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取り崩し戦略の違い|定率・定額・バケットの特徴と注意点

By Staff | 2025-09-25

Category: インデックス投資

インデックス投資で長期的に資産形成を進めてきたとしても、最後に待っているのは「出口戦略」です。

 

リタイア後や老後に資産をどう取り崩すかは、投資パフォーマンスと同じくらい重要なテーマといえるでしょう。

 

市場の変動、インフレ、そして寿命の長期化といった要素を踏まえ、計画的に取り崩す仕組みがなければ、資産が想定よりも早く尽きてしまうリスクもあります。

 

本記事では、代表的な3つの取り崩し方法である「定率」「定額」「バケット戦略」を紹介し、それぞれの特徴や注意点を比較していきます。

 


 

取り崩し戦略の基本概念

 

取り崩しとは、積み上げた資産を徐々に売却して生活費などに充てていくプロセスを指します。

 

資産形成期は「いかに増やすか」が中心ですが、出口では「いかに減らさないか」「いかに計画的に使うか」が重要です。

 

  • 株式市場の上下動
  • インフレによる購買力の低下
  • 為替変動の影響
  • 予想を超える長寿リスク

 

こうした不確実性に対応するため、ルールを持った取り崩し戦略が役立ちます。

 


 

定率取り崩し戦略

 

定率戦略は、毎年の資産残高から一定の割合を取り崩す方法です。

 

たとえば「4%ルール」として知られるように、資産の4%を毎年引き出すといった仕組みです。

 

メリット

 

  • 市場環境に合わせて取り崩し額が自動的に変化する
  • 資産がゼロになりにくい

 

デメリット

 

  • 生活費が年によって不安定になる
  • 不況時は引き出し額が大きく減る可能性

 

実例シミュレーション


仮に1億円を保有し、毎年4%(400万円)を取り崩す場合を考えます。

 

  • 米国株式市場が平均7%成長した場合、取り崩しを行っても残高は増加傾向を維持し、10年後には約1億2,800万円が残る試算です。

 

  • 一方、リーマンショック級の下落(株価 -40%)が起きた翌年は、取り崩し額が240万円程度に下がり、生活費が不足する懸念も出てきます。

 


 

定額取り崩し戦略

 

定額戦略は、毎年決まった金額を取り崩す方法です。

 

例えば「毎年400万円を取り崩す」といった形です。

 

メリット

 

  • 生活費の計画が立てやすい
  • 安定的な家計管理が可能

 

デメリット

 

  • 市場が低迷すると資産が早く枯渇するリスク
  • 長寿リスクに対応しにくい

 

実例シミュレーション


同じく1億円の資産から、毎年400万円を20年間取り崩すとします。

 

  • 平均リターンが年5%あれば、20年後でもおよそ5,500万〜6,000万円が残る試算です。

     

  • 一方、リターンが年2%に留まる場合は資産寿命が急速に短くなり、20年後にはほぼゼロに近づいてしまいます。

     

安定性は魅力ですが、資産寿命が大きく左右される点は無視できません。

 


 

バケット戦略

 

バケット戦略は、資産を用途や期間ごとに分ける方法です。

 

  • 短期バケット:2〜3年分の生活費を現金や短期債券で確保
  • 中期バケット:債券や安定株式を中心に構成
  • 長期バケット:株式ETFなど成長資産で運用

     

メリット

 

  • 生活費部分を安全資産でカバーするため安心感がある
  • 株式を長期運用でき、暴落時に売却を避けやすい

     

デメリット

 

  • 資産配分が複雑になり、管理が手間
  • 定期的なリバランスが必要

     

実例シミュレーション


例えば総資産1億円を以下のように分けたケース:

 

  • 短期:2,000万円(現金・短期債券)
  • 中期:3,000万円(債券・安定株)
  • 長期:5,000万円(株式ETF)

 

株式市場が-30%下落しても、短期バケットから生活費を充当するため、長期バケットを慌てて売却する必要はありません。

 

時間を稼ぐことで、市場回復を待てるのが大きな強みです。

 


 

3つの戦略の比較

 

それぞれの戦略を簡潔に整理すると次のようになります。

 

  • 安定性:定額 > バケット > 定率
  • 資産寿命:定率 > バケット > 定額
  • 管理のしやすさ:定額 > 定率 > バケット

 

つまり、安定した生活費を優先するなら定額、資産を長持ちさせたいなら定率、不況時の心理的安心感を重視するならバケット戦略が向いていると言えます。

 


 

戦略選択の実務的ポイント

 

実際に戦略を選ぶ際には、以下の点も考慮が必要です。

 

  • 為替リスク:米ドル建て資産の比率を確認し、円安・円高局面に備える
  • 税制:配当課税や譲渡益課税、新NISAをどう活用するか
  • 収入の有無:年金や不動産収入がある場合は定率の柔軟性が生きる
  • 管理のしやすさ:複雑な戦略が苦手なら定額取り崩しの方が安心

 

単一の戦略にこだわる必要はなく、状況に応じてハイブリッド型を組み合わせるのも現実的です。

 


 

まとめ

 

取り崩し戦略には、定率・定額・バケットの3つが代表的です。

 

それぞれに一長一短があり、資産規模、生活費の安定性、心理的安心感といった要素によって最適解は異なります。

 

重要なのは、投資期間中と同じく出口戦略も「一度決めたら終わり」ではなく、環境に応じて柔軟に見直す姿勢です。

 

将来の安心のために、どの戦略が自分のライフプランに合うのか、ぜひシミュレーションを行いながら検討してみてください。

 

定率・定額・バケットそれぞれの特徴を理解したうえで、出口戦略全体の設計を見直すことが大切です。

 

全体像を整理した記事は「インデックス投資の出口戦略」でご覧いただけます。

 

 


 

FAQ

 

Q1. 定率と定額、どちらが有利ですか?


→ 資産寿命を延ばしたいなら定率、生活費の安定性を重視するなら定額が有利です。

 

Q2. バケット戦略はどのくらいの資産が必要ですか?


→ 数千万円規模からでも可能ですが、より効果的なのは1億円以上の資産規模と言われます。

 

Q3. 為替リスクを避けながら取り崩すには?


→ 円建て資産や為替ヘッジ付き商品を組み合わせることでリスクを軽減できます。

 

Q4. NISA口座からの取り崩しはできますか?


→ 新NISA口座では売却益が非課税なので、老後の取り崩しに適しています。

 

Q5. 取り崩し戦略は途中で変更しても良いですか?


→ はい、ライフイベントや市場環境の変化に応じて柔軟に見直すことが大切です。例えば、退職後しばらくは定額取り崩しで安定性を重視し、その後は定率取り崩しに切り替えるといった組み合わせも有効です。

 

 

Tags: インデックス投資

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。