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株価指数と金価格の相関関係:危機時の動きと長期投資への活かし方

By Staff | 2025-09-06

Category: インデックス投資

投資の世界では「株と金は逆相関」とよく言われます。

 

株価が下がると金が上がり、逆に株が好調なときは金が動かない、もしくは下落するというイメージです。


しかし実際には、両者の関係は常に固定的ではなく、時期や経済環境によって変わります。

 

長期投資で米国株インデックスを中心に運用していく中で、金がどのような役割を果たすのかを理解することはリスク管理に役立ちます。

 


 

株価指数と金の基本的な特徴

 

  • 株価指数(S&P500、ナスダックなど):企業の収益成長や経済拡大を反映し、長期的には右肩上がり。
  • 金:配当や利子を生まないが「価値の保存手段」として認識される。インフレや金融不安の際に買われやすい。
  • 通常時には相関が低く、危機時や政策変動時に逆相関が強まる傾向がある。

 


 

歴史的に見た株と金の相関

 

2008年リーマンショック

 

  • S&P500は2008年に年間で約-38%の下落。
  • 同時期に金価格は約+5%上昇。
  • 投資家が「リスク資産から安全資産へ」と動いた典型的な局面。

 

2011年前後の欧州債務危機・米国格下げ

 

  • 株価は一時的に急落。S&P500は2011年に約0%近辺と低迷。
  • 金価格は2011年に過去最高水準まで上昇し、年間で約+10%。
  • 信用不安が強まるときに金が「逃避先」として買われた例。

 

2020年コロナショック

 

  • S&P500は2020年2月〜3月にかけて約-34%下落。
  • その後の金融緩和で急回復し、年間では約+16%のリターン。
  • 金価格は同年8月に史上最高値を更新し、年間で約+25%上昇。
  • 危機時の防御力とインフレ懸念からの買い需要が同時に作用。

 

長期的な視点

 

  • 過去20年のS&P500と金の相関係数はおおよそ0前後で、明確な逆相関ではない。

 

  • 短期的には逆相関が見られるものの、長期的にはそれぞれ異なる動きをしてきた。

 


 

株と金を組み合わせるメリット

 

  1. ポートフォリオ全体のリスク分散効果


    株価が急落したときに金が値上がりする可能性があり、全体の下落幅を抑えられる。

     

  2. インフレヘッジ


    金は供給量が限られているため、通貨価値が下がる局面で強さを発揮することがある。

     

  3. 心理的安定


    株式市場が不安定でも、資産の一部を金に置いておくことで「全てが下がる」リスクを避けられる。

     


 

株と金を組み合わせる際の注意点

 

  • 金は配当や利息を生まないため、長期的なリターンは株式に劣る。
  • ETFの場合は信託報酬、現物保有なら保管コストがかかる。
  • 金の比率を高めすぎると、株式市場の成長を取り込む機会を逃す可能性がある。

 


 

日本の投資家にとっての実践的アプローチ

 

米国株インデックスを中心に資産形成する前提で、金を補助的に組み入れるのが現実的です。

 

  • 資産全体の数%〜10%程度を金に割り当てると、暴落時の下落幅を和らげられる可能性がある。
  • NISAやiDeCoでは金のETFの選択肢が限られるため、特定口座での運用が主流。
  • ドル建ての金ETFを買う場合は為替の影響も受けるため、円換算でのリスクも考慮する必要がある。

     


 

まとめ

 

株価指数と金価格は必ずしも「常に逆相関」ではありません。

 

ただし危機時には資産防衛の役割を果たすことが多く、長期投資におけるリスク分散効果を持ちます。

 

  • 株は成長を取り込む「攻め」の資産

     

  • 金は危機時やインフレ期に機能する「守り」の資産

     

長期的には株を中心に据えつつ、適度に金を組み合わせることで安定した資産形成が可能になります。

 


 

FAQ

 

Q1. 株と金の相関は常に逆相関ですか?


いいえ。通常時は相関が低く、危機時に逆相関が強まる傾向があります。

 

Q2. 金は長期投資でどのくらいのリターンを期待できますか?


過去50年の平均年率リターンは約5%程度で、株式(S&P500の約10%)には劣ります。

 

Q3. 金ETFと現物投資の違いは何ですか?


ETFは売買や保管が容易で流動性が高い。現物は手元で保有できる安心感はあるが、保管コストがかかります。

 

Q4. 金はインフレヘッジとしてどの程度有効ですか?


1970年代の高インフレ期には金価格が10年で約7倍になった例があり、一定の効果が見られます。

 

Q5. 金をポートフォリオに入れるなら何%くらいが目安ですか?


一般的には5〜10%程度が目安とされます。リスク許容度に応じて調整すると良いでしょう。

 

Q6. 株価と金が同時に上がることはありますか?


あります。特にインフレ懸念が強い時期や金融緩和の局面では、株と金が同時に買われるケースがあります。2020年はS&P500が年間で約+16%、金も+25%と両方上昇しました。

 

Q7. 金価格はどの要因で動くことが多いですか?


ドルの強弱、インフレ率、金利動向、地政学リスクなどが主要因です。特に米ドルが弱くなると金価格は上昇しやすい傾向があります。

 

Q8. 金鉱株やゴールドETFは金と同じように動きますか?


相関はありますが完全ではありません。金鉱株は企業業績や株式市場の影響も受けるため、金よりボラティリティが高い場合があります。ETFは金価格に比較的忠実に連動します。

 

Q9. 長期で金を持ち続けるデメリットは何ですか?


配当や利息を生まないため、インカムゲインが得られません。また長期的なリターンは株式より低く、機会費用が発生する可能性があります。

 

Q10. 金を買うタイミングはいつが良いですか?


タイミングを当てるのは難しいため、積立方式で少しずつ買うのが現実的です。株価が上昇している局面でも一定額を継続購入することで、危機時の備えになります。

 

 

Tags: インデックス投資
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。