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株価暴落時の出口戦略|売るか保つかの判断基準と実務的対応

By Staff | 2025-09-25

Category: インデックス投資

長期にわたってインデックス投資を続けてきたとしても、避けて通れないのが「暴落局面」です。

 

米国株式市場は歴史的に右肩上がりで成長してきましたが、その過程では必ず深刻な下落が訪れています。

 

このとき最も悩ましいのが「売るべきか、それとも保つべきか」という判断です。

 

焦って全てを売ってしまえば、後の回復局面で大きな利益を逃すかもしれません。

 

逆に耐え続ければ、含み損に耐えきれず生活に支障をきたす可能性もあります。

 

本記事では、株価暴落時に投資家が取り得る出口戦略について、心理面・実務面・過去データを交えて解説します。

 


 

暴落時に直面する投資家心理

 

株価が大きく下落すると、多くの人が冷静さを失います。

 

  • 「さらに下がるのではないか」という恐怖
  • 「売った直後に反発したらどうしよう」という後悔への不安
  • 含み損を見るたびに気持ちが沈む

 

行動経済学では「損失回避バイアス」がよく知られています。

 

人は利益を得る喜びよりも、損失の痛みを強く感じるため、下落相場では過剰に反応してしまうのです。

 

この心理が、暴落時の意思決定を難しくしています。

 


 

売る選択肢:一括売却・部分売却の考え方

 

メリット

 

  • さらなる下落による追加損失を防げる
  • 現金化によって生活資金や精神的安心を確保できる
  • 手元資金をリバランスや他資産への投資に振り分けられる

 

デメリット

 

  • 売却後に急速に回復した場合、大きな機会損失となる
  • 一括売却だとその年に課税が集中する
  • 「底値で売ってしまった」という後悔が残りやすい

 

例えば、1億円の資産が30%下落して7,000万円になったときに一括売却すれば、そこで損失は確定します。

 

その後市場が回復し、2年で1億円に戻った場合、その差額3,000万円を完全に失うことになります。

 

部分売却という選択肢もあります。資産の2割を現金化し、残りは保有するといった形です。

 

これにより精神的な安心を得つつ、市場回復の恩恵も受けられます。

 


 

保つ選択肢:長期保有を貫く場合の考え方

 

メリット

 

  • 回復局面の利益を逃さない
  • 複利効果を維持できる
  • 課税を繰り延べできる

 

デメリット

 

  • 暴落からの回復に数年〜十数年かかる可能性がある
  • 含み損を抱え続けるストレス
  • 暴落時に生活資金が不足するリスク

 

過去のデータを見ると、米国市場は暴落の後、時間をかけて回復してきました。

 

リーマンショックではS&P500が2007年のピークから2009年3月までに約-57%下落しましたが、2013年には再びピークを回復しました。

 

つまり約4年で立ち直ったのです。

 

コロナショックでは2020年2月から3月にかけて約-34%下落しましたが、半年足らずで回復しました。

 

このように、暴落は必ず起こりますが、回復もまた繰り返されてきたのが米国市場の歴史です。

 


 

過去の米国市場に学ぶ暴落と回復の実例

 

  • ITバブル崩壊(2000〜2002年):S&P500は約-50%下落、回復まで7年
  • リーマンショック(2008年):S&P500は約-57%、回復まで約4年
  • コロナショック(2020年):S&P500は約-34%、半年で回復

 

数字を見ると、暴落が深刻でも回復には時間差があることが分かります。

 

したがって出口戦略を考える際には「どのくらいの時間待てるか」が重要な要素になります。

 


 

出口戦略としての実務的対応

 

部分売却という中間選択

 

すべてを売るか保つかの二択ではなく、一部を現金化して安心を確保し、残りを市場に残す戦略も有効です。

 

課税を複数年に分けられる利点もあります。

 

生活資金バッファの確保

 

2〜3年分の生活費をあらかじめ安全資産で持っておけば、暴落時に慌てて売却せずに済みます。

 

バケット戦略の短期バケットを充実させるのが有効です。

 

為替リスクへの配慮

 

米国株を保有している場合、暴落時には円高が進むこともあります。

 

株価下落と為替変動が重なると、円換算での資産価値が二重に減ることになります。

 

売却のタイミングでは為替も視野に入れる必要があります。

 


 

判断を支えるチェックリスト

 

暴落時の出口戦略を決める際に考慮したいポイントは以下のとおりです。

 

  • 今すぐ資金が必要か?
  • 他に生活費を賄える収入源があるか?
  • 税負担をどの程度許容できるか?
  • 含み損に心理的に耐えられるか?

 

これらを整理することで、「売る」「保つ」いずれを選ぶにせよ納得感のある判断ができます。

 


 

まとめ

 

株価暴落は誰にとっても避けられない試練ですが、出口戦略を事前に考えておけば冷静に対応できます。

 

  • 一括売却は流動性を確保できるが、回復局面を逃すリスクがある
  • 長期保有は回復を待てるが、含み損や生活資金不足のストレスを抱える
  • 部分売却や生活資金バッファの確保といった中間策も現実的

 

暴落時こそ冷静さを保ち、長期的な視点で資産をどう守るかを考えることが大切です。

 

暴落時の対応は出口戦略の一部にすぎません。

 

出口全体を見据えた設計を知りたい方は「インデックス投資の出口戦略」をぜひ参考にしてください。

 


 

FAQ

 

Q1. 暴落時にNISA口座の資産も売却すべき?


→ 非課税のメリットを考えれば、NISA口座はできる限り残しておく方が有利です。生活資金の必要がなければ売却を急ぐ必要はありません。

 

Q2. 下落中にリバランスを行うのは有効ですか?


→ 有効です。株価が下がった分をリスク許容度に応じて買い増しすることで、回復局面のリターンをより大きく得られます。

 

Q3. 部分売却をするならどのくらいの割合が適切ですか?


→ 一概には言えませんが、生活費の1〜2年分を目安に現金化しておくと安心です。残りは市場に残して回復を待つのが現実的です。

 

Q4. 暴落後に回復するまで何年かかると考えるべき?


→ 過去の事例を見ると数か月で戻ることもあれば、7年かかることもありました。短期での完全な予測は不可能なので、複数年耐えられる準備が必要です。

 

 

Tags: インデックス投資

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。