては、コストのわずかな違いでも積み重ねが効いてくるため、SPLGは「SPYの低コスト版」として実用的な選択肢になりつつあります。
本記事では、VOOやSPYとの比較を交えながら、SPLGの特徴・向いている投資スタイル・注意点などを整理していきます。
SPLGとは?基本スペックと概要
SPLGは、State Street Global Advisorsが運用するS&P500連動ETFで、SPYと同じ運用会社が手掛けています。
もともと「S&P Large Cap ETF」として2000年に設定され、2012年に現行の形へと統合された経緯があります。
主な特徴は以下の通りです。
- 運用会社:State Street Global Advisors(SPYと同じ)
- ベンチマーク:S&P500指数
- 経費率:0.02%
- 上場市場:NYSE Arca
- 配当頻度:年4回(3月・6月・9月・12月)
SPYと同じ指数に連動しながらも、より低コストで運用できるよう設計されており、構造的にはVOOやIVVに近い「オープンエンド型ETF」となっています。
経費率(コスト)の違いと長期影響
S&P500連動ETFを比較すると、経費率は以下のようになります。
- SPY:0.0945%
- VOO:0.03%
- SPLG:0.02%
数字だけ見ると小さな差ですが、長期では複利効果の差=機会損失として効いてきます。
ここでは、100万円を年率7%で10年間運用した場合を例に考えます(経費率を控除後の実質リターンで単純比較)。
10年後の評価額
- SPY:約1,949,847円
- VOO:約1,961,643円
- SPLG:約1,963,478円差額(複利込み)
- SPY vs SPLG:−約13,600円
- SPY vs VOO:−約11,800円
- VOO vs SPLG:−約1,800円
20年ではSPYとSPLGの差が約5万円超に拡大します。
このように、年単位では小さくても、長期の積み重ねでは確実にリターンを押し下げる要因になります。
したがって、コスト重視の長期投資ではSPLGやVOOが有利と言えるでしょう。
一方で、SPYのブランド力や流動性を重視する短期投資家にとっては、その差はあまり問題になりません。
上場市場と1株単価の違い
SPLGはSPYとは異なり、NYSE Arca(電子取引中心の市場)に上場しています。
どちらも信頼性の高い市場ですが、SPLGの方が個人投資家向けに設計されている点が特徴です。
また、1株あたりの価格が約80ドル前後と手頃で、VOOやSPYに比べて少額から買いやすいのも魅力です。
ドルコスト平均法で毎月積み立てる場合、SPLGのように単価が低いETFは柔軟に購入しやすく、よりきめ細かい積立が可能になります。
ETF構造の違い:ユニット型とオープンエンド型
SPYは1993年に登場した世界初のETFで、ユニット投資信託型構造を採用しています。
これは当時としては革新的な仕組みでしたが、現在のETFとはいくつかの点で異なります。
ユニット型では、ETFそのものが「有限の受益権ユニット」として設計されており、新たなユニットの発行や償還の仕組みがやや複雑です。
そのため、配当再投資の処理や、税務上の原資配分(capital gains distribution)の扱いに制約が生じる場合があります。
一方で、オープンエンド型ETFは後発のVOOやIVV、そしてSPLGが採用している構造です。
こちらは投資信託に近い形で、必要に応じて新規発行・償還が柔軟に行えるのが特徴です。
この仕組みにより、配当再投資の効率や、売買に伴う税務コストが軽減される設計になっています。
簡単に言えば、
ユニット型:ETF黎明期の古い構造。税務や再投資効率は限定的。
- オープンエンド型:現行主流の仕組み。効率的で個人投資家向き。
したがって、SPLGはSPYの伝統的な運用哲学を受け継ぎつつ、より現代的に最適化されたETFと言えるでしょう。
構造上の違いが直接リターンに大きな差を生むわけではありませんが、長期保有や配当再投資を考えるうえでは、オープンエンド型のほうが合理的な設計です。
流動性とスプレッド
SPYは世界でもっとも取引量が多いETFの一つであり、機関投資家や短期トレーダーのメイントラックとして圧倒的な存在です。
そのため、スプレッド(売値と買値の差)は通常0.01ドル前後と極めて狭く、約定スピードも非常に速いのが特徴です。
一方、SPLGはVOOやIVVと同程度の流動性を持ち、取引量も個人投資家にとっては十分な水準です。
スプレッドは0.02〜0.03ドル前後で推移しており、長期保有を前提とした積立投資では実質的に影響はほとんどありません。
短期トレードや大口取引ではSPYが有利ですが、積立や中長期運用ではSPLGの流動性でまったく問題ないと言えます。
パフォーマンス比較:実際のリターン差
2024年のS&P500指数(配当込みトータルリターン)は+25.0%でした。
同年の主要ETFの成績は次の通りです。
- SPY:+24.9%
- VOO:+25.0%
- SPLG:+25.0%
数値の違いはごくわずかで、実質的には誤差レベルです。
過去5年・10年といった長期でも、SPLGとSPYのチャートはほぼ重なっており、どちらを選んでもS&P500の成長を等しく享受できます。
どんな投資家に向いているか
それぞれのETFは「どんなスタイルで運用するか」によって向き・不向きが変わります。
短期トレード中心の人 → SPY
取引量が圧倒的で、売買スピード・スプレッドが優秀。長期積立・コスト重視派 → SPLGまたはVOO
経費率が低く、複利効果を最大化できる。少額からコツコツ積み立てたい人 → SPLG
単価が安く、ドル建て積立に向く。運用規模・ブランド重視派 → VOOまたはSPY
世界的な知名度と実績があり、心理的安心感がある。
結論として、短期派はSPY、長期派はSPLGまたはVOO。
どれも優れたETFですが、自分の投資スタイルと目的に合うかどうかで選ぶのが最も合理的です。
SPLGを選ぶ際の注意点
- 日本の証券会社では、SBI証券・マネックス証券など一部でのみ取り扱い。
- 大口注文ではSPY/VOOの方が有利な場合もある。
- 自動再投資機能はないが、手動で再投資すれば複利効果を得られる。
また、SPLGはVOOやIVVと同様に安定した配当を年4回支払っています。
利回りは1.4〜1.5%程度で、他のS&P500 ETFとほぼ同じ水準です。
結論:SPLGは長期積立に最適な実用的ETF
SPLGは、SPYと同じState Street社が運用する正統なS&P500 ETFです。
運用品質や信頼性はSPYと変わらず、構造はより効率的で、経費率はさらに低い。
VOO(0.03%)をも下回る0.02%のコストは魅力的で、少額からS&P500に積み立てたい人にとって非常に合理的な選択肢となります。
流動性やブランド力ではSPYに一歩譲るものの、実際のリターン差は誤差レベル。
長期保有を前提とするなら、SPLGは“知る人ぞ知る優等生ETF”と言えるでしょう。
SPLGの特徴を理解したうえで、他の主要ETFであるVOO・IVV・SPYとの違いを整理しておくと、より自分に合った一本を選びやすくなります。
詳しくは、以下の記事でS&P500に連動する主要ETFを総合的に比較しています。
S&P500に投資するならどのETF?VOO・IVV・SPY徹底比較ガイド
FAQ
Q1. SPLGはVOOやIVVより信頼性が劣る?
→ いいえ。同じS&P500連動ETFであり、運用会社の信頼性も高いです。
Q2. 日本のNISA口座で買える?
→ SBI証券やマネックス証券など一部の証券会社で一般NISA口座から購入可能です。
Q3. 配当利回りはどれくらい?
→ 年4回の分配で、VOO・SPYと同程度の1.4〜1.5%前後です。
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。