VT vs ACWI徹底比較|全世界株ETFの本命はどちらか?
By Staff | 2025-10-19
Category: インデックス投資
全世界の株式に1本で投資できるETFとして、VT(Vanguard Total World Stock ETF)とACWI(iShares MSCI ACWI ETF)は最も人気のある2本柱です。
どちらも世界中の企業に投資できる便利なETFですが、実は構成やコスト、投資対象の範囲に明確な違いがあります。
本記事では、指数・コスト・リターン・リスクの観点から両者を比較し、長期投資における特徴を整理します。
指数の違い:FTSE Global All Cap vs MSCI ACWI
VTはFTSE Global All Cap Indexを採用しており、大型・中型に加えて小型株まで含まれます。
一方ACWIはMSCI All Country World Indexをベンチマークとし、大型・中型株が中心で小型株は含まれません。
この違いにより、VTの方が銘柄数が多く(約9,000社超)、より広範囲に分散されています。
ACWIは約2,900社前後とシンプルで、構成上は米国大型株の比率が高めに出やすい設計です。
コストの差:VT 0.06 % vs ACWI 0.32 %
経費率は長期リターンにじわじわ効く要素です。
VTの経費率は0.06 %、ACWIは0.32 %と、VTの方が圧倒的に低コストです。
両ETFとも米国市場(NYSE Arca/NASDAQ)に上場しており、日本の主要ネット証券から簡単に購入できます。
またどちらも米国籍ETFのため、配当には米国10 %の源泉徴収がかかり、日本でも課税対象になります。
外国税額控除を使えば重複分を一部取り戻すことが可能です。
過去リターン比較:2008 年以降の実績
VTとACWIはいずれも2008年に設定された全世界株ETFです。
リーマンショック直後という厳しい環境でスタートし、その後の世界的な景気回復と米国株の長期上昇を経て、どちらも堅調に成長してきました。
長期で見ると、両ETFのリターンは非常に近い水準で推移しています。
以下は、2025年9月末時点の運用会社公式データ(配当込み・米ドルベース)です。
まずVT(Vanguard Total World Stock ETF)は、
- 1年:+17.3%
- 3年:+85.5%
- 5年:+88.8%
- 10年:+208.9%
- 設定来(2008年6月~):+300%
一方、ACWI(iShares MSCI ACWI ETF)は、
- 1年:+17.6%
- 3年:+87.4%
- 5年:+89.1%
- 10年:+212.5%
- 設定来(2008年3月~):+288%
このように、どの期間を切り取っても両者の成績差はわずかです。
どちらも世界全体を幅広くカバーしており、特に米国株が6割超を占める構成になっていることが、リターンの近さにつながっています。
パフォーマンスのわずかな差の背景
VTがわずかに優れた累積成績を示すのは、
- 小型株を含むことで長期のリターン源泉が広いこと
経費率が低く運用コストが削られにくいこと
が影響しています。
一方でACWIは、大型株中心のため短期的なブレが小さく、リスク調整後リターン(シャープレシオ)で見るとやや優位に出る期間もあります。
10 年・5 年・1 年の年率リターン
期間別の年率換算リターンを見ても傾向は似ています。
- 10 年 : VT 約 8.0 〜 8.2 % / ACWI 約 8.1 〜 8.3 %
- 5 年 : VT 約 13 % / ACWI 約 13 %
- 1 年 : VT +17 % / ACWI +18 %
両ETFは米国の強さを反映しており、期間を区切ってもほとんど差がありません。
リスク・リターン効率(シャープレシオ)
直近10 年の推定シャープレシオは、
- VT : 約 0.65
- ACWI : 約 0.75 〜 0.80
と報告されています。
つまりACWIはリスク1単位あたりのリターン効率がやや高い一方、VTはより広い分散で下落耐性を高める構造といえます。
短期効率 vs 長期分散 という性格の違いが明確です。
投資家が意識すべきポイント
- リターンだけでなく、リスク調整後リターン(シャープレシオ)も確認する。
- VTは小型株を含むため、景気回復局面でリターンを押し上げる一方、短期的なボラティリティはやや高い。
- ACWIは大型株中心で値動きが安定し、効率的な運用が可能。
- 為替リスクを取ることで得られる地域分散効果を理解し、長期の安定運用を意識する。
- 両ETFとも米国籍・同一課税構造なので、選択の決め手は指数とコスト、分散範囲です。
まとめ:広く分散か、効率重視か
VTとACWIはいずれも、世界中の株式に分散投資できる代表的なETFです。
リターン実績を見ると両者の差はごくわずかで、どちらも長期的に世界経済の成長を反映してきました。
しかし、その構造や設計思想には明確な違いがあります。
VTは、大・中・小型株を含むより広範な分散を重視したETFで、まさに「世界の平均」をそのまま取り込む仕組みです。
経費率が0.06%と非常に低く、長期で積み立てるほどコストの低さがリターンに効いてきます。
一方で、ACWIは大型株を中心に構成されており、よりシンプルで効率的な設計です。
銘柄数が少ない分、指数の追随性が高く、シャープレシオ(リスク調整後リターン)ではわずかに優位に立つ局面も見られます。
どちらを選ぶかは、投資家が何を重視するかによって変わります。
より広い分散と低コストを重視するならVT、シンプルで値動きの安定性を求めるならACWI。
どちらを選んでも、世界経済全体の成長を長期的に取り込むという本質は共通しています。
VTや他の全世界株ETFの構造と戦略をより体系的に理解したい方は、
をあわせてご覧ください。VTを中心とした世界分散投資の考え方をより深く掴むことができます。
FAQ
Q:VTとACWIはどちらがリターンが高いですか?
2008年以降の累積成績ではVTが+300%、ACWIが+288%とほぼ同等です。
直近10年の年率でも両者は8%前後で推移しています。
Q:ACWIの方がリスク効率が高いのはなぜですか?
ACWIは大型株中心の構成で値動きが安定しやすく、結果的にシャープレシオが高くなりやすい傾向があります。
Q:どちらがより「全世界」に近いETFですか?
VTは小型株を含むため、より幅広い企業に分散され「より純粋な全世界型」といえます。
Q:日本の証券会社でどちらも買えますか?
はい。VTもACWIも米国市場上場のETFであり、SBI・マネックス・楽天証券など主要ネット証券で購入可能です。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。