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VTの過去リターンを徹底分析|米国株との比較で見える世界分散効果

By Staff | 2025-10-19

Category: インデックス投資

VT(Vanguard Total World Stock ETF)は、全世界の株式市場に分散投資できるETFとして長年人気を集めています。

 

1本で米国、欧州、日本、新興国などの株式をまとめて保有できることから、「地球まるごと投資」の象徴的存在といえます。

 

では、その「地球まるごと投資」は、過去15年以上にわたって米国株(S&P500)が強さを見せる中で、どの程度のリターンを上げてきたのかを見てみましょう。

 

ここでは、2008年の設定以来の長期データに加えて、10年・5年・1年のパフォーマンスをSPY(S&P500 ETF)と比較し、世界分散の効果を実績で検証します。

 


 

2008年以降のトータルリターン比較

 

VTは2008年6月に設定され、リーマンショック直後の混乱期からスタートしました。

 

その後、世界的な景気回復と米国株主導の上昇を経て、長期的には堅調な成長を続けています。

 

2025年10月時点のデータ(株価ベース、配当除く)では、

 

  • VT:約+180%
  • SPY:約+426%


    となっており、米国株ETFであるSPYが大きく上回っています。

     

年率換算では、VTが約8〜9%、SPYがおよそ12%前後のリターンで推移しており、年間3〜4ポイントの差が17年積み重なった結果、トータルでは約2倍以上の差となっています。

 

この差は、過去15年間において米国市場が世界市場全体をリードしてきたことを如実に示しています。

 


 

10年・5年・1年リターンの比較

 

より短い期間で見ても、傾向はおおむね同じです。

 

  • 直近10年間(2015〜2025年):VTは年率約9〜10%、SPYは年率約12〜14%
  • 直近5年間(2020〜2025年):VTは年率約9%、SPYは年率約12%
  • 直近1年間(2024〜2025年):VTは+15%前後、SPYは+20%前後

 

いずれの期間でも、米国株中心のSPYの年平均リターンが一貫して高く、世界分散型のVTはやや控えめな結果となっています。

 

VTの控えめなリターンは、ファンドの特性というよりも、観測期間における米国株の突出した強さを映し出した結果といえます。

 


 

リターン差が生まれた背景

 

1. 地域別成長格差


米国ではテクノロジーやAI分野を中心に企業利益が急拡大し、株価上昇をけん引してきました。一方、欧州や新興国は政治リスクや成長鈍化によりパフォーマンスが伸び悩みました。

 

2. 為替の影響


ドル高が進行した期間にはVTの米ドルベース成績が底上げされましたが、円建て換算では為替の方向によって評価が分かれます。

 

3. 構成比の変化


VTの地域構成では、現在米国が全体の約6割以上を占めています。結果として、VTの成績も米国市場の動向に強く影響される構造になっています。

 


 

世界分散による安定性と下落耐性

 

リターン面ではSPYが優勢でしたが、ボラティリティ(値動きの大きさ)ではVTに安定感があります。


世界中に分散されているため、地域ごとの景気サイクルが異なり、下落時に他の地域が下支えする効果が生まれます。

 

たとえば2022年の下落局面では、

 

  • SPY:約 -25%
  • VT:約 -18%


    と、VTの方がややマイルドな動きを示しました。

 

この「損失の緩和」こそが、VTの世界分散による最大の利点です。

 

大きく儲ける局面では米国株に劣る一方、荒れた相場では精神的にも安定して長期保有しやすい構造になっています。

 


 

米国集中 vs 世界分散:どちらが合理的か

 

2008〜2025年のトータルリターンでは、米国集中のSPYが明確に上回りました。

 

ただし、この結果は期間中の地域ごとの成長格差を反映したものであり、「世界分散が劣っている」と結論づけることはできません。

 

2000年代前半や1990年代には、欧州や新興国がリードした時期もありました。


世界経済の主役は時代によって入れ替わる傾向があります。

 

今後、米国の成長ペースが鈍化し、他地域の寄与度が高まる局面では、分散型ポートフォリオのリスク・リターン特性が異なる結果を示す可能性もあります。

 

VTは、特定の国や地域を選ばず、世界全体の市場平均に連動するという仕組みであり、その構造上の特徴として「どの国が勝つかを予測しない」投資といえます。

 


 

投資家が意識すべきポイント

 

  • 単純なリターン比較だけでなく、リスク調整後のリターン(シャープレシオ)にも注目する。直近10年間ではSPYが約0.8前後、VTは約0.6台とされており、米国株の方が効率的にリターンを得てきたことが分かる。
  • とはいえ、VTは世界全体に分散しているため、地域ごとの景気変動に対して安定しやすい特性があります。
  • 為替リスクを取ることで得られる分散効果を理解し、長期的なリスクコントロールの一部として活用する視点が大切です。
  • 為替ヘッジ型の全世界株投資信託や、新興国ETFを組み合わせることで、よりバランスの取れた国際分散が可能になります。
  • 長期的には「最大リターンの追求」よりも「リターンの持続性」と「下落時の安定性」を重視する方が、メンタル面でも継続しやすい投資戦略といえます。

     


 

まとめ:リターン差よりもリスク効率に注目

 

VTは、米国株(SPY)と比較するとリターンは控えめであり、リスク調整後のパフォーマンスでもやや劣る傾向が見られます。


ただし、これは米国市場が突出して強かった時期のデータに基づくものであり、VTの価値を単純な数字の比較だけで判断するのは早計です。

 

全世界に分散することで、特定の国や地域に依存しすぎない安定性を得られる点は、VTの大きな魅力といえます。


世界経済の中心は常に移り変わり、米国、欧州、日本、新興国など、時代ごとに主役が変化してきました。


その変化の中で、どの地域が一時的に低迷しても、他の地域が支えるという構造こそが、世界分散投資の本質です。

 

投資で最も大切なのは、「どの資産が勝つか」を予測することではなく、自分が許容できるリスクの範囲で長く市場に居続けることです。


VTはその考えを体現したETFであり、米国一極集中とは異なる安定志向の投資スタイルを実現します。

 

全世界株ETFとしてのVTの位置づけや戦略的な活用法について、より包括的に理解したい方は、


VT徹底解説|全世界株ETFの特徴・リターン・投資戦略


もあわせてご覧ください。VT投資の全体像と長期戦略のヒントが得られます。

 


 

FAQ

 

Q:VTのリターンがSPYより低いのはなぜですか?


過去15年間では、米国市場の成長率が他地域を大きく上回り、米国企業の利益拡大がSPYの高リターンにつながりました。
また、シャープレシオ(リスク調整後リターン)でもSPYがVTを上回っており、リスク1単位あたりのリターン効率は米国株が優勢でした。

 

Q:それでもVTを保有する意味はありますか?


あります。VTは全世界の株式を自動的に組み入れるため、特定地域の停滞リスクを抑えられます。
リターン効率では劣っていても、地域分散による安定性が得られるため、長期的な資産形成を目指す投資家にとって重要な役割を果たします。

 

Q:今後もSPYの方が有利ですか?


短期的には米国の企業収益力と市場規模の優位が続く可能性があります。
ただし、世界経済の主役は周期的に入れ替わるため、将来の局面ではVTのような分散型ETFが相対的に優位に立つことも十分考えられます。

 

Q:どちらを選ぶべきですか?


リスク効率や過去の実績を重視するならSPY、安定性と世界分散を重視するならVTという選び方が自然です。
どちらが“正解”というより、自分のリスク許容度と長期目標に合ったバランスを取ることが重要です。

 

 

Tags: インデックス投資 VT SPY

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。