VTの地域別構成と比率推移|米国依存はどこまで進んでいるか?
By Staff | 2025-10-17
Category: インデックス投資
VT(Vanguard Total World Stock ETF)は、「全世界の株式市場にまるごと投資できるETF」として高い人気を誇ります。
1本で先進国から新興国まで幅広くカバーでき、個別の地域や銘柄を選ばなくても、世界経済の成長を取り込める点が魅力です。
その手軽さと分散効果から、長期投資の中心に据える投資家も少なくありません。
しかし、実際の構成を詳しく見ると、米国企業への依存度が年々高まっていることがわかります。
世界全体に分散しているように見えても、その中身の大半を米国が占めており、近年では「全世界株ETF=実質的な米国主導ETF」と言っても過言ではありません。
とはいえ、これは特定の偏りではなく、世界市場の時価総額構造が変化してきた結果です。
米国企業が世界的に収益力を高め、株価が上昇してきたことで、自然と比率が拡大してきました。
本記事では、VTの地域別構成とその推移を確認しながら、米国依存の進み方と、それが意味するリスク・戦略面での考え方を整理していきます。
地域別構成(2025年時点)
Vanguard公式サイトによると、2025年10月時点のVTの構成は次のようになっています。
- 米国:63.10%
- 日本:5.60%
- 英国:3.10%
- フランス:2.00%
- カナダ:2.00%
- 台湾:2.00%
- スイス:1.90%
- ドイツ:1.60%
- オーストラリア:1.70%
- インド:1.90%
- 韓国:1.30%
- 中国:1.00%
- その他の地域:残り約13〜14%
この構成からわかるように、米国だけで全体の6割以上を占めており、「全世界株式」とはいえ、実質的には米国主導のポートフォリオになっています。
過去10年での比率推移
2015年ごろ、VTにおける米国比率はおよそ50〜55%前後でした。
2020年にはそれが55〜58%へ上昇し、現在では63%を超える水準に達しています。
この変化の主な背景は以下のとおりです。
- 米国株式市場の高いリターン(特にテクノロジー・AI関連銘柄)
- ドル高の進行による時価総額の押し上げ効果
- 欧州・新興国市場の成長停滞
- 米国企業の世界的競争力と収益拡大
結果として、VTの地域構成は米国を中心とした「世界市場の写し鏡」となりつつあります。
米国依存が進むことのメリットとリスク
米国比率が高いことにはプラス面と注意点の両方があります。
メリット
- 世界経済の成長エンジンである米国の動きを直接取り込める
- 市場の透明性・企業統治の水準が高い
- ドル資産としての安定性
リスク
- 米国株の高バリュエーション化による下落リスク
- ドル安・円高局面での円建てリターン減少
- 地域分散の効果が薄れることで、VTの「全世界分散」という性格が実質的に弱まる
投資家にとっては、これを「偏り」として懸念するよりも、米国中心構造のETFをどう活かすかという視点が重要です。
地域構成をどう捉えるか
VTの地域構成は、ETF自体が意図的に変更しているわけではなく、世界の時価総額構成の変化を自動的に反映した結果です。
つまり、米国比率の上昇は「米国市場がそれだけ成長してきた」という現実を示しています。
ただし、よりバランスの取れた分散を望む場合は、次のような手法も検討できます。
- VXUS(米国外株ETF)を併用し、非米国比率を補強
- 為替ヘッジ型ETFを組み合わせてドルリスクを軽減
- 定期的にリバランスを行い、構成比の変化を調整
これらの手法を活用すれば、VTの“米国偏重”を緩やかに補いながら、全世界の成長を取り込み続けることができます。
長期投資での視点:構成比は変わり続ける
市場の勢力図は永続的ではありません。
今後、欧州やアジア、新興国が再び高成長を遂げる局面が来れば、VT内の米国比率も自然に低下していくでしょう。
長期投資では、この「構成の変化」自体をポジティブに捉えることが重要です。
VTを長く保有することで、投資家自身が世界の経済構造変化を反映したポートフォリオを自動的に維持できるという利点があります。
まとめ:VTは“全世界ETF”だが、今は米国主導
VTは名実ともに「全世界株ETF」ですが、その構成を見ると、現在の中心はやはり米国です。
米国比率が60%を超えるのは偶然ではなく、世界の株式市場における米国企業の時価総額の大きさを反映した結果です。
Apple、Microsoft、NVIDIAといった企業が世界経済全体に与える影響を考えれば、米国の存在感が大きくなるのは自然なことです。
それでも、VTには欧州、日本、アジア先進国、新興国なども幅広く含まれており、米国の動きにすべてを委ねない構造が保たれています。
投資家にとって重要なのは、「米国が多いから良い・悪い」と判断することではなく、この構造を理解したうえで自分の戦略にどう活かすかです。
米国の成長を軸に据えるのか、それとも非米国資産を追加してより中立的なポートフォリオを作るのか――選択肢は柔軟に存在します。
VTは依然として長期分散投資の中核になりうるETFです。
その構成と動きを正しく把握しておくことで、ポートフォリオ全体の安定性を高める判断材料になります。
VTの構造や地域分散の考え方をさらに体系的に理解したい方は、
をあわせてご覧ください。全世界株投資の全体像とVTの位置づけをより深く理解することができます。
FAQ
Q:米国比率が高いとリスクは増えませんか?
確かに、VTの約63%を米国が占める現在では、米国市場の影響を強く受けます。ただし、米国企業は世界中で事業を展開しており、結果的にグローバルな収益を得ています。そのため、米国中心であっても「世界の成長を取り込む」効果は一定程度保たれています。
Q:今後、米国比率が下がる可能性はありますか?
あります。欧州やアジア、新興国が高成長を続ければ、世界全体の時価総額構成が変わり、VTの地域比率も自然に調整されます。VTは市場の動きをそのまま反映する仕組みなので、構成変化はETFの特性そのものです。
Q:米国偏重を避けたい場合はどうすればいいですか?
VXUS(米国外株ETF)を組み合わせることで、非米国地域の比率を自分で調整できます。たとえば、VTにVXUSを30%程度追加すれば、米国比率を50%前後まで抑えることが可能です。
Q:為替の影響はどの程度ありますか?
VTは米ドル建てETFのため、円高・円安の動きが円換算リターンに影響します。ドル高局面ではプラスに働きますが、円高局面ではリターンが目減りします。為替ヘッジ型ETFを併用することで、このリスクを部分的に抑えることができます。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。