VOO・IVV・SPYとS&P500指数の乖離を検証|2024年リターン実績から見る実際の差とは?
By Staff | 2025-10-12
Category: インデックス投資
S&P500に連動するETFとして、VOO・IVV・SPYの3つは特に人気が高く、多くの投資家が積立や長期運用に活用しています。
どれも同じS&P500指数をベンチマークとしているため、「どれを選んでも同じだろう」と考える人も多いでしょう。
ただ、実際には指数との間にごくわずかな「乖離(トラッキングエラー)」が存在します。
投資成果に影響を与えるほどではありませんが、なぜこうした差が生まれるのかを知っておくとETFへの理解がより深まります。
たとえば、2024年のS&P500指数のトータルリターン(配当込み)は +25.02%。
VOO・IVV・SPYもほぼ同水準の上昇を見せましたが、厳密には数値が完全に一致しているわけではありません。
本記事では、2024年の実績データをもとに、これら3つのETFがどの程度指数とズレていたのか、
そしてそのわずかな違いがどこから生まれるのかをわかりやすく解説します。
乖離(トラッキングエラー)とは何か?
ETFは指数を追うよう設計されていますが、実際には完全一致しません。
このズレを「トラッキングエラー(Tracking Error)」と呼びます。
乖離には主に以下の2種類があります:
基準価額ベースの乖離:ETFの基準価額(NAV)が指数と微妙に異なる動きをする
市場価格の乖離(プレミアム/ディスカウント):ETFが市場で取引される価格がNAVと乖離する
これらのズレは、以下の要因が複合的に影響します。
- 信託報酬(経費率)の違い
- 配当金の再投資タイミングの差
- 貸株収益およびその配分方式
- 為替変動(日本人が円換算で評価する場合)
スプレッド・流動性などの取引コスト
こうした要因が重なって生じるため、乖離は完全には避けられませんが、実用上は「ほぼ誤差の範囲」と見なされるレベルであることが多いです。
VOO・IVV・SPYの構造とコストの違い
VOO、IVV、SPYはいずれもS&P500を追跡するETFですが、運用会社・構造・手数料などに違いがあります:
VOO(Vanguard S&P500 ETF)
- 信託報酬:0.03%
- Vanguard社運用
コスト・構造のシンプルさを重視
IVV(iShares Core S&P500 ETF)
- 信託報酬:0.03%
- BlackRock社運用
貸株収益を配分する仕組みに強み
SPY(SPDR S&P500 ETF)
- 信託報酬:0.0945%
- State Street社運用
歴史が長く流動性に強みがあるが、構造上コスト面でやや不利
こうした構造の違いが、小さいながらもリターンに微差をもたらす要因となります。
2024年の実績:乖離はほとんどない
2024年の年間リターンを見てみると、指数と各ETFの動きはほとんど一致しています。具体的には:
- S&P500指数(配当込み):+25.02%
- VOO:+24.98%
- IVV:+24.93%
SPY:+24.89%
このように、指数との差は年間でわずか ±0.05% 程度でしかなく、実質的には同じ動きをしていると言い切ってよいレベルです。
また、過去の年次リターンを見ても、2023年も指数+26.29%、
VOO+26.32%、IVV+26.31%、SPY+26.18% と、ほぼ一致しています。
このような実績を考えると、乖離が長期投資で重大な影響を与える可能性は非常に低いと言えます。
なぜごく僅かな乖離が生じるのか?
それでは、わずかなズレが発生する理由を改めて整理します。
信託報酬(経費率)の差
VOO・IVVは 0.03% に対して、SPY は 0.0945%。この差が長期ではわずかに累積差となります。配当再投資のタイミングのズレ
ETFが配当を受け取ってから指数に反映させるまでに時間差があり、その間の市場変動でズレが出ることがあります。貸株収益と配分方式
IVV は貸株収益を投資家に還元する仕組みが高い水準で導入されており、これによりわずかにリターンが押し上げられる年もあります。為替変動(円換算時)
米ドル建てでは乖離が小さくても、日本円に換算すると為替変動が加わって見かけのズレが大きくなることがあります。流動性・スプレッド・売買コスト
スプレッドや取引手数料、流動性の違いもミクロなズレを生み出します。
これらすべてが重なって、微細な乖離が生まれるわけです。
どのETFが最も指数に近い動きをするか?
定量的に比較すると、VOO と IVV が最も指数に近い動きをする傾向が見られます。
SPY も十分高精度ですが、手数料の差が年を重ねるにつれて累積分として出ることがあります。
長期保有・積立目的: VOO または IVV が無難
流動性や売買の柔軟性重視: SPY も選択肢にはなる
ただし、2024年の実績を見れば、どれを選んでもほとんど同じ結果になる可能性が高いです。
乖離より重要な要素に目を向けよう
長期投資家にとって、トラッキングエラーよりも重要なことがあります。
それは:
- コスト管理(売買手数料・為替手数料・信託報酬)
- 一貫した投資スタンス(定期積立や再投資を継続)
- 税制・証券会社の条件(NISA、特定口座など)
- 為替リスクを含めた総合リターン理解
こうした要素のほうが、乖離のわずかな差よりも大きな影響を与えることが多いのです。
まとめ:乖離は実質的に誤差レベル。安心して選べる3銘柄
2024年実績を見ると、S&P500指数が+25.02%、VOO が+24.98%、IVV が+24.93%、SPY が+24.89% と、ほぼ完全に一致しています。
つまり、VOO・IVV・SPY のなかでリターン差を気にしすぎるのはあまり意味がありません。
それよりも大切なのは、コストを抑えること、継続的な運用姿勢、投資環境の理解です。
VOO・IVV・SPY のいずれを選んでも、S&P500指数の成長を享受するという本質は変わりません。
自信を持って選んでよいでしょう。
S&P500との乖離がほとんどないことを確認したうえで、次のステップとして各ETFのコストや特徴を整理しておくと理解がより深まります。
詳しくは、以下の記事でVOO・IVV・SPYを総合的に比較しています。
S&P500に投資するならどのETF?VOO・IVV・SPY徹底比較ガイド
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投資忍者 プロフィール
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「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。