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VT vs VXUS徹底比較|どちらが世界分散投資に最適か

By Staff | 2025-10-17

Category: インデックス投資

世界分散投資を目指すうえで、多くの投資家が検討するのが VT(Vanguard Total World Stock ETF)VXUS(Vanguard Total International Stock ETF) の2本です。

 

どちらも国際的な株式市場に幅広く投資できるETFですが、構成や目的には明確な違いがあります。

 

VTは、米国株と米国外株を合わせて「世界の株式市場全体」を1本でカバーできるETFです。

 

ベンチマークは FTSE Global All Cap Index で、構成銘柄はおよそ9,000社に及びます。

 

全体のうち約6割を米国株が占めており、世界経済の中心である米国市場の成長も取り込むことができます。

 

一方のVXUSは、米国を除く先進国と新興国 の株式を対象とするETFです。

 

ベンチマークは FTSE Global All Cap ex US Index で、米国株をすでに保有している投資家が、非米国株の分散を補う目的で利用するケースが多く見られます。

 

どちらも世界分散を実現できるETFですが、「米国を含めるかどうか」という点が、リターンやリスクの構造に大きな違いを生み出します。

 


 

構成比率と地域別の違い

 

VTとVXUSの最大の違いは、構成国の比率にあります。

 

VTは世界中の株式を網羅しており、米国が約60%、残りの40%が欧州、日本、新興国などで構成されています。

 

VXUSは米国を完全に除外し、欧州が約40%、新興国が25%、日本が7%程度を占めています。

 

米国を含むかどうかで、ポートフォリオ全体の性質が大きく変わります。

 

VTを保有すれば、世界全体の成長を取り込みながら、米国市場の影響を大きく受ける設計になります。

 

一方でVXUSは、米国株中心の資産をすでに保有している場合に、地域分散を補う手段として非常に有効です。

 

この構成比率の違いが、リターンの差や為替影響の出方にもつながっていきます。

 


 

過去リターン比較:実績データで見る差

 

過去の実績を見ると、VTは米国株の力強い成長を背景に、VXUSを上回るリターンを記録してきました。

 

2025年時点のデータでは、過去10年間の年平均リターンは次のとおりです(配当込み、米ドルベース)。

 

  • VT:年率約9.3%
  • VXUS:年率約6.3%

 

5年リターンでも、VTは約9.1%、VXUSは約5.5%と差が見られます。

 

1年単位で比較すると、VTがおよそ+15%、VXUSがおよそ+10%前後となっており、直近でも米国株の影響が大きいことがわかります。

 

この差は、米国市場の成長がVTのリターンを押し上げた結果 です。

 

特に過去10年間は、米国企業の利益拡大と株価上昇が世界市場をけん引してきました。

 

ただし、これはあくまで特定の期間の市場環境を反映したものであり、今後も同じ傾向が続くとは限りません。

 

欧州や新興国が相対的に強い局面では、VXUSがより良い結果を示す可能性もあります。

 

また、為替変動も円ベースのリターンに影響します。

 

ドル高が進めばVTの円換算リターンは上昇しますが、円高局面ではその逆になります。

 

米ドルと円の動きを合わせて考えることで、実際のパフォーマンスをより正確に評価することができます。

 

 


 

コストと税制の違い

 

VTとVXUSはいずれも運用コストが非常に低く、VTの経費率は0.06%、VXUSは0.05%です。

 

どちらも世界分散型ETFの中では最も低コストの部類に入り、コスト面で大きな差はほとんどありません。

 

わずかな違いがリターンに与える影響は極めて小さく、長期的にはほぼ同等と考えてよいでしょう。

 

ただし、税金の扱い にはいくつかの違いがあります。

 

VTは米国籍のETFで、配当には米国で原則10%の源泉徴収がかかります。

 

そのうえで日本でも課税されるため、基本的には二重課税となりますが、確定申告で外国税額控除を申請することで、米国分の課税を日本側で調整できる 場合があります。

 

結果として、投資家の所得や税率によっては、最終的に日本での課税分のみになるケースもあります。

 

一方のVXUSも米国籍のETFですが、投資対象が米国外企業で構成されているため、「現地国 → 米国 → 日本」 という三段階で課税が行われます。

 

現地国で源泉徴収された配当が米国を経由して再度課税され、さらに日本でも課税されるため、構造的には三重課税に近い形になります。

 

外国税額控除によって米国分はある程度調整できますが、現地国分までは完全に取り戻せない のが一般的です。

 

そのため、VXUSの実質的な手取り利回りはVTよりわずかに低くなる傾向があります。

 

とはいえ、これらの税処理はすべて自動的に行われるため、投資家が追加で複雑な手続きを行う必要はありません。

 

外国税額控除を活用するかどうかの判断だけで十分です。

 

たとえば、配当利回りが2%のETFを保有している場合を考えてみましょう。

 

VTのように米国株を中心としたETFでは、米国課税分(10%)を外国税額控除で実質的に取り戻せるケースが多く、最終的な手取りはおおむね1.6%前後になります。

 

一方で、VXUSのように三重課税構造を持つETFでは、現地国での課税分を完全に取り戻すことが難しく、実効税率が10ポイントほど高くなる傾向があります。

 

同じ2%の配当でも、手取りは1.4〜1.5%程度にとどまるイメージです。

 

名目上は同じ配当利回りでも、VXUSでは実際の受け取り額が12〜15%ほど少なくなる計算となります。長期運用では、この小さな差が複利的に効いてくる点に注意が必要です。

 

どちらのETFも低コストで優れた分散効果を持っていますが、課税構造の違いが長期リターンにわずかな差を生む可能性があります。

 

配当の再投資を意識した運用や、外国税額控除の活用など、自分の税制環境に合わせて最適化を図ることが大切です。

 


 

為替リスクと通貨分散

 

VTもVXUSも米ドル建てのETFですが、内部的にはさまざまな通貨に分散されています。

 

VTの場合、非米国部分にユーロ、円、人民元、インドルピーなどが含まれています。

 

VXUSは米国外企業への投資で構成されているため、通貨の分散効果がより強いと言えます。

 

円ベースの投資家にとっては、為替変動がリターンを大きく左右します。

 

ドル高局面では資産価値が上がりますが、円高になると評価額が下がります。

 

VXUSをポートフォリオに加えることで、米ドルへの依存度を下げ、為替リスクを部分的に緩和することが可能です。

 

このように、どちらのETFを選ぶかは、為替に対する考え方にも関係してきます。

 


 

運用スタイル別の活用法

 

VTが向いているケース

 

  • 1本で世界の株式市場全体に投資したい場合
  • シンプルな積立投資を長期で続けたい場合
  • 米国市場の成長を逃さず取り込みたい場合

 

VXUSが向いているケース

 

  • すでにVTIやS&P500など米国株ETFを保有している場合
  • 米国偏重のポートフォリオを調整したい場合
  • 欧州や新興国への地域分散を強化したい場合

 

VTとVXUSを組み合わせることで、自分の理想的な地域バランスを作ることも可能です。

 

たとえば以下のような配分が考えられます。

 

  • VT 70% + VXUS 30%:米国比率を少し抑えたバランス型
  • VTI 60% + VXUS 40%:自分で米国・非米国の比率を設計
  • VT単体運用 → 将来的にVXUSを追加して地域分散を強化

 

このように、どちらか一方を選ぶだけでなく、ポートフォリオ全体で役割を考えること が重要です。

 


 

リスク要因と注意点

 

VTとVXUSはいずれも分散効果が高いETFですが、完全にリスクを排除できるわけではありません。

 

  • 地域ごとの成長格差によりパフォーマンスが変動する
  • 為替リスクにより円ベースリターンが影響を受ける
  • 世界的な金利上昇局面では株価全体が調整する可能性がある
  • 地政学リスクや政策リスクが一時的なボラティリティを生む
  • 配当の自動再投資が行えないため、手動での運用管理が必要

 

ETFは「長期保有で世界経済全体の成長を取り込む」というコンセプトを理解したうえで、値動きに一喜一憂せず安定して運用を続ける姿勢が求められます。

 


 

まとめ:VTとVXUS、どちらが最適か

 

VTとVXUSはいずれも、世界規模での分散投資を実現できる優れたETFです。


ただし、その性格や目的は微妙に異なります。

 

VTは「1本で世界の成長をまるごと取り込みたい」というシンプルな運用を志向する人に向いています。


米国株も含めて世界全体の時価総額に連動するため、ポートフォリオ全体を一括で管理したい場合に適しています。

 

一方で、VXUSはすでにVTIやVOOなどの米国株ETFを保有している投資家にとって、米国外への分散を補う手段として活用しやすいETFです。


米国比率を自分でコントロールしたい、あるいは米国への偏りを抑えたいという場合には、VXUSを組み合わせる選択が合理的です。

 

最終的に重要なのは、「どちらが優れているか」ではなく、自分の資産全体をどのように設計するかという視点です。


VTを軸にするのか、VXUSで補うのか、あるいは両方を組み合わせてリスクバランスを取るのか――その答えは投資目的やスタイルによって変わります。

 

全世界株ETFとしてのVTの構造や投資戦略をより深く理解したい方は、


VT徹底解説|全世界株ETFの特徴・リターン・投資戦略


もあわせてご覧ください。VTを中心とした世界分散投資の全体像がより明確になるはずです。

 


 

FAQ

 

Q:VTとVXUSを両方持つ意味はありますか?


A:あります。米国と非米国の比率を自分でコントロールできるため、柔軟なポートフォリオ設計が可能になります。

 

Q:VTの中にVXUSの銘柄も含まれていますか?


A:はい。VTは全世界株式を網羅しているため、VXUSに含まれる非米国株の一部も重複しています。

 

Q:VTは米国株が多すぎてリスクではありませんか?


A:確かに米国比率は高めです。米国市場が調整する局面では影響を受けやすくなります。

 

 

Tags: インデックス投資 VT VXUS

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。