
ETFの経費率(MER)とリターンへの影響|投資信託との違いを解説
By Staff | 2025-08-16
Category: インデックス投資
ETF(上場投資信託)は、低コストで分散投資ができる金融商品として日本でも広く利用されています。
しかし、同じインデックスに連動するETFであっても、経費率(MER: Management Expense Ratio)の差が長期リターンに大きな違いを生むことは意外と知られていません。
経費率とは、ETFを運用するためにかかる管理費用の割合を示す指標で、通常は年率0.03%〜0.5%程度。
投資家が直接支払うのではなく、ETFの基準価額から日々差し引かれています。
一見わずかな違いに見えても、100万円を投資した場合、経費率0.03%なら年間コストは約300円、0.5%なら年間5,000円。
この小さな差が10年、20年と積み重なると、最終的な資産額に驚くほどの差を生み出します。
本記事では、ETFの経費率がどのようにリターンに影響するのか、具体例とシミュレーションを交えて解説します。
経費率の仕組みと内訳
ETFの経費率は単純に「運用会社の取り分」ではなく、さまざまな費用を含みます。
主な内訳
- 運用報酬:運用会社への管理報酬
- 管理費用:信託銀行・監査法人への報酬、事務手続きなど
その他の費用:開示や上場維持にかかるコスト
ETFでは「信託財産留保額」(解約時にかかる費用)は基本的にありません。
そのため、投資家が気にすべきコストは 経費率(MER) が中心になります。
経費率がリターンに与える影響
一見すると小さな数字に見えるMERですが、長期投資では複利効果によって大きな差を生みます。
短期では小さい差
- 1年で見れば数百円〜数千円の違い
短期投資家にとっては大きな問題ではない
長期では大きな差
例えば100万円を20年間、年利7%で運用すると:
- 経費率0.03%のETF → 約386万円
経費率0.5%のETF → 約360万円
わずか0.5%弱の差が、20年後には 数十万円以上の差 になります。
これこそが「低コストETFが長期投資に有利」と言われる理由です。
人気ETFを選ぶ場合は「MER」が最重要
ETF選びでは「流動性」「トラッキング精度」「純資産規模」もチェックポイントと言われます。
ただし、これは規模の小さいマイナーETFや新規設定ETFを選ぶ場合の話です。
大手・人気ETFの場合
- VOO(Vanguard S&P500)
- IVV(iShares Core S&P500)
- VTI(Vanguard Total Stock Market)
VT(Vanguard Total World Stock)
といった 大規模で歴史あるETF であれば:
- 流動性 → 出来高が膨大でスプレッドは極小
- トラッキングエラー → 運用精度が高く誤差はほぼ無視できる
繰上償還リスク → 実質ゼロ
つまり、人気の大規模ETFに投資する際は 「どの指数に連動するか」と「MERの低さ」こそが最大の判断基準 になります。
日本の投資信託 vs 米国ETF
日本の証券会社では、米国株式指数に連動する インデックス投資信託 も数多く提供されています。
日本の投資信託のメリット
- 円建てで少額から投資可能
- 自動積立やNISA対応がしやすい
分配金は自動再投資される商品が多い
初心者にとっては非常に便利な仕組みです。
しかし見逃せないデメリット
- 信託報酬(経費率)が米国ETFより高め(0.1%〜0.2%程度)
長期的には手数料負担が積み上がり、リターンを削る
具体例
100万円を20年間投資した場合(年利7%想定):
- VOO(経費率0.03%) → 約386万円
日本の投資信託(経費率0.15%) → 約372万円
その差は 14万円以上。
投資額が大きく、期間が長くなるほど差は拡大します。
どちらを選ぶべきか?
投資信託とETFのどちらが優れているかは、一概には言えません。
重要なのは「投資スタイル」と「投資期間」に合わせて選ぶことです。
短期・初心者向け
円建てで少額から自動積立できる日本のインデックスファンドは、投資を始めたばかりの人にとって非常に便利です。
為替を意識せず、つみたてNISAやiDeCoを通じてほぼ“ほったらかし”で資産形成できる点は大きなメリットです。
中長期・本気の資産形成派
一方で、数十年単位で資産を積み上げたい、将来のリターンを最大化したいという人には、VOOやVTIといった米国ETFを直接購入する選択肢が合理的です。
経費率が世界最低水準であることに加え、長期ではその差が複利効果で大きな差になります。
「便利さ」か「低コスト」か
要するに、日本の投信は「便利さに対するサービス料」を支払うイメージです。
為替手数料や再投資の手間を気にせずに済む安心感を買うと考えれば納得できるでしょう。
逆に、多少の手間を受け入れてでもリターンを高めたいのであれば、米国ETFを選ぶ方が有利です。
最終的には「どの程度、手間を許容できるか」「資産をどのくらいの期間運用するか」で答えが変わります。
長期で本気の資産形成を目指すのであれば、米国ETFを直接買う方が合理的といえるでしょう。
まとめ
MERはETF投資における最重要コストです。
短期では差が小さいものの、長期では複利効果によって莫大な差につながります。
人気・大規模ETFであれば「流動性」や「トラッキングエラー」は大きな懸念にならないため、比較すべきはMERです。
日本の投信は便利ですが、長期ではコストがかさみやすく、VOOなど米国ETFが有利になるケースが多いでしょう。
つまり、ETF選びの王道は「低コスト+長期保有」です。
シンプルにVOOやVTIなどを積み立て続けることが、最も合理的な資産形成戦略だと言えます。
さらに投資信託とETFの違いを全体的に整理したい方は、インデックスファンドとETFの違い もあわせてご覧ください。
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投資忍者 プロフィール
米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。
「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。
元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。