
米国債はデフォルトし得るのか?債務上限問題の歴史とリスク
By Staff | 2025-06-16
Category: 米国債
アメリカ国債は、世界で最も信用力の高い資産のひとつとされています。
しかし、たびたび話題になる「債務上限問題」や「デフォルト危機」は、投資家にとって無視できない政治リスクです。
本記事では、米国の債務上限の仕組みや過去の危機、そして本当に米国債がデフォルトする可能性があるのかについて詳しく解説します。
米国の債務上限の仕組み
アメリカでは、政府が発行できる国債の総額に「上限(Debt Ceiling)」が法律で定められています。
この上限は議会の承認が必要で、予算支出とは別のプロセスで調整されます。
財務省(U.S. Treasury)は、予算に基づいて支出を行うために国債を発行しますが、債務上限を超えることはできません。
このため、上限に達した場合は「特別措置(extraordinary measures)」を使って一時的に資金繰りを行い、議会の対応を待つ必要があります。
債務上限問題の歴史
米国の債務上限はたびたび政治的な対立の舞台となってきました。以下は代表的な例です:
- 2011年: オバマ政権下で共和党との交渉が難航し、S&Pがアメリカの信用格付けを「AAA」から「AA+」に格下げ。株価も大きく下落しました。
- 2013年: 政府機関の一部が閉鎖(government shutdown)し、デフォルトの危機に直面。
2023年: バイデン政権と議会の対立で再び緊張が高まりましたが、土壇場で債務上限停止が合意され、回避されました。
これらの例からもわかるように、米国債のデフォルトリスクは実体経済というより「政治リスク」として存在しています。
米国債のデフォルトは現実的か?
理論的には、アメリカ政府が債務上限に達したまま対応を誤れば「技術的デフォルト(technical default)」が起こり得ます。
ただし、財務省は最優先で利払いを行う姿勢を強調しており、意図的な債務不履行は極めて考えにくいとされています。
また、実質的なデフォルトとみなされるのは「国債の元本または利息の支払い遅延」が発生した場合です。
これが起きたことは一度もありません。
投資家への影響
債務上限問題が表面化すると、次のような市場影響が見られます:
- 国債利回りの上昇(投資家がリスクを意識し始める)
- 株式市場のボラティリティ上昇
- 為替市場では一時的にドル売りの圧力
信用格付けの見直しリスク(例:2011年のS&P格下げ)
これらは一時的な混乱にとどまることが多いですが、信用低下が続くと長期的な資金調達コストに影響を及ぼす可能性があります。
今後の注目ポイント
- 債務上限の恒久的撤廃: 一部議員や専門家は「債務上限制度そのものが不要」との主張を強めています。
- 大統領選と議会構成: 政治の構図次第で、今後の債務問題の緊張度が変わってきます。
財政の持続可能性: 医療・年金など長期支出の増加により、財政の健全性そのものが中長期的なテーマとなっています。
まとめ
米国債が実際にデフォルトする可能性は非常に低いと考えられています。
しかし、政治的対立が続く限り、毎回「崖っぷちの交渉」が繰り返されるリスクは残ります。
投資家としては、ニュースや政府の動向を注視しながら、リスク管理の姿勢を持つことが大切です。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。