
為替ヘッジなし全世界株投資の過去成績とヘッジあり比較
By Staff | 2025-09-07
Category: インデックス投資
全世界株式インデックスへの投資は、地域分散が効いた代表的な長期投資手法です。
その中でも「為替ヘッジなし」を選ぶと、株式の値動きだけでなく為替変動の影響も受けることになります。
本記事では、過去数十年の成績をドル建てと円建ての両面から振り返り、さらに為替ヘッジあり商品と比較しながら、そのメリットと注意点を整理します。
為替ヘッジなし投資とは
投資信託やETFには「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」が存在します。
為替ヘッジあり:円ベースの値動きを安定させられるが、コストが高くなる
為替ヘッジなし:コストが低いが、為替変動による影響をそのまま受ける
長期積立では「ヘッジコストを払うよりも、為替は長期で平均化する」という考え方から、ヘッジなしを選ぶケースが多くなっています。
世界株式のドルベース成績
代表的な指数であるMSCI ACWI(全世界株指数)は、過去30年間(1993〜2023年)で年平均約7.3%のリターンを記録しました。
例えば、1993年に1万ドルを投資していた場合、2023年末には約8万3,000ドルに成長しています。
これは単純に株式市場の成長を示す数字であり、為替の影響は含まれていません。
円ベースで見た場合のリターン
ドル建てと円建ての違いを理解するには為替の影響が欠かせません。
- 1993年の1ドル=約110円から、2023年末の1ドル=約140円へ円安が進行
- もし1993年に110万円(=1万ドル相当)を投資していた場合、2023年末には約1,160万円に成長
- 為替が円安に動いたため、円建てリターンはドル建てを上回った
逆に2011年の1ドル=約75円という超円高で投資した場合、その後の円安局面では大きなプラス要因となりました。
為替ヘッジあり投資の成績
為替ヘッジを付けると、ドル円の変動による資産価値の増減を避けられます。
長期的には「為替の追い風」を享受できなくなる一方で、「円高による逆風」を防ぐ効果があります。
過去30年の全世界株式(MSCI ACWI)を例にすると:
- ドル建てでは年平均約7.3%のリターン
- 円ヘッジなし:円安効果も加わり年平均8%前後、110万円→約1,160万円
- 円ヘッジあり:ドル建ての成績に近く、年平均6〜6.5%程度、110万円→約900〜950万円
つまり、1993〜2023年は円安が進んだため「ヘッジなし」が有利でしたが、円高局面では逆の結果になります。
ケーススタディ:2000年に1,000万円を投資した場合
為替ヘッジなし
- 当時のドル円:約100円
- 1,000万円 ≒ 10万ドル
2023年末:約36万ドルに成長 → 円換算で約5,040万円
為替ヘッジあり
- 為替の影響を排除
- 2000〜2023年の年平均リターン:約6%台
1,000万円 → 約3,800万円前後
このように、円安が続いた局面では「ヘッジなし」が大きなリターンをもたらしましたが、将来円高が長く続けば「ヘッジあり」の方が優位になる可能性もあります。
為替リスクをどう考えるか
長期投資では、為替のプラスとマイナスが平均化される可能性があります。
しかし取り崩しのタイミングによって結果は大きく変わるため注意が必要です。
- 生活費が円で必要な場合、円高局面での取り崩しは不利
- 老後が近い段階では一部を為替ヘッジ付きに切り替えるのも選択肢
- 為替リスクを「リスク」ではなく「分散の一部」と捉える考え方もある
為替ヘッジなし投資のメリット・デメリット
メリット
- コストが低く、信託報酬を抑えられる
- 長期的には株式リターンが為替変動を上回る傾向
- 外貨資産を持つことで円安時のインフレ対策になる
デメリット
- 為替変動による短期的な上下が大きい
- 円高で取り崩すときに資産価値が削られる可能性
- 老後資金の安定性を考えると一部はヘッジも検討すべき
為替ヘッジありを選ぶべきケース
- 近い将来(数年以内)に資産を取り崩す予定がある場合
- 為替の短期的な変動で資産額が大きく動くのを避けたい場合
- 老後の生活費を円で安定的に確保したい場合
まとめ
過去のデータを見ると、為替ヘッジなし全世界株投資は円安局面で大きなリターンを生みました。
1993〜2023年の30年間では、円ヘッジなしは約10倍の資産増となり、ヘッジありは約4.5〜5倍程度でした。
ただしこれは過去の結果であり、将来円高が長期化する可能性もあります。
投資期間や取り崩し時期に応じて、為替ヘッジの有無を柔軟に使い分けることが重要です。
FAQ
Q1. 為替リスクは長期投資では気にしなくてよい?
A. 平均化される可能性はありますが、老後資金取り崩し直前の円高リスクは無視できません。
Q2. 為替ヘッジなしと日本株を組み合わせるメリットは?
A. 日本株は円建て資産なので、為替リスクを相殺する役割を果たします。
Q3. 円高が来ると予想されるときはどうすべき?
A. 為替の方向を当てるのは難しく、予想に基づく大きな判断はリスクが高いです。
Q4. 老後の生活費が円で必要な場合は?
A. 一部ヘッジあり商品を組み合わせ、資産の安定性を確保するのが現実的です。
Q5. 新NISAではどちらが有利?
A. 長期積立なら、低コストの為替ヘッジなし商品が基本です。ただし取り崩しが近い世代は一部ヘッジありも検討対象です。
Q6. ヘッジありを最初から選ばない方がよいのか?
A. 短期目的(学費や住宅資金)では有効ですが、長期形成ではコスト面から不利です。
Q7. 過去の円高局面ではどうだった?
A. 1985〜95年の大幅円高では、ヘッジありの方が円建てリターンを守れました。
Q8. 全世界株は米国株比率が高いが、為替リスクにも影響する?
A. はい。全世界株指数の約6割は米国株で、実質的にドル円が大きく影響します。
Q9. 将来円安が続けば「ヘッジなし」が圧倒的に有利?
A. 円安が続けば有利ですが、円高に転じれば逆の結果となります。過信は禁物です。
Q10. 為替リスクはインフレ対策にもなる?
A. 円安による生活コスト上昇を、外貨資産の価値上昇が相殺してくれる効果があります。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。